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14-22

 「はいはーい、亮さまもそろそろ戻ってきてくださいね~」

 と、丸山さんに手を叩いて呼ばれ、慌てて俺は振り向くと、丸山さんはすでに三人を連れて店の奥の方へと歩き出していた。

 様々な色が混在するこの薄い布の密林に取り残されては一溜りもない。モ○ハンよろしく不意にやってきた他の女性客に、見えない位置から強烈な一撃をもらってしまったらどうするんだ。そう思った俺は、急いでその後を追った。

 すると、店のだいぶ奥の方。【セール品】と書かれた棚……というよりも、カゴの前で足を止めた丸山さんは、ごそごそ、とその山の中を探しながら話しかけてきた。

 「さてさて、それでは亮さま、色や形はどんなのがお好みですか?」

 「何で俺に聞くんですか!」

 普段ならば軽く妄想をビッグバンさせていたところだが、今回は即座に返した。

 すると、予想外にも予想外という表情で振り向いた丸山さんが、予期していなかった理由を予期せず説明した。

 「だって、着けるのは結さまですけど、使う(、、)のは亮さまですし……あれ? もしかして使わない……の? えっ!?」

 「えっ、じゃなくて何に使えと!?」

 なーんだ。つまらなそうにため息をついた丸山さんは、再びカゴの中に視線を戻した。

 「十年も一緒にいるっていう話だったからちょっとは期待したんですけどねぇ~。まぁ、言ってもまだ高校一年生かぁ~。そうですよねぇ~」

 「……」

 丸山さんが何の話をしているのかは俺にはよくは分からなかったが、なぜだろう? なぜだかほんのちょっとだけ、悔しくて悲しい気分になった。ホント、なぜだろう……?

 「さて、まぁ、これだけあれば充分ですかね?」

 と、そんなことを考えている間に、早くも丸山さんは〝G〟級装備を何点か見繕(みつくろ)っていた。丸山さんはそれらを腕にかけて話す。

 「結さま、とりあえずこの辺を試着してみてもらえます? 大きさが合ってるかどうか調べるので」

 「え? 試着……? 大きさなら、さっき測ったからわかるんじゃ……?」

 「ノンノン!」丸山さんはそう言って、チッチッチッ、と指を振った。

 「結さまはずっと、貰った物をそのまま着けていたみたいですけど、本当はそれではダメなんです。というのも、同じサイズの商品でも、商品によって微妙に大きさが異なったり、着け心地が悪かったり、そもそも胸の形に合っていなかったりするんです。そういった合わない物を身に着けていると、最悪胸の形が崩れたり、肩がこったり、と、とにかく悪いことばかり起きてしまうんですよ。――簡単に言うと、合わない靴をずっと履いていると、靴擦(くつず)れを起こしちゃいますよね? それと同じ感じです」

 なるほど、と結だけでなく、俺も納得した。最初の方の説明は何となくでしか分からなかったが、靴擦れに例えてくれたおかげですんなり頭に入ってきた。

 丸山さんは俺たちが納得したのを確認すると、「それでは」と先ほどとは別の、近くにあった試着室へと結を案内した。

 今度もこんな所に一人取り残されては敵わない。そう思った俺はとりあえずその後をすぐに追うと、試着室のすぐ手前。不意に、丸山さんが振り向いた。

 「あ、亮さまちょっとこれ持っててもらえます?」




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