『聖花:天空』
“花”スタート、クノ視点です。
TSタグに変更しました
「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」
あ、皆さんどうも、クノです。現在私は、雲より上の空の上で、自由落下というものを体験しています。
「師匠のバカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
聞こえないとは思うけど、私は大声でそう叫んだ。いきなりこんな目に会うなんて、今日の私は運が悪いのかもしれない。
と、そんなことよりなんとか助かる手段を考えなくちゃ!
例えば、鳥みたいに空を飛ぶとか?
「翼なんてないよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
スカイダイビングみたいに、パラシュートを広げるとか?
「パラシュートなんて持ってるわけないじゃない!」
超能力で浮かぶとか!
「空を飛べるようになる魔法も無いのに、出来るわけないよ!」
あ、これ終わったかも
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
◇
■少し前■
「クノ、そろそろ仕上げといこうか?」
「仕上げ………ですか?」
〈ツェントゥル〉にほど近い、深い霧が立ち込める先にある小屋の前で、私は何時ものように邪気に汚染された丸太の浄化をしていると、師匠がそんなことを言ってきた。
第一回イベントの少し前に、師匠に捕まって無理やり修行をやらされてからというもの、色々と便利なスキルを手に入れた。
だけど…………
『さぁ、今から腕を折るから治してみな!』
『ええ!? 師匠、痛くないんですか!?』
『何言ってんだい! アンタの腕を折るんだよ!』
『へ? え? や、やだなー、冗談はやめてくださいよー』
『…………さぁ、行くよ!』
『え、ま、本気………いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
治療の特訓だとかいって、腕を何度折られただろう。やられる度に、泣きながら治すはめに……
他には………
『師匠、なんですかこの禍々しい感じの場所』
『ここは、邪気が異常に充満してる所だよ』
『え? それって不味いんじゃあ………』
『うん? そうだね、ここに暫くいたら狂うさね』
『ええ!?』
『安心しな、お前は【聖魔法】が多少なりとも使えるんだ、邪気に対する耐性はついてるよ』
『そうですか、よかった』
『………まぁ、1日もいれば駄目だけどね』
『ええ!?』
『アハハハ! 身体に聖属性の魔力を流しな! それか、聖属性の効果を持たせた結界を張りな!』
『あのぉ……まだ習ってないんですけど……』
『実践の中にこそしっかり学べるのさ!』
『どこの脳筋ですかぁぁぁぁぁぁ!!!』
あの時はもう駄目かと思ったなぁ………ギリギリで聖属性の魔力を身体に流せたけど、後少し遅かったら駄目だった………
という訳で、師匠には何時も振り回されてばっかりで……
そんなわけで、仕上げと言われると物凄く嫌な予感がしてしまう。
「なんだい、その微妙そうな表情は」
「いえ別に………それで、仕上げって?」
「クノ、アンタは既に【聖魔法】を完全に習得し、アタシも殆どのことを教えた。そういうわけで、いよいよ大詰めだ、アンタには放浪神官になるために、聖なる山脈ナーオスに行ってもらう」
「聖なる山脈ナーオス………ですか」
「あぁ、そこの最奥に、全ての神々を祀る教会がある、そこなら放浪神官なんていう誰もつかないような職業にも転職できる」
「なんですかその言い方」
「はははは! とにかく、アンタにはピッタリの職業だろう?」
「まぁ、そうですけど………」
スノウちゃんやライラちゃんと行動するから、拘束されないのはありがたい。ただの神官だと、教会から断ることの出来ない依頼が来ることがあるから、そういうことのない放浪神官がいい。
とにもかくにも、就けるというのなら行くしかないだろう。
「それで、どうやってそこに行くんですか?」
「くっくっく。忘れたのかい? アタシは、転移魔法の心得があることを」
「そういえばそうでしたね」
師匠は転移魔法の心得がある。その力で、今まで色んな場所に行って来た。まぁ、だいたい危険な場所だったけど………
今から行く所もそうなのかと思ったけど、師匠から詳しく聞いたら、そこまで危険なモンスターは出ないとのことだ。正し、危険な場所、自然の猛威が襲うらしい。
「ま、とにもかくにも行ってみれば分かる。今から送るから、しっかりやるんだよ」
「はい! 今まで、色々とありがとうございました!」
「くっくっく。無茶する友達のために、聖なる治療の秘術、しっかり習得するんだよ!」
「はい!」
「それじゃあ、行くよ!」
私の足下が光り輝く。いよいよ、最後だ。待っててね、スノウちゃん、ライラちゃん。二人が無茶を出来るように、聖なる治療の秘術。絶対習得してみせるから!
「あ、座標間違えた」
「え?」
やっぱり、最後の最後でも師匠はやらかすようです。
◇
■現在■
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
どんどん近づいてくる地面。もう駄目だ。このままじゃ、デスペナルティになっちゃう。
「あぁ、いきなりこんなのなんてないよ」
目を瞑り、来るだろう衝撃に備える。
『ドサッ!』
何か音がして、先ほどまで身体に感じていた空気が感じなくなった。
恐る恐る目を開けると、そこは地面だった。
「あ、あれ? なんで?」
不思議に思っていると、胸元から大福が這い出して来た。そのHPは、残りギリギリになっている。
って、なんで!?
急いで回復させる。
「なんで大福が死にかけだったの?」
「………」
あ! もしかして、【肩代わり】を使ってくれたのかな? それに、【頑強】でギリギリ耐えた………と。
「ありがとう大福~」
「………」
大福に頬擦りする。本当にこの子は、何時もピンチを助けてくれる。
大福のお陰でなんとかデスペナルティにならずにすんだ。
前を向くと、悠々とそびえ立つ山脈が目に入る。おそらく、あれが聖なる山脈ナーオスだろう。
「よし、頑張って登ろう!」
「………」
覚悟を決めて、私は歩き出した。




