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はぁぁぁ~~~。
俺は、特大のため息を一つ。もはや諭すことも諦め、ただ真実のみを淡々と高利に語った。
「……まず、狙われていると分かってて一人になるほど元・お嬢さまはバカではないし、狙っているやつがいると分かってて元・お嬢さまを一人で行動させるほどあのメイドたちは愚かじゃない。それを逆に狙って、メイドのどちらか一方が一人になった時を狙ったとしても、すでに何度もお前に狙われたことがあるあのメイドたちが、『まさか自分たちが狙われることはないだろう』と一人になった途端油断をするはずもない。つまり、狙ってなどいない、いつもの状態であったからこそ偶然に勝つことができたあの1/3300勝も、警戒されている今の状態では当てはまらない、ということだ。したがってここから導き出される結論は、〝無理〟。絶対に〝勝てない〟。素直に〝諦めろ〟……だ」
「……」
ふぅむ……高利はそう、静かに唸ると、しかし、コクン、と大きく一度首を縦に振ってから答えた。
「文句のつけようもなく、正論だな」
「……だろ――」
「だが」
「――ぅあ?」
だろう? と言いかけて、高利に口を挟まれた俺はそのまま首を傾げてしまった。
……これだけ言って、かつ高利本人も、正論、とはっきり認めている状況で、まだ高利は何か愚かな考えを持っているとでもいうのだろうか?
「んだよ? まだ何かあんのか?」
聞くと高利は、ふふん、と相変わらずの調子で話した。
「警戒されている今の状況では当てはまらず、勝てない? ああ、そうだな。お前の言うことは確かに正論だ。……だけどさ、亮? 逆に言えば警戒している今だからこそ(、、、、、、、、、、、、)〝チャンス〟ってものが生まれるんじゃないか?」
「……は?」
「つまりは、だ」
聞く前に、高利はベッドから立ち上がり、隣でパイプ椅子に座っていた俺の後ろへ移動し、話し始めた。
……だが、
「亮、ちょっと立ち上がってみろよ。そんでこっちを向け」
その、最初の言葉がこれだ。
俺はそのあまりにも唐突すぎる言葉に若干躊躇しながらも、しかし説明を聞かないことには話が見えてこない。仕方なく、言うとおりに立ち上がった。




