『白い恐怖・前編』
「「今日はありがとうございました!」」
「ん」
ここで、俺だけ単独行動することになりました。ん? なんでかって? 見習い脱却のためです。
二人のレベル上げに付き合っている最中に、クノ、ライラ、椿、ユーが見習い脱却していたという事実を聞いたからです。
完全に出遅れていますね。うん。という事で、神社に向かう。
屋根の上を走って神社までショートカット。人には見られていない………………ハズ。
神社に入る前に巫女服にチェンジ。
「スノウちゃんお久しぶり」
「お久」
掃除をしていた巫女さんに挨拶して、ネーヴェとシャルーを預ける。流石に連れて行くわけにはいかないからな。
巫女さんの一人に案内されて、アザミさんの所へ行く。
「スノウさんいらっしゃい。そろそろ来るとおもってましたよ」
ん? なんでだろ?
「スノウさん。見習い巫女だってこと、ちょっと忘れてましたよね?」
「ごめんなさい」
ペコペコ頭を下げる。
本当に申し訳ない。
「さて、スノウさんは正式な巫女になる条件を満たしています」
「本当?」
「はい。そして、本来なら巫女は神社で修行するのが普通ですが…………スノウさんは異界の冒険者ですから、修行はしなくていいです。それに、束縛は望まないでしょう? しかし、巫女になったからには巫女の仕事をしてもらいます。まぁ、その話は後でとりあえず………」
《【職業】が『見習い巫女』から『巫女』に昇格しました。》
《条件を満たしたため、【神託】スキルを習得しました。》
《条件を満たしたため、【霊感】スキルを習得しました。》
《条件を満たしたため、【清祓術】スキルを習得しました。》
はい? え? そっち方面いくの? 【神託】スキルはまだ分かるけども…………
「スノウさんには行く先々で悪霊や悪鬼、危険な妖怪の退治。それに、怨念の浄化ですね」
「成る程」
「お受けしていただいて宜しいですか?」
「ん。分かった」
「普通なら、【符術】や【清祓術】で弱らせてから滅するなり、封じるなりするんですが、スノウさんなら【氣術】で弱らせられますね」
マジかー。幽霊に物理攻撃加えられるのか、なんというか、現実で出てきたら逃げるしかないなーって思ってたけど、こっちだと物理が効くのかラッキーだな
「後は、はい。巫女装束と巫女の証である、神樹の短杖です」
「ありがと」
巫女装束は見習い巫女装束を強化して、巫女関連のスキルを上げる効果つき。短杖も同じような効果で、巫女しか入れないところも入れるようになるらしい。
「それじゃあ、祓いの件お願いしますね」
「分かった」
アザミさんにお礼を言って、神社から出る。
さて、見習い脱却は完了したし、新しい職業スキルを試してみたいのだが、試せそうな感じがしない。
だって、神託は特定の場所以外ではなかなか発動しないらしいし、よほど神様に好かれていないと神託は与えられないらしいし………ん? 何か忘れているような………
それに、霊感といったって霊がそこら中にいるとは思えないし、悪霊がいないと【清祓術】が使えないからなー。
とりあえず、新しい町に行こう。
クックック住人の皆さんから情報を集めて、北にある〈ノルデ〉の先に港町があることは分かっている。港町に行けば、〈ヤマト〉に行く手段も手に入るかもしれない。
そんなわけで、〈ノルデ〉の先に行こうと思った通りのだが、薬の残りが心もとないし、蘇生薬も作っておきたいので久しぶりに『生産施設』に来ました。
「きゅきゅ♪」
「♪♪♪」
「る~♪」
のほほんとした空気の中、薬を量産していく。薬草の一つ上のアイテムである、癒薬草が手に入ったので味つき中級ポーションと、中級マナ・ポーションを作った。
ちなみに、マナ・ポーションとは魔力を回復させるもので、最近作れることを知り、十本ほど下級マナ・ポーションを作った後は、中級を量産した。
他にも、かけるというか投げつけるバージョンのポーションも作り、さらに空気に触れると気化して、広範囲の人を回復させるポーションも作った。
「いいかな?」
「きゅ♪」
「♪♪♪」
薬も量産し終わったので、〈ノルデ〉に向かうことにする。
外に出るための門を目指して、歩いて行く。
「ん?」
ふと、路地裏に入って行く子供に目がいく。なんだ? なんか嫌な予感がするというか、なんというか………なんであんなにふらついてるんだ?
気になったので追いかけていく。
路地裏を右に左に歩いて行き、子供を追いかけて行く。
そして、先が真っ暗で見えなくなっている通路………凄く嫌な予感のする場所が見えたところで、子供を捕まえることが出来た。
「待って!」
「…………」
凄い力だ。それに、なんだか様子が可笑しい。もしかして、もしかすると…………
「浄!」
【清祓術】には、魔術や符術のような特定の技は少ない。基本的には、『滅』、『封』、『浄』、『拒』の4つの効果しかない。
『滅』は悪霊等を滅する
『封』は悪霊等を封じる
『浄』は怨念の浄化、悪霊等に取り憑かれたものから悪霊を追い出す
『拒』は悪霊等を拒絶し、取り憑かれるのを防ぐ
他にも効果があったり、失敗したりもするが基本的にはこんな効果です。
「あれ? ここは?」
「大丈夫?」
「う、うん」
正気に戻った子供は、真っ暗な通路を見て泣きそうになっている。
「戻れる?」
「ついてきてくれないの?」
「ごめん。そうだ! ネーヴェ、シャルーお願い」
「きゅ………」
「???」
「大丈夫だから、ネーヴェとシャルーと一緒なら大丈夫?」
「うん」
装備を巫女装束にチェンジ。
ネーヴェとシャルーに子供を任せて、俺は真っ暗な通路に入って行く。さっきアザミさんに悪霊退治を依頼されたのだ。まさか、アザミさんのいるこの町にいるとは思わなかったが、この先にいるのはその手のモノだ。
通路の先には、開けた場所があり日が指していて明るい。
少しづつ進んで行き、周囲を確認。
………何も無い? 何も感じないし、変な所も無い。仕方がないので、後日アザミさんに相談してから来ることにして、戻ろうと通路に足を出そうとした時、悪寒がはしり後ろを振り向く。
先ほどまでの日の光はどこに消えたのか、うっすらとした明るさしかない。そして、開けた場所の中心に白い髪に白いワンピースを着た、透き通るほどの白い肌をした幼い少女がそこにいた。
《 ≪チェインクエスト:白い恐怖≫が始まりました。》
「いっしょにあそぼ?」
そう言って、白い少女がうっすらと嗤った。




