『聖花:陽光』
「ん……んんぅ」
なんだかとても温かい。『対自然結界』はとっくに効果が切れているハズなのに
ふわふわでもこもこで、とってもモフモフ……
ん? モフモフ?
頭が覚醒してきたので、目を開けて現状を確認してみる。魔力は完全に回復しているけど、体力はかなり減少しているみたい。右腕が傷だらけだからかな? 急いで右腕に回復をかけて、体力が元に戻ったので、周囲の確認。
ここで、自分が白銀の毛に包まれていることに気づいた。
「あれ? あ、大福」
「………」
足下に大福がいたので広いあげる。さて、じゃあ、この毛はもしかして……
「グルゥ」
「やっぱり」
怪我を治した白銀の獣がそこにいた。私に気づいた白銀の獣は、ペロペロと私の頬を舐める。そういえば、この生き物なんて名前なんだろう?
鑑定してみると、種族名だけ分かった。
ファルナンという名前みたいだけど、ゲームオリジナルの生き物なのかな?
「ずっといてくれたの? ありがとう。お陰で凍えずにすんだよ」
「グルゥ」
ファルナンと一緒に外に出てみると、吹雪はすっかり止んでいて、青空が広がっていた。
これなら、先に進める。
「それじゃあ、ここでお別れだね。私達は、この山脈の一番奥に行かないといけないの」
「………」
「もうあんな怪我しちゃ駄目だよ」
じゃあねと言って、先に進もうとしたのだが、後ろから軽い衝撃が来てよろける。
振り向くと、ファルナンがまだそこにいた。
「どうしたの?」
「グルゥ」
ファルナンは私の右手に頭を擦り付けて、その後顔で自分の背中を見た。もしかして、乗れって言ってるのかな?
背中を撫でながら聞いてみると、コクリと頷いた。とりあえず、背中に乗ってみると
「グラァ!」
「ひゃっ!?」
「………!?」
私が乗ったことを確認すると、ファルナンは物凄いスピードで走り出した。険しい道をものともせずに、まるで平地を走るように進んで行くファルナン。
飛んだり跳ねたりしながら、どんどん先へと進んで行く。
凄い、まるでジェットコースター! こういうのが好きな私は、キャアキャア言いながら楽しむ。まぁ、これがライラちゃんなら絶叫してるだろうけど
「凄い! 凄い! もっとスピード出せる!」
「グラァ!!」
「………」
私の言葉に呼応するように、ファルナンはさらにスピードを上げて走って行く。景色が高速で後ろに流れていくので、景色は楽しむことが出来ないけれど、風とスピード感を楽しむことが出来るので十分だ。
ちなみに、道中初めて見たモンスターは、ファルナンが吹き飛ばしている。
ジェットコースターより長く、楽しい時間を過ごしていたら、ファルナンが段々と速度を落とし初めて、完全に止まった。
「どうしたの?」
「グルゥ」
「………」
前を見てみると、装飾は殆どないけれど、純白でとても美しい教会があった。どうやら、最奥の教会についたようだ。ファルナンから降りて、教会に近づいてみる。
凄く神聖な空気を感じる。どんな感じかというと、とても澄みわたり、寒くはないが涼しく、まるで巨大な山の山頂の空気のような感じ。
まぁ、実際にそういう場所だけど
「ここまでありがとう」
「グルゥ」
ファルナンに感謝の言葉を告げて頭を撫でる。これでお別れかな? と思ったら、まだついてくる。まぁ、誰もいないみたいだし大丈夫かな?
中に入ると、神々の像が並んでおり、一番奥に舞台のようなものが備え付けられていた。
あそこで職業が変えられるのかな? そう考えて近づいていくと、突然周囲が真っ暗になった。
「な、何っ!?」
「グルルルルルル」
「………」
ファルナンが私を庇うように前に出る。それにしても、窓から外の光が入ってくるハズなのに、なんで真っ暗になったのだろう?
暫く警戒していると、台の上がスポットライトを使ったのか、照らされた。そして、そこには此方に背中を向けた人が立っていた。
「It's Show Time!」
「え?」
「グルゥ?」
「………?」
バッと、此方を振り向いたその人物は、派手派手な白と金を基調としたローブを着ている、キラキラとした金髪に碧眼をした青年だ。
というか、凄く見たことがあります
「ええっと、『光神ポース』様?」
「That's right! 私は、光にして輝きを纏う神、ポースさ!」
「それで、私に何かご用ですか?」
「Yes! 君がここまで来るのを見させてもらったよ。まさかファルナンと仲良くなるとはね」
え? と思って詳しく聞いてみると、ファルナンは気高き孤高の生き物であり、滅多に人前に出ない幻の生き物で、人にも懐かないらしい。
へぇーそうなんだと思いながら、それだけで来たのか聞いてみると
「うん。そう」
「………そんな軽くていいんですか?」
「アネスだって軽く寵愛与えてるし、大丈夫、大丈夫」
「あの………この流れだと私寵愛貰えちゃうような……それは流石にどうかと……」
「人の常識が神に通用するとでも? 拒否権なんて、ナッスィィィィィィィィング!!」
《『光神ポース』の寵愛を授けられました》
《異名、“光の幼子”を会得しました》
《『光神ポース』から“陽炎の星”を与えられました》
《条件を満たしたため、スキル【聖火術】を習得しました》
《条件を満たしたため、職業が“陽光の神官”に変わります》
《条件を満たしたため、≪職業スキル≫に新たに、【陽光変換】【陽光魔術】が解放されました。また、【光魔術】は【陽光魔術】に統合されます》
《『光神ポース』から、【召喚術】を与えられました。なお、職業が召喚士系統ではないため、一体までしか登録出来ません》
ポース様はいつの間にか消えており、真っ暗だった教会も明るくなった。それにしても、なんか色々貰ってしまった。
ポース様の寵愛は、運補正:極、光属性強化:極、光系統スキル強化:極。
異名“光の幼子”は、陽が出ている間はステータスに補正:大。
“陽炎の星”は、運補正:大と、光属性強化:大、≪装飾品スキル≫で、【光耐性:Lv25】
スキル【聖火術】は、邪悪なものに対する特攻を持った、聖なる炎を操ることが出来る。
次は、陽光の神官関連、職業スキルは、元々あった【神聖魔法】【回復強化】【属性強化・聖】に加え、2つ追加された。
【陽光変換】は、陽の光を魔力に変換することができ、魔力が満タンの時は体力に変換出来るスキル。
【陽光魔術】は、光系統の魔法の派生先の一つで、陽の光の多さによって変わるらしい。晴れや晴天の日は威力が上がるけど、曇りの日は威力が下がり、夜は威力が半減するらしい。
聖なる治療の秘術を習得する以前に、光方面に強化されちゃった。まぁ、それはいいとして
「それよりも、なんで【召喚術】?」
「グルゥ」
私が【召喚術】について疑問に思っていると、ファルナンが一声吠えた。もしかして、ファルナンを連れていくためなのかな? というか、ファルナンは召喚枠なんだ……
「もしかして………ついてきてくれるの?」
「グルゥ!」
「そっか! じゃあ、名前は……すあま!」
「グ、グルゥ?」
「よろしくね、すあま!」
「……グルゥ」
新しく【聖火術】や【陽光魔術】も手にいれられたし、聖なる治療の秘術はまだだけど、これでもライラちゃんとスノウちゃんの役にたてるよね!
さぁ、帰ろう。
「すあま! ごー!」
「グルゥ!!」
こうして、私はすあまに乗ってナーオス山脈を後にした。
“花”終了です。次回は、久方ぶりに雪月花集合です。




