『ギルド』
《“大殿雷鳥”を倒したことにより、アンファング王国王都〈ケニッヒ〉に入れるようになりました。》
「ホー♪」
「何、どや顔してんのよ。いいとこ持っていって、もう!」
ライラがフクロをこねる。最近フクロをこねるのに嵌まっているようだ。
ま、兎に角王都に入ろう。
門番さんに挨拶をしつつ、巨大な門をくぐり中に入る。
「「「はぁ~」」」
王都の中は〈ツェントゥル〉をこえる賑やかさで、人もとても多い。
「凄いわね」
「うん。本当だね」
「ん。凄い」
組合でギルド登録したら、王都を回ってみようと約束して、目的の場所に向かう。
やっぱり王都だけあって、組合の建物も大きいな。依頼とかも、いっぱいあるのかな? 扉はついてなかったので、さっさと中に入る。中には、プレイヤー住人問わず沢山の人達がいた。さて、俺達の目的はギルド登録。さくっと済ませて、ギルドホーム探しをしよう。
「ほぅ。なかなかの上玉じゃねぇか」
「グヘヘヘへ。俺達とイイコトしないか?」
「悪いようにはしないからさぁ」
なんだこいつら、住人か? にしても、冒険者っていうのは、こういうのが多いのか?
「おい貴様ら、その方達になんのようだ?」
「返答しだいでは、消し炭にしますよ?」
「それより八つ裂きがいいよ!」
あれ? 何処かで聞いたことのある声が………って、ルキエさんに、ヤハギさん、リューネさんがいた。親衛隊の上位メンバーが、何しに来てるんだ?
「ひっ。いや、アハハハ。お三方の知り合いだったんですか。じゃあ、俺達はこれで………」
ルキエさん達を認識すると同時に、三人の冒険者は大急ぎで組合から出ていった。
「ありがと」
「いやなに! 親衛隊として、当然のことをしたまでさ!」
「その通りですよ! 私の魔法は、スノウ様のために!」
「それで、皆さんはもうギルド登録したんですか?」
「いやいや、まだしてないよ」
「うむ。色々と………な。ギルド登録なら、あの受付でできる」
「そうですか、ありがとうございます。スノウ、クノ、行くよ!」
「ん!」
「うん!」
ルキエさんが指し示した受付に、三人で向かう。
「ようこそ、冒険者組合へ! 本日はどのようなご用でしょうか?」
「ギルド登録に来ました」
「かしこまりました。では、此方の用紙に、代表三人………ギルドマスター一人、サブマスター二人の名前を書いてください」
ギルドマスターは俺。サブマスターは、クノとライラ………と。
「続いて、ギルドの名前をお書きください」
名前か………実は、三人で考えているんだが、未だに決まっていない。兎に角、この場でさっさと決めてしまおう。
「どうする?」
「そうねー。それじゃあ、一人一つづつ、思い付いた言葉を言って、それから考えるのは?」
「いいですね」
「なら、“■”」
「早いわね。私は“■”かな?」
「二人がそれなら、私は“■”ですね。これでちょうどいいです」
「え? なんで?」
「成る程」
「スノウは分かったの?」
“■”と、“■”と、“■”。
この三つから直ぐに連想出来るもの。というか、そのままの感じでギルド名にする。
「それでは、ギルドマークを描いてください」
「ギルドの象徴って感じかな?」
「だね」
「こんな感じでいい?」
「うんうん。いいわね!」
まんまな感じだが、分かりやすいからいいだろう。
「それでは、これで登録完了です。ギルドについて説明しますか?」
「いえ、大丈夫です」
ギルドについては、スリート姉さんやヘイルから詳しく聞いているので、説明は受けなくても大丈夫だ。
ギルド登録が終わったので、今度はギルドホームを探すことにしよう。ちなみに、〈ツェントゥル〉に構えるつもりだ。王都は少々騒がしすぎるし、あっちならいい場所を見つけるツテがある。
「ギルド名は決まったかい?」
「ん。《■■■》」
「おぉ! いい名前ですね!」
「ギルドマークはどんな感じ?」
「これ」
「ふむふむ。ありがとー」
ルキエさん達は、どうやらギルド登録に行くようだ。もしかして、俺達がギルド登録するのを待ってた? でも、なんで? ま、そのうち分かるか。
「それじゃ、王都散策ついでに、転移門の登録にいくわよ!」
「ん」
「そうだね」
町から町への移動が、徒歩で不便だということで、先日新たな機能として、お金を払って町から町に一瞬で移動できる、転移門が設置されたのだ。という訳で、転移門に向かう。
途中、屋台の料理を買ったり、王都の武具屋や、道具屋を覗いたりしながら、転移門についた。
「〈ツェントゥル〉までは、1000Nだって」
一人1000Nづつぱぱっと払って、〈ツェントゥル〉に転移する。
◇
「空き家ねー。心当たりは勿論あるよ。スノウちゃんのお願いなら、不動産の連中も、大工の連中も割引してくれるはず。それで、どのくらい持ってる?」
「これで」
「ふむふむ。100万Nまでね。それじゃ、早速行こうか!」
〈ツェントゥル〉の『買取屋』に来ている。この町に詳しいフィさんなら、いい空き家を知ってると思ったのだ。
ギルドホームを買うための資金は、パーティー関連で使えるイベントアイテムの欄に、100000EPで換えられる『ギルドホーム引換券:100万N』で代用。
「そうだ! スノウちゃん。これいる?」
「いらない」
「そっかー。残念!」
マイクロビキニなんか、いらんわ!
フィさんと不動産屋の人に案内されて、空き家を見ていく。そんな中で、良さそうな空き家を見つけた。
場所は、表通りから外れた所。
一階は、殆どがガラス張りのカフェっぽい感じで、いくつかのテーブルと椅子。カウンターに、結構本格的なキッチンと、小さな工房のような部屋。
二階と三階は、それなりの大きさの小部屋がそれぞれ五つづつの、計十部屋ある。
四階は、倉庫になってるらしく、アイテムを収納できるらしい。さらに、ギルドホームとして登場すれば、ギルド員は一階や二階、三階にいてもメニューから倉庫のアイテムを出し入れできるらしい。ちなみに、共同倉庫。
「いいわねここ。気に入った」
「そうだね。ここにしたいかも」
「ん」
「だってさ」
「本来なら、200万Nなんですが、他ならぬスノウ様とご友人の方が買ってくださるのですから、半額で結構です」
それならばと即決。
大工の人達に頼んで、看板をつけてもらう。お金を払おうとしたら、今度料理を作ってもらえれば、いいと言われた。太っ腹だ。
看板には、青い花と、その右斜め上に浮かぶ赤い月。そして、その周りに散っている小さな雪の結晶。俺達のギルドマークだ。
そして、文字が書かれている。
『《雪月花》』
俺達のギルドの名だ。
ギルド名が決定しました。的中させた人は、何人いますかね?
ちなみに、スノウが“雪”と言い。
ライラが“月”、クノが“花”と言いました。




