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『人喰い鬼』






「『双龍斬』!」



はい。今日も朝狩りしています。


ここに出てくるモンスターは、単体ばっかりというか、現在単体の奴にばかり会っている。隻眼の狼に、隻腕の熊、角が折られた猪………


獣系の敵しか見かけないし、なんか部位欠損になってる奴ばっかなんだよなぁ。まぁ、完全に歴戦の戦士な出で立ちだったけど………



「ん~♪」



しかし、ポーション類に使えそうな素材も結構ある。トリカブトを見つけた時は、戦慄したね


途中で梅の木を見たときは、小躍りしたね。



「ん~♪」



今は、赤松の群生地を発見して、鼻歌を歌いながら採集しています。


赤松………そう!



「きゅ?」


「???」



松茸です! 一つの木の根本に、あったりなかったりだが、十本ほど採集出来た。ちなみに、常に周囲の警戒をしている。運営が、松茸だけポンと置いてるとは考えられないからな。


さて、松茸狩りはこのへんでいいだろう。しかし、松茸もあるなら筍もあるかな? せっかく〈ヤマト〉に来たのだから色々ゲットしたい。



「きゅきゅ!」


「!!!」


「グラァァァァァ!!!」


「わぉ」



全身傷だらけの虎が、木の上から降りて来た。名前は、“千戦血虎”。なんていうか、〈ヤマト〉には死線を乗り越えてきたモンスター多くね?


地面を抉りながら飛びかかって来たのを、ヒラリと避ける。さて、〈ヤマト〉のモンスターは強いが、単体だし、魔法的な攻撃をする奴は少ない。なので、どちらかというと向こうの敵より戦いやすい。



「『爆炎』!」



符を三枚投げつけておく。しかし、避けられた。まぁ、予想していたので【風之主】で軌道修正して、無理矢理当てる。



「グルァ!?」


「『燕刃波』!」


「きゅー!」


「!!!」



俺の鉄扇から繰り出された2つの斬撃と、ネーヴェが放った氷の槍、シャルーが放った水の槍が虎に飛んで行く。


二匹とも俺の放った斬撃とずらした位置に撃ったため、俺とシャルーの技は避けられたが、ネーヴェの氷の槍は当たった。



「グルルルル」


「うーん」



なんていうか、普通に強い。これ、一般人プレイヤーかなり苦労するんじゃないか? その代わりに、達人かそれに準ずるプレイヤーにとっては、いい修行場になるんじゃないかな?


しかし、虎には容易に近づけないんだよなぁ。なんせ、飛びかかられたらどうしようもない。ここは、ヒット・アンド・アウェイで行くしかないですね。



「『剛鬼打』!」


「グルァ!」


「危ない」


「きゅ! きゅ!」


「!!!」



『剛鬼打』を当てて、虎の反撃を避ける。そこに、ネーヴェの『氷柱落し』と、シャルーの『水爆弾』が命中した。


いい感じだ。


その後も、一人と二匹のヒット・アンド・アウェイ戦法で虎を倒せた。


さて、虎も倒せたし、時間も遅いので、戻ることにした。



「え? 刀買うの? お姉ちゃんが?」


「ん」



鍛冶屋の店番少女に、刀を買いたいと言ったら、首をかしげられた。


狩りが終わって町に戻った時、ふと、刀を買おうと思ったのだ。真剣なら、現実でも何度か握ったことがある。元々、冬道家は剣術を教えていたそうで


‘冬道流剣術’


という剣術は、少し有名だったらしい。まぁ、今はなんでも武術だけど。それでも、冬道流剣術の技の一つはまだ継承されていて、俺も一応使えるので刀を買っておく。


現実じゃ、使う機会なんぞ無いからな



「えーと、どれがいいですか?」


「これで」


「これですね。お値段は13万(ノル)になります」


「はい」



即決で買った。


刀を買った後、“夢月館”に戻る。さて、ご飯作ろうかな? 台所に向かう。今日は、どうしようかな? 松茸焼こうかな?



「スノウ、ちょっといい?」


「ん? 何?」



台所に向かう途中に、ヒオウが話しかけてきた。ユキミさんについての話らしく、2つ返事で了承した。


部屋をヒオウの部屋に移した。


真剣というか、少し沈んだ表情のヒオウに緊張する。



「ユキミさんね、妹がいたの」



いた(・・)………か



「スノウ、今この町に人喰い鬼が出るの知ってる?」


「………人喰い鬼?」


「うん。色んな人……それこそ小さな子供から、剣の達人まで、誰も敵わないの」


「……達人も……」


「うん。それでね、3ヶ月前………ユキミさんの妹……トウカちゃんも……」



震えるヒオウの手に自分の手をのせる。泣きそうな顔で見るヒオウに、首を振る。そこから先は言わなくていい。


心の中に、ほんの少しの怒りが浮かぶ。



「スノウは………トウカちゃんに似てるの」



ヒオウの話は終わっていないようだ。なるほど、ユキミさんは妹のトウカさんと、俺を重ねたのだろう。



「ユキミさんも、ううん。この辺りの人達はスノウちゃんが来て、明るくなってるの。トウカちゃんは、皆に好かれてたから。ロンレンさんは、気づくの遅かったけど………」



成る程。通りで、皆さん優しくしてくれるハズだ。


ヒオウの話が終わり、俺はお礼を言って部屋を出た。


台所で料理を作って、食べる。なんだか、味を感じない。心の中にモヤモヤがある。


部屋に戻った後も、モヤモヤは消えない。


行こう。



「きゅ」


「………」


「違うよ、敵討ちじゃない」



心配そうに見てくるネーヴェとシャルーに………いや、多分自分自身に確認するために呟く。



「見たくないんだよ。あんな顔、見たくないんだよ」



あんな悲しそうな顔は、ここの人達には似合わない。ユキミさんにも、シラユリさんにも、ヒオウにも、ロンレンさんにも、誰にも


人の悲しい顔ほど、泣いた顔ほど見たくないものはない。


やっぱり、笑顔が一番だ。



「行ってくる」



ネーヴェとシャルーに笑いかけて、俺は〈ヤマト〉の夜に……化け物達の………いや


人喰い鬼の出る夜に飛び出した。






次回は、人喰い鬼との戦いです

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