『自由の風』
時間は大分進んで、七日目の朝。
四日目と五日目と六日目の三日間は、主に素材集めを中心に行動した。四日目の朝になって気づいたんだよ。そういや、最近海や、草原とかにしか行ってないな、と。そんな訳で、島をかけずり回って素材を集めまくりました。
薬草や毒草だったり、鉱石だったり、木の苗だったり。そんな感じで、素材を集めまくりました。その間に、ボス討伐のアナウンスも幾つか流れた。それがこちら。
《魔蟲の森のイベントボス。“キメラワーム”が討伐されました。》
《夢現の湖のイベントボス。“幻ノ裸亀貝”が討伐されました。》
《透獣の森のイベントボス。“白葉鎌鼬”が討伐されました。》
《盗人の湿地のイベントボス。“嗤う消鷺”が討伐されました。》
《宝晶の山のイベントボス。“宝鉱帝亀”が討伐されました。》
《迷宮最下層のイベントボス。“デビル・シャドウ”が討伐されました。》
こんな感じで沢山討伐されました。
あ、他にもちょっとしたことがあったんだった。多分イベントがらみで、いや、十中八九イベントがらみだろう。なんせ
「スノウ! ご飯まだー?」
「リューニャ様、お行儀悪いのですよ。」
イベントに突然住人が出てくるなんて、イベントがらみ以外あり得ないだろ?
一人は、ゴスロリちっくなドレスを着た、赤髪ツインテールにルビーのような瞳をし、額から青と黒の縞模様の角をはやし、背中には白い蝙蝠の羽があるらしいリューニャという魔族の女の子。
もう一人は、メイド姿のふわふわの灰色の髪に、耳の少し上から羊のような角をはやし、潤んだ青色の瞳をした、リューニャの専属メイドのリリルィ。
この二人が昨日の夕食中に、ひょっこり出てきて
「その料理を特別に私に食べさせてあげるわ!」
と、リューニャが高笑いをしながら出て来て
「申し訳ないのです! リューニャ様は普段からこんな感じなのです。出来れば、ご馳走してほしいのです。お礼はするのです!」
と、ペコペコしながらリリルィが出て来たので、とりあえずリューニャのセリフにはツッコまずに、料理を食べさせた。
目を輝かせ、満面の笑みで食べる二人に嬉しくなった。やっぱり、美味しく食べてもらうのが一番だよな。
んでんで、二人からなんでこんな所にいるのか聞いたら、リューニャがこっそりお城を抜け出したのをリリルィが止めようとしてたら、リューニャが城にあった“ランダム転移石”を使ってしまい。気づいたらここにいたらしい。ここで気づいたのだが、リューニャはどうやら魔族の王女様みたいだ。
という訳で、今に至ります。
「今日はなんなの?」
「魚肉ハンバーガー。」
牛肉もあるからハンバーグは作れるけど、出来る限り節約したい。
「魚? 牛肉じゃないんだ。」
「リューニャ様。作ってもらってるのですから、文句は駄目なのです。」
「分かってる。はむ……ん! 美味しい!」
上手く出来て良かった。良かった。にしても、今頃お城はパニックになってると思うんだが、この二人分かってるのか? 満面の笑みで魚肉ハンバーガーを食べる二人を見て、あ、こりゃ分かってないなと思う。
ここで、二人が魚肉ハンバーガーに夢中になってる隙に、クノとライラと三人で会議。
「(私は早く帰したほうがいいと思うけど。)」
「(でも、リューニャは言っても聞かないと思うわよ?)」
「(ん。絶対聞かない。)」
ちらりと二人のほうを見ると、食べ終わったのか、今度はネーヴェ達を構い始めた。ネーヴェはちょっと嫌そうだな、大福は何時も通り、フクロはされるがまま、シャルーは楽しんでる。さて、これからどうするかな? この二人を残して行くわけにもいかないし……うーん。
「よし! そろそろ行くわよ!」
「「「「え?」」」」
「探検よ、探検! 一度やってみたかったの。」
ウキウキしているリューニャ。これは、ダメと言っても聞かないだろう。ここは、一緒について行って守ってあげるのがいいだろう。リリルィも申し訳なさそうにお願いしてくるし。苦労してるんだろうなぁ。
「先ずは、何処に行くの? この辺り詳しいんでしょ?」
「うーん。」
「何処がいいかしら?」
「“精霊の泉”なんてどうですか?」
「成る程。」
「いいわね。それじゃ、行こっか。」
という訳で、“精霊の泉”に行くことにした。あそこなら、ネーヴェ達を気に入ったリューニャも喜ぶだろうし。
森の中を歩いて行くのだが、拠点の近くの森には奴がいるのですよ。そう、キモい芋虫がね。奴らが出る度にネーヴェ達が倒すのだが、やられる時が凄いキモい。リューニャとリリルィもキャー、キャー悲鳴を上げて、涙目で「帰りたいよぅ。」と言い始めたところで、やっとこ“精霊の泉”についた。
「「わぁ!」」
“精霊の泉”には相変わらず沢山の魔獣や幻獣、神獣がいた。それに。
「きゅ!」
「「「「きゅ! きゅ!」」」」
「きゅー!」
ネーヴェのお母さんと、兄弟達がいた。相変わらずカラフルですね。そしたら、兄弟達が何かをねだるように俺の足下でピョンピョンし始めた。
「何?」
「きゅ!」
「きゅー!」
きゅー、きゅー言われても分からないものは分からない。あ、もしかして踊ってほしいのかな?
「踊ってほしいの?」
「「「「「きゅ! きゅ! きゅ!」」」」」
「何々? スノウ踊るの?」
「参加したいけど、踊りか~。歌なら得意なんだけど。」
「私もフルートなら出来るんだけどね。」
「私が持ってるのですよ!」
そんなこんなで、俺は踊り、クノは歌、ライラはフルート、リューニャはハープ、リリルィはピアノ。曲はこのゲームならプレイヤー住人誰もが知ってる歌詞つきの曲。“空と陸と海の奇跡”という曲だ。
俺以外の皆はやる事決まっているが、俺はなんとなくというか、自由に、曲にあうだろうなぁ~という舞いをする。
暫くすると、辺りに光の球が漂い始める。綺麗だな………って、これもしかして『奉納舞い』扱いされてる?
『奉納舞い』とは、以前アザミさんに教えてもらったのだが、巫女が音楽とともに神に舞うという、まさしく神への奉納舞いの事だ。でも、“見習い”巫女じゃ奉納舞いは出来ないハズなんだけど………あ、もしかして精霊かな? 精霊だよね? 精霊って事にしとこう。
そして、曲が終わった。
さて、今俺の目の前には、ニコニコ笑っている綺麗な薄緑色の長いポニーテールに、エメラルドグリーンの瞳。白にほんの少し緑を混ぜたようなワンピースを着ている、美しい女性なのだが、身体がうっすらと白く光っている。
『“風”が私を呼んだ。』
『早くおいでよと。』
『天空が私に囁いた。』
『貴女が呼んでいると。』
『だから、来たの。』
『二つの風が見つけた乙女。』
『自由を謳う美しい乙女。』
そこまで言うと、俺の頬に手を添え額に口付けをしてきた。
『風はいつも貴女とともに………』
それだけ言うと、女性は消えた。
《『風神アネス』の寵愛を授けられました。》
《異名、“風の愛し子”を会得しました。》
《『風神アネス』から“不可思議之風”を与えられました。》
《『風神アネス』の寵愛を受けたため、“祝福の風”、“竜王ノ証≪風≫”、“不可思議之風”が統合され、“無限之風”になりました。》
《条件を満たしたため、ユニークスキル【風之主】を習得しました。》
《ユニークスキル【風之主】を習得したため、【浮遊】、【風脚】、【風遊び】が【風之主】に統合されました。》
おい待て、『風神アネス』? あの女性神なの!? アクセサリーの統合って何!? ユニークスキルってどゆこと!? 【風遊び】一度も使ったことないんですけど!? 色々と混乱していると
「スノウどうしたの?」
「え?」
「それにしても、楽しかったですよね。」
「はいなのです。上手くできたのです。」
「ふふん。流石は私ね!」
あれ? 皆神様には触れないの? もしかして気づいてないの? と、とりあえず入手したモノの確認をしよう。
“『風神アネス』の寵愛”
・自由を好み、『風神アネス』に気に入られた者に、彼の神が与える。
≪寵愛効果≫
【敏捷補正:極】【風属性強化:極】
【風系統スキル強化:極】
“風の愛し子”
・“風”そのものに愛された者の証。
≪異名効果≫
【敏捷補正:極】【風属性強化:極】
〈無限之風〉
【アクセサリー:可変】
・『風神アネス』が三つの“風”を封じ込め、風の神力を与えることで誕生した、その名のとおり無限に風を産み出す宝玉。所持者の意思を受け取り、その形を変える。
≪装飾品効果≫
【敏捷補正:極】【風属性強化:極】
≪装飾品スキル≫
【風産み:Lv━】【自由強化:Lv5】
【風之主:Lv━】
『風に歌い、風に舞い、風とともにある者』
風を操ることで、声を届ける、声を聞く、空を歩く、天を駆ける。等といった事が出来るようになる。さらに、攻撃的な風を吸収し、自身を癒す事が出来るようになる。
いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?
ちょっと待て、ちょっと待て! これ絶対序盤で持ってるものじゃないだろ! ヘイルの言葉で言うなら、「ラストダンジョン攻略のために頑張って手にいれるものだよ!」だよ! 敏捷トンでもない事になってるだろうし、風属性のヤツ使ったらトンでもないことになるだろ! くそう! 【風之主】とかヤバすぎでしょ! 風無効すっ飛ばして吸収してんじゃん!
もう疲れたよ………
世界は同じですが、VRでもないし、雰囲気も全然違う短編の『コロシヤ 梟』を投稿しました。よかったら、暇潰しにお読みください




