『王都に向けて』
「ぶっ!?」
「うわっ! 汚いよお兄ちゃん」
こいつ、なんで平然としてやがる。
イベントから数日。
ゲーム内では、いくつかの出来事があった。
先ずは、西の沼地のエリアボス、“燈籠鯰”が倒され、東西南北の全ての町が解放されたこと。
次に、東の町〈オステ〉の先の荒野のエリアボス、“大殿雷鳥”が倒され、今いるアンファング王国の王都〈ケニッヒ〉が解放され、正式版初のギルドが誕生した。
その名も、《エスポワール》
そう、スリート姉さん達が解放したのだ。
「次は、ギルドホームねぇー。王都で探してるんだけど、これが高いのなんのって」
「だよねー。うちも王都にしようと思ってるんだけど、高いんだよね」
そう。ヘイルの所属する《金鈴の旅団》も王都に行き、ギルド登録を済ませている。後、アーサーの《円卓の騎士団》もしたらしい。
「お兄ちゃんは、何時行くの?」
「ん? 今日行く予定だな」
別に、イベント後直ぐに言っても良かったのだが、組合に登録して、面白そうな依頼ばかり受けていたら、数日たっていたのだ。
まぁ、ライラとクノの予定も空いている、今日にしようと、昨日の夜に決まったので、いいとしよう。
って、そんなことより!
「なんで、CMにこの映像を……」
「スノウちゃん可愛いわね。VRアイドルのスカウトの連絡もあったんでしょ?」
「断ったがな」
遠い目をしながら、イベント六日目にやったライブの映像を見る。
にしても、何故にこの映像を使った運営。
「第二陣を集めやすいと思ったんじゃないかな?」
「そうね。現に、ネットの掲示板でスノウちゃん達のファンが増えてるらしいわよ?」
「つまり、第二陣の殆どは、親衛隊に入るんだな。うん」
なんかね、どんどん勢力拡大してるよね、あのファンクラブ。
朝食も食べ終わり、さっそくログイン。スタート地点は、〈オステ〉の宿屋。
「きゅ♪」
「♪♪♪」
「ネーヴェ、シャルー、おはよう」
さて、この数日でステータスも結構変わった。イベント中に、このスキルも取得したほうがいいよ~と、他プレイヤーから言われたのだ。そして、スキルポイントもそれなりにあるので、取得したほうがいいと言われたスキルに加え、面白そうなのも取得した。
さらに、潤沢にある53110EPを使って、上位スキルや、複合スキルなんかもゲットした。
その結果が此方。
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【名前】スノウ
【種族】天女
【性別】女
【職業】見習い巫女
【異名】
“竜に挑みし者≪風≫”
“虹幻の楽団員”
“風の愛し子”
『風神アネスの寵愛』
体力:中
魔力:大
スタミナ:中
≪スキル≫
【鉄扇術:Lv25】【武闘術:Lv5】
【魔力刃:Lv18】【氣術:Lv5】
【気配察知:Lv5】【気配希釈:Lv5】
【視覚強化:Lv5】【採取:Lv20】
【鑑定:Lv20】【混乱耐性:Lv1】
≪控えスキル≫
【調薬:Lv15】【料理:Lv17】
【水中行動制限解除:Lv5】【釣り:Lv1】
≪職業スキル≫
【舞い:Lv20】【祈祷:Lv12】
【符術:Lv20】
スキルポイント:10
≪種族特性≫
【仙人化:Lv7】【自然操作:Lv13】
≪ユニークスキル≫
【風之主:Lv━】
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これが、現在の俺のステータス。
スキルポイントを消費してゲットしたのは、【気配察知】、【気配希釈】、【視覚強化】、【釣り】の4つ。
他は、
【武闘術】10000EP(【武術】、【体術】統合)
【混乱耐性】8000EP
【氣術】8000EP
EPは、他のことでも使った。
『上位調薬キット』1000EP
『万能調理器具』1000EP
『蘇生薬のレシピ』500EP
『薬草辞典』100EP
『食材辞典』100EP
合計、28200EPの出費。
残高、24410EP
ゲットしたスキルについてはおいおい話すとして、今はクノとライラと合流しよう。
待ち合わせ場所の、門の前に行く。
「スノウー! こっち、こっち!」
「お待たせ」
「それじゃ、王都に向かおう」
荒野に出て、王都方面に向かう。
ここでフィールドについて一つ。基本的には、エリアボスに当たらなければ、自由にフィールドを歩ける。これを利用して、エリアボスに当たらずに町から町に行けるのでは? と、六人パーティーで試した人達がいたらしい。
結果は可能。
しかし、六人パーティーが一人になってしまったらしい。
理由は、エリアボスに当たらずに次の町に行こうとしたところ、普通に遭遇したモンスターに、一瞬で二人倒されたらしい。つまり、普通に攻略できるフィールドの隣には、レベルが少なくとも50以上はあるモンスターが、普通に徘徊しているらしい。
とにもかくにも、確実に町に行きたいなら、エリアボスと戦うほうがいい。という事で……
「エリアボス前」
「ボスは、大殿雷鳥。レッサー・ワイバーンみたいに空は飛ばないけど、電撃を使ってくる厄介なボスらしいわね。詳しくは、クノお願い」
「うん。電気を使った攻撃には、麻痺の追加効果があるし、雷を落とす攻撃には気絶の追加効果もあるよ。後は、身体からバチバチと放電している帯電状態の時は、直接攻撃を当てたり、受けたりすると確定で気絶が入るから気を付けてね」
「ん。分かった」
「了解」
雷鳥と戦う時の注意点を確認し、さっそく戦場にのりこむ。
「キィエエエエエ!!!!」
「鳴き声………」
「酷いわね」
「弱点は分かってないから、兎に角攻撃を当ててね」
「ん!」
「了解!」
初手は『土槍』で先制。
今回は、新たにゲットしたスキルをドンドン試していきます。
先ずは、【氣術】スキル。身体の中にある氣力を使い、近接攻撃力を上げるスキルで、他にも氣力関連の攻撃スキルもいくつか習得できる。
「『氣弾』!」
掌に氣力を溜めて、相手に放つ中距離攻撃スキル。レベルが低いので、そこまでダメージは与えられないが、レベル上げもかねてるので問題ない。
「ホー!」
「キィエ!?」
「きゅ!」
「!!!」
フクロの不意打ちによる攻撃に、ネーヴェとシャルーの魔術攻撃が決まる。
「キィエエエエエ!!!!」
「来るわよ!」
雷鳥の大技、ランダム雷落とし。
手筈通りに、クノの所に集まる。
「『対自然結界』!」
「…………」
クノと大福による【結界魔術】で、ランダムで落ちてくる攻撃を完全に防ぐ。更に、大福の【反射】スキルによって、一部の雷が、雷鳥に跳ね返っていく。
「キィエエエエエ!!!!」
「来たわね帯電状態。スノウ宜しく!」
「ん」
お久しぶりの【仙人化】。そして【風纏】。もう風というよりは、暴風を纏っているような感じですが……さて、やりますか!
「『竜巻風拳』!」
本当に腕に竜巻を纏いながら、雷鳥に拳の一撃を食らわせる。
「キィ………エ………」
「帯電解けたわね。『烈火五連』!」
「『クロス・シャイン』!」
「『剛鬼打』!」
【鉄扇術】にある攻撃スキル『鬼打』の上位スキル、『剛鬼打』を叩き込む。他の二人も、大技で決めに行く。
「キィエエエエエ!!!!」
「ホー!」
「キィべ!?」
あ、フクロが倒した。
釈然としないな。うん。




