表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/223

#4,白乃宮。 4-1改





 ……今朝、俺は夢を見た。


 それは、なぜだかは分からないが、金色に輝く野原の中心にたった独り、俺だけが静かにたたずんでいる……という、不思議を通り越してかるく気味の悪い、そんな妙な夢だった。

 ……あれは、何だったのだろう? というか、なぜこんなにも胸の辺りがこう…もやもや? いや、いがいが? ――まるで胸やけでも起こしたかのように気持ちが悪いのだろうか……?

 ……分からない。

 …………。

 いや、考えるのはよそう。いくら気味が悪くても、所詮夢は夢でしかないのだから……。

 ――そう開き直った俺は、顔を洗い、ついでに歯を(みが)き、さらには沈み気味の気分を高揚させるために両の頬を力強く叩いて、今日一番の気合いを朝イチさっそく自分へと注入した。

 ――そう。そんなこと、今は考えている場合ではないのだ! なぜなら今日は、そう! あの結が! 〝俺のために〟! なんと〝初挑戦〟となる〝手料理〟を作ってくれると言ってくれているのだ!!

 ふっふっふっ! 含み笑いをしながら、俺は天に向かって心の中で叫んだ。

 どうだ、いいだろう男衆! うらやましいだろ男衆! これはもはや〝愛妻(あいさい)料理(りょうり)〟と言っても決して過言ではな――

 …………あれ?

 ふと、俺は自分の妄想癖(もうそうへき)(思考)にストップをかけた。

 なぜだか、前にもこんなことがあったような……そんな気がして仕方がなかったのだ。

 ……何だろう、この感じ? はっきりとはしないが、前にも確か、これと似たようなことがあったような気が……そう、〝()視感(しかん)〟。〝デジャヴ〟とかいうヤツだ。実際には体験していないようなことでも、前にも確かあった気がする~と思わずにはいられないという、不思議な感覚の、アレ。アレが、今まさに俺の中をめぐっていた。

 ……ま、まさかッッ! 俺はすでに前にも同じような体験を……!?

 ――な~んて、な。

 ふん、と俺は鼻を鳴らせた。

 デジャヴなんてものはよくあることさ。現に、俺はコンビニで雑誌を読んでる時なんていっつも思う。あれ? これって確か前にも? ――って。…まぁ、大抵は俺が気づかずに同じ号の雑誌を繰り返し読んでしまっているというのが原因ではあるのだが……ともかくだ。そんな感じのことでデジャヴ何てものはしょっちゅう起こっている。だから今のこれだってそう。べつに、どこぞの神がかった力を持った少女の気まぐれで一万何千と同じ時間を繰り返しているわけじゃないんだ。ただの偶然が今起こっただけのこと。気にする必要なんてないのさ。

 パサリ…使ったタオルを洗濯機の中に放り込み、やれやれ、とため息をついてから、俺は急ぎ結の待つキッチンへと向かった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ