14-13
「高ッッッ!!!」
「!?」
思わず、心の中だけでは止めきれず、口に出して俺はその名前を叫んでしまった。
それに驚き、目の前にいた元・お嬢さまは二~三歩下がったが、すぐに下がった分の歩を戻し、話した。
「相変わらずね……何? あのサルとテレパシーか何かで繋がってるの? 急に叫びだしたりなんかして……ま、いいわ。どの道あんたはすぐに後を追うことになるんだから」
「……」
す……。
……俺は、ゆっくりと、元・お嬢さまの方を振り向いた。
振り向いて、そして……ッッ!
「あら? どうやら覚悟はできたみたいね? なら――」
「俺が相手だ! 元・お嬢さまッッッ!!!」
叫んだのとほぼ同時だった。俺は、なぜか……本当になぜだろう? 全く。これっぽっちも。万に一つも勝ち目などないというのに……俺は、元・お嬢さまに向かって突進していた!
高の無念は、この俺が必ず晴らすッッッ!!!!!
そう、心の中に誓いを立てながら……!
「うおおおおおぉぉぉ――」
だが……。
「――ぉぉあああっっっ!!!??」
ドッサアァッッ!!!
……ついさっきも。何度も、何度も、同じようなことを言っているが、いくら誓いを立てようが、いくら元・お嬢さまの不意を突こうが、俺に……俺たちに、勝ち目などない。
気づいた時。俺は、床に寝っ転がっていた。さっきまで目の前にいたはずの元・お嬢さまは視界から消え、代わりに見えたのは、妙に眩しい、教室の天井にある蛍光灯の灯りだけだった。
「……はぁ、やれやれね」
と、視界の外から。元・お嬢さまの声が聞こえてきた。
「サルがサルなら、あんたもあんたね。何度やられても懲りない、その無意味にねじ曲がった根性だけは認めてあげるわ。その上で――」
そして、視界の上の方から。幾度となく見てきた、元・お嬢さまの靴裏が現れ……。
……ん? 靴裏? 靴……。
はっ!!!
「――あんたに、トドメを刺してあげるわ!」
ゴオッ!
次の瞬間だった。目の前に現れた靴裏が、ものすごい速さで、俺の顔面に向かって迫ってきた!
だが、俺は目を閉じない! 踏みつけられることを恐れはしない!
なぜなら、俺にはあの日に得た、
〝1/3300の勝利〟の記憶があったのだから……ッッッ!!!
「もらったあああぁぁぁっっっ!!!!!」
ガッシィィイイッッ!!!




