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どーだ、明! ふふん! と鼻を鳴らしながら俺は明の方を向くと、明は見るからに不服そうに俺から目を逸らした。
『……ちっ! やりますね、亮さま……』
――と、驚異的洞察力を使わなくとも簡単に分かってしまうほどに……。
だが、それもほんの数秒のことだった。
「あ、そーだ☆」
と明は突然、背中にかけていたカバンを膝の上に置くと、何やらそれを、ごそごそ、漁り始めたのだ。
そして……
「じゃーん☆」
という、自分で言った効果音と共にそこから取り出したものは……〝カメラ〟だった。とは言っても、もちろんプロが使うようなあんなゴツイカメラではない。コンパクトでメタリックシルバーな、所謂〝デジカメ〟というやつだった。
……どうやら、などと言うまでもなく、それは今の今まで話していた、写真を撮るために使っているカメラのようだった。明はそれを小さく振りながら全員に向かって話した。
「〝フルメンバー〟ではないとはいえ、せっかくこれだけの人数が揃っているんです! ここはみんなでいっしょに記念撮影をして、それを寮長先生に送りたいと思うんですけど……いかがですか?」
「あ、いいね、それ! おばさま、亮! いっしょに撮ろ!」
結の言葉に、俺も母さんもすぐに頷いた。
「ええ、もちろんいいわよ! いっしょに撮りましょう!」
「みんなでいっしょに写ってた方が、その寮長先生とやらも安心するだろうしな! さっそく撮ろうぜ!」
「決まりですね! では、えーと……皆さんこちらに並んでください! タイマーセットしますので!」
「わかった!」「了解~」「はーい!」
各々返事をして、俺たちは明に言われたとおり、隣の広いリビングの方へと集まった。
……ところで、〝フルメンバー〟じゃないって……どういうことなのだろう?
学校のクラスメート全員じゃない……ってことなのかな……?
…………。
……ま、どうでもいいか。
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「それでは、私も……」
「――あ! 待ってください! 愛は〝コレ〟を……」
「……え?」
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「は~い! ではいきますよ~! 五、四、三、……チーズ☆」
――パシャ!
この日、俺たちは実に良い思い出となる記念写真を撮ることができた。
――全員が笑顔の中、たった一人だけ、
〝赤ちゃん用のヨダレかけ〟と、カラカラ、音の鳴る、同じく〝赤ちゃん用のおもちゃ〟を装備させられ、真っ赤に赤面している愛が写っている……という、
とても、〝楽しそうな写真〟を。




