#4,白乃宮。 4-1改
……今朝、俺は夢を見た。
それは、なぜだかは分からないが、金色に輝く野原の中心にたった独り、俺だけが静かにたたずんでいる……という、不思議を通り越してかるく気味の悪い、そんな妙な夢だった。
……あれは、何だったのだろう? というか、なぜこんなにも胸の辺りがこう…もやもや? いや、いがいが? ――まるで胸やけでも起こしたかのように気持ちが悪いのだろうか……?
……分からない。
…………。
いや、考えるのはよそう。いくら気味が悪くても、所詮夢は夢でしかないのだから……。
――そう開き直った俺は、顔を洗い、ついでに歯を磨き、さらには沈み気味の気分を高揚させるために両の頬を力強く叩いて、今日一番の気合いを朝イチさっそく自分へと注入した。
――そう。そんなこと、今は考えている場合ではないのだ! なぜなら今日は、そう! あの結が! 〝俺のために〟! なんと〝初挑戦〟となる〝手料理〟を作ってくれると言ってくれているのだ!!
ふっふっふっ! 含み笑いをしながら、俺は天に向かって心の中で叫んだ。
どうだ、いいだろう男衆! うらやましいだろ男衆! これはもはや〝愛妻料理〟と言っても決して過言ではな――
…………あれ?
ふと、俺は自分の妄想癖(思考)にストップをかけた。
なぜだか、前にもこんなことがあったような……そんな気がして仕方がなかったのだ。
……何だろう、この感じ? はっきりとはしないが、前にも確か、これと似たようなことがあったような気が……そう、〝既視感〟。〝デジャヴ〟とかいうヤツだ。実際には体験していないようなことでも、前にも確かあった気がする~と思わずにはいられないという、不思議な感覚の、アレ。アレが、今まさに俺の中をめぐっていた。
……ま、まさかッッ! 俺はすでに前にも同じような体験を……!?
――な~んて、な。
ふん、と俺は鼻を鳴らせた。
デジャヴなんてものはよくあることさ。現に、俺はコンビニで雑誌を読んでる時なんていっつも思う。あれ? これって確か前にも? ――って。…まぁ、大抵は俺が気づかずに同じ号の雑誌を繰り返し読んでしまっているというのが原因ではあるのだが……ともかくだ。そんな感じのことでデジャヴ何てものはしょっちゅう起こっている。だから今のこれだってそう。べつに、どこぞの神がかった力を持った少女の気まぐれで一万何千と同じ時間を繰り返しているわけじゃないんだ。ただの偶然が今起こっただけのこと。気にする必要なんてないのさ。
パサリ…使ったタオルを洗濯機の中に放り込み、やれやれ、とため息をついてから、俺は急ぎ結の待つキッチンへと向かった。




