14-6
「……立ち上がったが?」
「うし。そんじゃあ、俺様は今からお前のことを〝殴る〟ぞ? と言っても、めちゃくちゃ弱く、だけどな?」
「……は???」
正直、意味が分からなかった。
だけど、高利はそんな俺を無視するように、言葉を実行に移した。
「ほれ、行くぜ? おりゃ~」
……高利から放たれたのは、ものすごく遅い、右のパンチだった。
高利はその拳をゆっくりと進めながら俺に向かって話す。
「さあ、亮! 俺はお前に向かって殴りかかってんだぞ? お前はどうする? 元・お嬢さまの気持ちになって行動してみろ!」
何? 元・お嬢さまの気持ちになって……だと???
「……」
何だか分からないが、とりあえず、やらなきゃ終わらなさそうだったし、やらなきゃ何も分からない。そう思い、仕方なく俺は演技した。
「だったら、こう……避けて、お前にパンチ……カウンターかな?」
「スキあり!」
「んな!!?」
べしっ! 突然放たれたのは、高利のキック……いや、正確に言えば〝足払い〟だった。
確かにスキあり。意表を突かれた俺は、「うおわっとと!」という変な声を上げて、そのまま後方のベッドに尻もちをついてしまった。
「いきなり何すんだよ!」
当然の抗議。だが高利は、そんな抗議をする俺を指差しながら、言い放った。
「これ(、、)、さ!」
……?
「こ……これ???」
どれ??? 分からずに聞くと、高利は補足の説明を始めた。
「殴られると分かっていれば、人は条件反射的に、自然そっちに注意が行き、他は注意が疎かになる。しかも、相手は完璧に自分を狙っていると分かっている人物だ。そんな人物が襲ってきたら当然、警戒感はMAXになり、条件反射の注意もより危険度の高い拳に集まる……つまり俺様が導き出した作戦とは、『狙っていると分かっている状態であえて素直に狙い、馬鹿正直に正面から突っ込むと思わせておいて実は裏をかき、本命の一撃を叩きこんで〝勝利〟を掴み取る』っていうものさ! ふはは! どうだスゲーだろ!?」
「……」




