14-14
俺は、全力で掴んだ! 振り下ろされる元・お嬢さまの靴を! 足を! あの日と同じようにその足を払い除け、〝ソレ〟を観るため…に……
……。
……。
……。
「……あ……れ……???」
しかし、気づいた時だった。
確かに、掴んだ。
目を閉じることなく、強い意志と意思を持って、確かに、掴んだ。
だが、なかった(、、、、)のだ。
何が? とは、俺の手が掴み、俺の手に捕まっているはずの、元・お嬢さまの靴が。
元・お嬢さまの、足が……。
「おっとっと、危ない危ない」
と、その時だった。消えた足の代わりに、逆さまになった元・お嬢さまの顔が、目の前に現れた。元・お嬢さまはそのままの姿勢で、妙に明るく、かわいらしい笑顔で話す。
「私としたことが、危うく忘れるところだったわ。そういえばあんたには、前に一度、今と同じような状況になった時に不覚を取ってしまったのよね。踏みつけた足を掴まれて、それを払い除けられるっていう不覚を……今もそれを狙ってたみたいだし、安全策ということで、今回は足を使わずに手を使ってトドメを刺してあげる♪」
「……」
パタン。
……虚像を掴んでいた手の力が勝手に抜けて、俺の両腕は、力なく床に倒れ伏せた。
今の俺の姿……それはまさに、大の字。
敗北、諦め……そんな負の感情を、俺の身体が認め、心が理解していた。
高……すまねぇ。
それらを踏まえた上で、俺は心の中で、今は亡き高利に向かって言った。
お前の敵討ち……できそうにないや……。
「はい、それじゃあいつものように……」
元・お嬢さまの腕が、大きく振り上げられた。
そして、
「逝って……らっ! しゃ――」
ビチィッ! ブチブチ! ボンッ!
「――え?」
元・お嬢さまの胸が、突然巨大化して…………
「……え?」
「い……! やあああぁぁぁっっっ!!!!!???」
ぐっしゃあああぁぁぁ……。




