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「それは私が説明します」
と、俺と明が座っていた席の反対側。声がした方を俺は振り向くと、家に帰って着替えたのは俺と結だけなのだから当たり前かもしれないが、そこには明と同じく制服姿のままの愛が座っていた。
愛は何やら古びた手帳を見ながら話す。
「目的地である、隣町のデパートの女性下着売り場には、私たちの知り合い……と言うよりも、地位的には元・部下と言った方が正しいのですが……丸山さんという方が働いていて、連絡を取ったところ、『売れ残りで構わないのであれば、またお安くお売りしますよ~』と言っていただき、それについて結さまに了承を得ましたので、そこへ向かっている、ということです。あと、お聞きしたところ、結さまはこのように……」
チラリ、と愛が向いた方を俺も見てみると、そこには……あ。
「……帽子を深く被り、色の違う片目を瞑り、髪やお顔もできる限り隠れるようネックウォーマーを着用し、さらにはコートなどで体形が分からないように……と、厳重な、という表現が正しいのかは分かりかねますが、所謂〝変装〟を行わなければ買い物にすら出歩けない。ということがありましたので……隣町に行っても堂々と変装を解くことはできないのかもしれませんが、私たちの知り合いがいるお店であれば、お店の中や、せめて試着の時くらいはそれを緩めることができるのではないかと思いまして……私から、隣町のデパートへ行きましょう、とご提案させていただきました」
「……なるほど」
……なるほど、としか言えない。
そうか。そう、だよな。結は変装でもしなければまともに出歩けない。それは以前にも何度か経験して(※#2、#3参照)分かっていたことじゃないか。それを知っていて俺は、やれ結の胸が急成長した、だとか、昔と今の大きさを比べたい、だとか。そんなどうでも……よくはないが、一番重要ではないことを一番に考えまくっていただなんて……あぁ! 俺はなんて! 俺はなんて……っっっ!!!
「……あと」
……ん?
ポツリ、と呟いたのは愛だ。
「ど、どした?」
俺はそうすぐに聞いたが、愛は急に、何やら困ったような、悩んでいるかのような、そんな微妙な表情になった。
「???」
いったいどうしたというのだろう? 何か、こう……もっと重要な、それでいて言いにくいようなことでもあるのだろうか?
そう、俺が不安に思っていると……愛は、呟いた時と同じくらいの小さな声で話した。
「おそらく……商店街にある個人営業の小さな服屋さんでは、私のサイズですらなかなかありませんので、誰も買わずに在庫になるような……それこそ結さまのお胸に合うような大きいサイズのブラジャーは……たぶん、置いていない……かと…………?」
「……」
…………。
「えっ!?!」




