14-21
「〝G〟65」
――数分後。
本題である結のブラジャーを購入するために――何はともあれサイズが分からなくては話にならない。結に聞いても、最近は測ったことがないから分からない。という回答であったため――丸山さんが試着室で結の胸のサイズを測ってくれることになった……のだが、唐突に、そんな声が聞こえてきた。
聞き間違いだろうか? 今、〝G〟とか何とか言っていた気がしたのだが……?
試着室の前で待っていた俺は、ん? と首を傾げ、変装用に着てきた結の服を抱えて同じく待っていた愛と明に視線を送って聞いてみたが、これまた同じく、愛と明は逆に、ん? と首を傾げ返してきた。
三人共に状況がよく分からない……仕方なくそのまま待つこと数十秒。さっ、と開いた試着室から、何やら真顔(?)の丸山さんと、頬を朱色に染めた結が出てきた。
すぅーはー、と深呼吸を二度。丸山さんは改めて、宣言するように言った。
「トップ91センチ、アンダー65センチ。26センチ差……つまり〝G〟カップです!」
「……」
「……」
「……」
……〝G〟級…………。
誰かが……そう、本当に誰の口から出たのかは分からないが――ただ単に、ここ最近モ○ハンのやりすぎなだけかもしれない――不意に、口からそんな言葉が漏れた。
そして、次の瞬間だった。
俺たちの口からは、勝手に同じ言葉が漏れ出していた。
「〝G〟級か……」
「〝G〟級ですね……」
「〝G〟級ってホントにいるんですね~……」
「〝G〟級〝G〟級って言わないで!!!」
もー! と耳まで真っ赤に染めて結は怒ったが、残念ながら〝G〟級の衝撃はその程度では治まらなかった。
「どーりで勝てねぇわけだよ。そこら辺にいっぱいいる猪だのちっこい恐竜だのにも手こずるような村人Aが、〝G〟級に勝てるわけねーじゃんか」
「敗北の理由がはっきりしましたね、亮さま……まさか〝G〟級だとは……」
「亮さま~、もう諦めて、帰ったら大人しくいっしょに草刈りでも行きましょう? 勝てるわけないですよ。だって、〝G〟級ですよ?」
「ああ、そうだな。何せ〝G〟級だもんな……」
「〝G〟級、ですからね……」
「〝G〟級ですもの~」
「もーやめてーっ!!!」
恥ずかしさのあまり結は腕を、ぶんぶん、振って精いっぱい抗議したが、むしろそれは逆効果だった。何しろ、〝G〟級と判明したソレが、いつも以上に、たゆんたゆん! と上下に大きく揺れたからだ。……悪気はもちろんなかったのだが、愛に明、それに(もちろん)俺の視線も釘付けになってしまう。
「あ、あはは~」
と、そんな状況を見かねてか、この中では(現在の本職であるがゆえに)最も〝G〟級に耐性を持つ丸山さんが、いち早く理性を取り戻して話した。
「十代の平均といえばBくらいなところ、はやくも〝G〟きゅ…じゃない、〝G〟カップにまで育ってることには正直驚いたけど、まぁ、ない話ではないからね? それを言うなら愛や明だってとっくに平均は超してるわけだし」
……確かに、と俺は納得した。
今の話を聞く限り、全国の女子中・高生の平均はBカップ。以前聞いた明のカップがDで、愛のカップがE。カップが一つ違うとどれくらい違うのかは俺には分からないが、二人も大幅に平均を超えているのだ。それを考えれば結が〝G〟級なのも……。
……。
やっぱり、どう考えてもスゲーことには変わんねーよな?




