『月下美人と月下狂鬼』
縁が無さすぎてバレンタインあること忘れてたっ! 来年はバレンタイン特別話投稿したいな~
屋根の上を跳ぶ
静かに着地し、静かに跳ぶ
夜の〈ヤマト〉の町を跳び舞う
「………」
例の人喰い鬼が今夜出るかは分からないが、探す。出会うまで……いや、倒すまで探す。ちなみに、集中するためにメールのお知らせとか、アナウンス系の設定を全てオフにした。
暫く探していると、川が目に入った。
緩く流れる幅のそこまで広くない川に、満月が煌々と映っている。
川にかかった木造の橋に、侍かな? 刀を腰に差した男の人と、俺と同い年ぐらいの桜の花びらの柄の、黒地の着物を着た少女が見える。
少し気になって、【風之主】を使って会話を聞いてみる。
『お嬢ちゃん、迷子かな?』
『…………』
『参ったな、何か話してくれないと……』
俺のほうからだと、少女を正面から見れるのだが、顔を伏せているため表情が読めない。
と、少女が顔を上げた。
爛々と輝く血のような紅の瞳
口は三日月型になって笑われていて
額には真っ白な角が生えていた
『ッ!? 鬼!?』
『アナタはどんな味かなぁ?』
少女がどこかから取りだした刀を抜こうとする。
「っ!」
全力でその場から飛び出し、橋を叩き壊す。少女というか鬼は落ちたが、男性は落ちていないようだ。
「逃げて!」
「ッ!?」
戸惑っていた男が、踵を返して逃げていく。
よし、後は……
「もぉ~。ショクジの邪魔するなんて酷い!………あれあれ?」
鬼が不満そうな顔をした後、不思議そうな顔で首をかしげた後、口を三日月型にして再び笑った。
「アナタ……凄く美味しそう♪」
「……なんでこんなことを?」
鬼がこんなこと? と、首をかしげた後、何度か頷いて話し出す。
「ショクジのため、人ってとっても美味しいんだよ? 特に小さくていい匂いのするのは、柔らかくてとっても美味しいんだぁ。後は、人の絶望する顔が好きなの♪」
「絶望?」
そう。 っと、鬼が笑う
「どんな人もね、死んじゃう直前に絶望するんだぁ。その時の顔がね、とってもステキなの♪ だぁーかぁーらぁー」
鬼がニコッと笑って、刀を此方へ向ける。
「アナタもコロすね」
「……お前は絶対に葬る」
出し惜しみ無し、しかし【仙人化】はまだ使わない。何故なら、相手の力量がまだ分からないからだ。先ずは、【仙人化】を使わない全力で、相手の力量を確かめる。
鋭く踏み込み、鉄扇を一閃。刀で受け止められたのでもう一方の鉄扇を突きだすと、バックステップで避けられた。そこを逃がさず、符を3つ投げる。
「『爆炎』!」
「『空断』」
爆発を斬り裂き、笑いながら斬りかかってくる。鉄扇で受け流す。二撃目、三撃目、四撃目、と、いなし、隙を見つけて鉄扇や蹴り、掌打を打ち込んでいく。しかし、あまり効いてる様子は無い。
「キャハッ! 知ってるよぉ、アナタみたいな人、“タツジン”って言うんでしょ?」
「『蛇衝』!」
「『剣弾き』」
「『鬼打』」
「『木裂き』」
うねる鉄扇の一撃を弾かれ、力を込めた鉄扇の一撃を刀の一撃で相殺される。
打ち合い、受け流し合い、避け合う。
一進一退の攻防を鬼と続けていく。
俺達二人を照らすのは、満月の明かりのみ。
月の下で、狂った鬼と戦う
「キャハッ! アナタ凄いね! こんなに凄いんだから、とっても美味しいよね!」
「さぁ?」
そんなことより、この鬼について気付いたことがある。こいつは、人喰い鬼であり、魂喰い鬼でもある。こいつの魂の周りに、絶望に泣き叫ぶ複数の人の魂が見える。この人達も解放したい
一応、攻撃の際に『滅』と『浄』を纏わせているのだが、少し効いている程度だ。
「キャハッ! アタシね、魂を飼ってるんだぁ」
「飼ってる?」
打ち合いの中で、気になることを言う鬼に問いかける。飼ってるとはどういうことだ? 確かに魂はまだ鬼に取り込まれていないようだ
「見えてるんでしょ? こうしておくとね、人の魂は絶望し続けて、私に力を与えてくれるんだぁ」
「貴様!」
「キャハッ! 怒った? 怒るよねぇ? だって、これ聞いたら皆怒るもの」
こいつは、生かしておいてはいけない。
相手の武器は刀だ。
刀とは、鋭く殺傷能力が高いが、脆い。見たところ、鬼が使っているのはそこまでいい刀では無いらしい、一部刃が欠けている。
ならば!
「『剛鬼打』!」
両手の鉄扇2つで、『剛鬼打』を発動させて刀の側面に叩きつける。
『バキッ!』
「あれ?」
「はぁ!」
「がっ!?」
折れた刀を見て、首を傾げる鬼に氣と『滅』を纏わせた掌底を叩きつけ、吹き飛ばす。
よし、後はボッコボコにするだけだな。
「キャハッ! 凄いねぇ! 本当は、これ使いたくなかったんだよ? でも、アナタがさっきの折っちゃうからぁ。これだと、食べる所少なくなっちゃうんだよぉ?」
鬼が取りだしたのは、赤い血のようなシミのついた黒い鞘に入った刀だった。
「えへへ。ねぇ、アナタもお腹空いてるよねぇ?」
鬼が刀に向かって話しかけながら、鞘から抜き放つ。
刀身は薄紅色で、所々に光を吸い込むような真っ黒な桜の花びらの柄がついている。
え?
迫り来る刃、ギリギリで顔を貫くコースを、鉄扇でずらす。しかし、頬をかすった。しまった、油断したな。
ゾクッ
怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。
「キャハッ! さようなら」
『ダメっ!』
「ッ!?」
頭の中に聞こえた声に、少し意識が戻った。そして、直ぐに鉄扇を足に叩きつけて頭を正気に戻し、降り下ろされた刀を全力で避けて、距離を取る。
なんなんだ一体。さっきは気づかなかったが、鬼の取りだした刀が禍々しく見える。
とりあえず、鑑定。
そして、鑑定結果に俺は愕然とした
鬼バトルはまだまだ続きます。そして、鬼が取りだした刀の能力とは?




