『印象』
後半別視点です。
新しい防具と、新しい武器を手に入れ、性能の確認のために何回かの戦闘と、“レッサー・ワイバーン”との戦闘を終わらせて、お昼の時間なので現実に戻って昼食を食べ、戻ってくると懐かしい初期防具を着たプレイヤーが、広場に沢山いた。
「いや~。凄く懐かしい光景ね」
「そうですね」
「ん。それで、友達は?」
「そろそろ来ると思うけど……」
「おーい!」
そして此方に二人の人物がやって来た。
一人は狐耳に薙刀を背負った、サラシに袴のつり目できつそうな少女。
もう一人は、エルフで弓を背負ったふわふわした感じの少女。
「椿、ユー! スノウ、狐耳が椿で、エルフがユー。現実でも友達なの」
「椿だ。宜しくな」
「私は~。ユーだよ~」
なんだろう。ライラ、クノ、椿、ユー……
この四人何処かで見たような、というか、少し前まで、毎日のように見ていた気がする。しかも、かなり近くで。
まぁ、そんなことは置いておこう。
何故クノとライラの友達と、ここに来ているのかという、その友達の一人の妹と、妹の友達が第二陣として来るそうなので、その手助けをするためだ。ゲーム初心者なそうなので、色々教えてあげるのだ。
「それにしても、スノウと椿が目立ってるわね」
「そうだね」
「そうだね~。二人共扇情的~」
「ん」
「そうかもな」
確かに、周りからチラチラと視線が飛んでくる。しかし、なんというか………馴れた。うん。
「でも、絡まれるかもね」
「問題ない」
「ん」
何故なら……
「「来たら叩き潰す」」
むしろ来られたら面倒くさいから、殺気を放っておこう。
二人分の殺気をバチバチ放って、周りを牽制する。まぁ、こんなことしなくても、俺らに話しかけようとした奴らは、親衛隊の皆さんが連れ出してぼこぼこにするだろう。
「お姉ちゃ~ん!」
「……ユーさん」
「お~い! こっちだよ~」
どうやら来たようだ。
ふわふわ天然系そうな、犬耳少女と、無口クールそうな、猫耳少女。ってまて、猫耳少女のほう! スノウと性格被りそうだぞ!
「ど、どうも。ユーお姉ちゃんの妹で、み、ミーっていいます」
「……ノノ。宜しく」
「知らないのは、スノウちゃんだけだね」
「ん。スノウ」
とりあえず自己紹介。第一印象は大事だと、誰かが言っていた。
うん? 俺の第一印象って……
無口、無表情。
扇情的な衣装。
小動物?二匹。
あれ? これっていいのか? いいんだよな? 大丈夫だよね? ね?
若干緊張していると
「あ、あの! その頭の上の子は?」
「ネーヴェ。で、シャルー」
「あ、こっちはフクロ」
「大福だよ」
従魔の紹介がまだだったので、さくっと紹介。
「……可愛い」
「本当だね!」
「きゅ~」
とりあえず、二人の武器の調達のために、一度『訓練場』にいき、フィールドに出る。
場所は東の草原。
犬耳少女ミーの武器は長剣。
猫耳少女ノノは手甲。
「はぁ!」
「ふっ」
二人共安定して戦えている。たまにダメージを受けるが、まぁ、大丈夫だろう。凄くダメージ受けるってわけじゃないし、受けたそばからクノが回復するし。
しかし、クノとライラの友達の二人は凄い。
別の方向から来る敵を相手取っているのだが、相手が雑魚とはいえ、椿は薙刀にかなり馴れているとみた。というか、現実から持ってきた技術だな。それに、ユーのほうも小さなウサギの額に的確に矢を当てて、一撃で倒していく。こっちも、現実から持ってきた技術だろうな。
それにしても、戦いに参加させてもらえない。従魔達と邪魔にならない程度に遊ぶ。
「スノウ。そろそろ、場所移すわよ」
「ん」
どうやら、二人共大分戦いに馴れたようなので、森に突入するようだ。今度は何か活躍出来るかな? けど……森のモンスター程度なら、椿とユーでやっちゃいそうだな。
◇
■ノノ■
私の名前は、三宅 美希
友達の実沙と一緒に、実沙のお姉さんの由沙さんに誘われて、『Miracle World Online』っていうゲームをすることになった。
前々から由沙さんが「面白いよ~」と言われていたけど、私達は特に興味が湧かなかったので、軽い反応だけしておいた。
そんなある日、『Miracle World Online』のソフトが再び出るらしく、CMがやっていたのだが、それを見た実沙が、一緒にやろうと言ってきた。
理由は、CMで踊っていた人に一目惚れ? して、しかも由沙さんの友達の、詩乃さんと霧月さんの友達らしく、会わせてくれるかららしい。
実沙一人でゲームをさせるのは心配だったので、私も二つ返事でやることに決めた。
実沙は魔法職をやると思い、私は現実でも多少の心得がある、近接格闘にした。
なのに、なんで剣を持ってるのミー。
私のプレイヤーネームはノノ。実沙はミー。由沙さんはユーで、後は椿さん、ライラさん、クノさん。そして、ミーの憧れのスノウさん。
草原での戦闘を終えたが、スノウさんは戦っていない。
おそらくだが、支援担当なんだろう。
「うーん。狼いないわね」
「だねー」
「ね~」
「熊」
「うむ。熊はいいな」
狼と熊。スノウさんが言うのだから、熊のほうが弱いのかな? でも、椿さんもいいって言ってるし……あれ? この場合の、“いい”ってなんだろう?
ユーさん達にサポートされながら、狼と戦っていく。
スノウさんは従魔の子達と戯れている。後で、やらせてもらおう。
「いたいた。新人はっけ~ん!」
そんなセリフとともに、厭らしい笑みを浮かべた男達が十人くらい現れた。
「へぇ~。美少女ばっかじゃん! ラッキー」
「どんな涙目になるのか楽しみだな」
「弱いものイジメって、やっぱ最高だな」
凄いクズがやって来た。不安そうなミーを庇いながら、ユーさん達のほうに下がる。装備から見た感じ、ユーさん達と遜色ないかもしれない。ここは、逃げるほうがいいだろう。
そう思っていたら、スノウさんが前に出た。
「あ、危ないですよ!」
「そうそう。危ないよ? お嬢ちゃん」
「ご託はいいから、さっさとくる」
「カッチーン。それなら遠慮なく……おら!」
一番先頭にいた男が、凄い速さで剣を振るう。
決着は一瞬だった。
スノウさんが一瞬で消えて、次の瞬間には剣を振るった男は膝から崩れ落ちて、光の粒子になって消えた。
「「「「「「「「え?」」」」」」」」
男達と私とミーが、呆然として呟く。
他の人達は、それが当たり前だと言うように、平然としている。
「ふむ。私の目で追えないほどとはな。ユーはどうだ?」
「首に鉄扇を打ち付けるのは分かったけど~。他は全然だね~」
男達がハッとして、警戒し始める。
それに対して、スノウさんは自然体で、男達の攻撃を待っているようだった。
一拍おいて、男達が一斉に襲いかかる。
だけど、スノウさんは自然体のままで、時にはゆらりゆらりと、時には鉄扇で受け流して、右に、左に優雅に避け、捌いている。その姿はまるで……
「踊ってるみたい……」
「……うん」
ミーの言ったとおり、本当に踊ってるみたいだ。
「ま、まさかこいつ“舞の雪姫”!?」
「な、なんだと!?」
「もう遅い。『爆炎』」
スノウさんの小さな呟きと同時に、男達が爆発する。
なんというか、スノウさんは凄いってことがよく分かった。
なんか色々発覚してきましたね。
来週はお休みです。すいません




