『風舞“鎌鼬”』
最初は九十九視点です
「ふわぁ、凄い」
スノウさんが大きな熊さんを拘束して、暫くじっとしてたと思ったら、熊さんの攻撃を軽々と避け始めました。
あ、その前も普通に避けていたんですが、なんか前よりもキレが良くなったというか、回避が鋭くなったというか………
スノウさんの戦闘方法はゲームをプレイする前に少し調べたんですが、基本的には鉄扇を使った近接戦闘、そこに【符術】というスキルによる攻撃を混ぜると、書かれていました。加えて、おおよそ戦いには必要の無い“動き”を度々行っていて、それによって能力を上げていると言われています。
そして、スノウさんの職業が【符術】や、目撃情報から“巫女”だと分かり、戦闘の度に行っていた“動き”は【舞い】スキルのステップだと推測されました。
【舞い】スキルは、舞うことで自身や味方のステータスを上げることが出来るようですが、他の【舞い】スキル持ちは、味方のステータス上げにしか用いないそうです。曰く、自身のステータス強化は、味方のステータス強化より弱いから…と
しかし、スノウさんは味方のステータス上げは行わずに、自信のステータス強化のみを行っているようです。
と、スノウさんの戦闘方法の考察はここまでにして
兎に角! スノウさんの動きが格段に良くなったのは分かります。でも何でかは分かりません
「きゅ!」
「へ? ……わ!」
スノウさんの動きに気をとられていたら、熊さんが攻撃してきました。慌てて、左手に持った盾で受け止めます。
「きゅ! きゅきゅきゅー!」
「ごめんなさい、ネーヴェちゃん!」
集中しないといけません。私たちは一人と二匹、対して、向こうは四匹。向こうのほうが多いし、私は熊さんと戦えるスキルレベルではありません。
こうして戦えているのは、町をぶらぶらしていたら偶然教えてもらえたスキルと、種族特性のおかげです。
「『シャイン・ピアース』!」
光輝く馬上槍を熊さんに突き刺します。
パリンと音がして、馬上槍が壊れました。まぁ、普通の武器より耐久が少ないから仕方ありませんね。
「『天突く白槍を今ここに━スカイ・ランス』」
創具魔術
それが私が習得した魔術です。正しくは、【創具魔術・光】ですけど……
武具を創り出すのが創具魔術です。今作れるのは、普通の槍、馬上槍、丸盾、大盾ぐらいです。
そして、種族である天使の【属性強化・光】により、【創具魔術・光】が強化されているので、なんとか戦えています。
「きゅ!」
「!!!」
ネーヴェちゃんとシャルーちゃんは、なんでしょうか? スノウさんに似たのかなんなのか、好戦的ですし、動きも凄いです。
「兎に角、一気に勝負を決めてスノウさんを手伝いましょう!」
「きゅ!」
「!!!」
ほえ?
ネーヴェちゃんが空色の光に包まれて、直後、巨大な氷の槍を作り出し、熊さんの一頭を一撃で倒しました。
す、凄い
シャルーちゃんのほうは、赤黒いオーラに包まれて、その後流水を纏って突撃して、熊さんの一頭をぶっ飛ばし倒しました。
す、凄い
と、私も頑張らなきゃですね!
「『ファイナル・ドライブ━サン・スパイラル』!」
創具魔術の魔術の一つで、創り出した武具の耐久を全て消費する技。耐久値が大きい程威力が上がる技です。
耐久値は少しも減ってなかったので、かなりの威力になりました。おかげで、熊さんの一頭を倒すことが出来ました。
最後の一頭は皆でタコ殴りにして倒しました。
「さぁ! スノウさんの応援……え?」
「きゅ?」
「???」
「お疲れ」
私達がスノウさんのほうを見ると、ケロっとしたスノウさんと、まるで生きているように、踊るように跳ね回る緑の風と、その風に斬り刻まれた熊さんがいました
どうしたら、こんなことになるんでしょうか?
◇
【舞い】スキルの舞いにも名前があるらしい。『剛力の舞い』、『堅牢の舞い』、『疾風の舞い』………等のステータス強化の舞いに、『魅惑の舞い』、『狂乱の舞い』、『催眠の舞い』等の状態異常を与える舞い。
これに、個人に与える“滴”
それに、大勢に与える“海”
こんな感じです。
しかし、【舞闘】には状態異常の舞いも、大勢に与える“海”もない。
個人ステータス強化に特化しています。後、回避専用の舞い。多分だが、【蜃気楼歩法】スキルや、その進化先の【幻影歩法】に似た歩法も出来るようになるかもしれん。
「グルァ!!」
熊の攻撃を兎に角、ステップで避ける。避ける。ゲージを貯める。
上げるのは器用さと、幸運。
「グルルルル」
「『雷弾』!」
“舞闘技”で仕留められるのか分からないので、一応削っていく。
と、ゲージが貯まった。
「『岩蛇縛』」
一度かけたので効きにくくなってるだろうが、問題ない。
熊を中心にして、そこから少し離れた6つの地点が光っているように見える。
舞いながら、その地点を一つづつ踏んでいく。
そして、最後の地点を踏みつけて……
「『風舞“鎌鼬”』!」
一陣の風が吹き荒れる
鼬のような鋭い風が踊る
熊が舞う風に斬り裂かれ、強制的に踊らされる
「いい感じ」
これは戦闘でも普通に使えるな。というか、かなり派手だな。
と、向こうも終わったみたいだな。
「お疲れ」
「スノウさん、なんですか? あれ?」
「新技」
「あ、そうですよね。うん。」
そんなこんなで、九十九との狩りは終わった。そして、色々と手に入った。
しかし、次はどのスキルが進化、改変するのか、楽しみだな。
来週はお休みですが、25日にクリスマススペシャルを1話投稿します。




