『カオス!』
どうしてこうなった?
「ぶはっ!……(むくり)ぶはっ!……(むくり)ぶはっ!……(むくり)ぶはっ!」
「「「「「ありがたや、ありがたや。」」」」」
「ねぇねぇ、私と一緒に夕日でも……何も変なことはしないから安心して、ぐへ、ぐへへへへ……ちょ、な、なにをするだーー!? ひでぶっ!」
「「「「スノウ様には……」」」」
「「「「……指一本触れさせん!」」」」
「ひゃっはー! カオスじゃ、カオスじゃー!」
「先輩うるさいです。」
「あらあら、うふふ。」
「ちょ! 誰か止められる人ー!」
どうしてこうなった?
目をそらしたくなるカオスが、俺の目の前に広がっている。可笑しいな? さっきまでのんびり海を見ていただけのハズなんだけど、何がどうしてこんなことになったんだろ?
そう。あれは10分ほど前。剣サンマを美味しく頂き、その後は各自海で泳いだり、ビーチパラソルの下でのんびりしていたのだが、そこに聞こえてきたのだ。
「なぁ、スノウ様ほんとに此方のほうに行ったのか?」
「暗部部隊長が言ってたんだから、そうだろ?」
「なら、なんであの人追跡しなかったのよ。」
「トリップしてたら見失ったらしい。」
「「えぇ………」」
おい待て、今聞き捨てならないセリフがあったぞ? なんだスノウ様って、なんだ暗部部隊長って? トリップってどういうこと?
「えぇと、スノウちゃん………今のはその、あの」
「知ってるの?」
ずずいと、クノに迫る。何か知ってるんなら、きりきり吐きなさい。さぁ、吐きなさい。もう、どんどん吐きなさい。
「貴様ら! スノウ様はまだ見つからんのか!」
「あ、総隊長。」
ピキーンと固まってしまう。まて、今の声凄く聞き覚えがあるんだけど、俺のあの人へのイメージからして、それは絶対にあり得ないというか、というかあってほしくないというか………
「む? 海か? ということは、掲示板で噂の最強の鮫━━━」
「………うそん。」
浜辺に面した森から現れたのは、まさかのルキエさん。知りたくなかったなぁ。いや待て! まだルキエさんがさっきの連中の仲間と決まったわけじゃn
「ふぉぉぉぉぉ!?!? スノウさまありがとうございま『ぶーー!!(鼻血)』」
「知りたくなかった。」
盛大に鼻血を出して倒れるルキエさん。そして、「総隊長ー!?」と駆け寄る男二人、女一人の三人のプレイヤー。それにしても、総隊長って呼ばれてるってことは、それなりの集まりなのか? 知らずにいたかったよ。それはともかく。
「知ってたの?」
「あはははは。ごめんなさい。」
ジト目でクノを見たら、ペコリと頭を下げた。全く、知ってたなら言ってくれよ! いや、知りたくはないな。うん。
「ごめんねスノウ。こういうの嫌いそうだから、黙ってたんだ。」
「ライラまで………」
「というより、スノウさん以外のプレイヤーは殆ど知ってますよ。」
「本当? アルネさん。」
「えぇ。」
そうだったのか。それで? どういう集団なんだ?
三人に聞いてみたところ、かなり大規模なファンクラブらしく。“スノウ様親衛隊”という集まりらしい。なんでも、俺ことスノウの可愛さにやられた人達が、俺を影から護衛するプラス、仲間同士で語らいをしよう! みたいな感じで誕生したらしい。
「最近では、私やクノもスノウと一緒にしんk………ごほん。応援しようみたいな感じになってるらしいの。」
「えぇ………」
どこのアイドルだよ。
「あははは。まるでアイドルですよね。」
「「「「それだ!」」」」
あ、復活した。
「成る程。成る程。アイドルか、ナイスアイデアだぞクノちゃん!」
「チーム名を決めないと!」
「いや、それを考えるのは本人達だろ!」
おい待て、認めてないぞこっちは。
「(えぇと、認めてないんだけど………)」
「(認めてないのに、どんどん進むわね。)」
「それで、どんなグループ名がいいのかぶはっ!」
「「「そ、総隊長ー!」」」
めんどくさいな。もういつもの装備に変えるか。他の二人も同意したのか、ウィンドウを操作していくが。
「うわぁぁぁぁぁ! 待って、待って!」
「他の連中にも見させてあげたい!」
「それがダメなら、親衛隊内だけに見せるから、スクショを」
「いやぁぁぁぁぁ!!! それはダメ! ダメ!」
ライラはそう叫ぶと、一瞬でいつもの装備に切り替えた。ライラのやつ、もしかして麻痺してたのか? 普通なら、来た時点で切り替えたハズだけど…………
「あ、幻の白スク水が………」
おい。言っちゃ駄目だろう。そういうのは、言わないほうがいいんだ。好感度だだ下がりになるからな。後、そういう男は普通に嫌いだわ。
「ちょっと、スノウ様がゴミを見る目で見てるわよ。」
「あ、ほんとだ。」
「スノウ様のゴミを見る視線が俺に………ドMになりそう。」
寒気が襲ってきたので、クノの後ろに隠れる。そのクノも若干引いている。まぁ、当たり前だよな。
ここから先は割愛させてもらう。簡単に説明すると、この後他の親衛隊の人達が来た、一番隊~十番隊まであり、暗部まであると聞いた時の驚きはね。しかも、隊長の殆どが有名プレイヤーというね。しかも、迷宮で助けてくれた暗部の隊長さんにお礼を言ったら、「下僕にしてください、姫!」と言われたので、反射的に「無理!」と言ったら、orzした。
次にやって来たのは、ヘイル達《金鈴の旅団》の人達。団長と呼ばれている茜さんが、「面白そうな気配がしたから来たんだよ。」じゃあ、その手の牛串はなんですかねぇ? 俺が焼いてたやつのハズですが? 後は、ヘイルに「お兄ちゃん……」と言われたので、「諦めが肝心」と言ったり、冒頭ぐへぐへ言ってた女の人にナンパされたりした。
お次にやって来たのは、スリート姉さん率いる《エスポワール》のメンバー。なのだが、減ったかな? というか、好意的でない視線を向けていた人達がいない。気になったので、それとなくスリート姉さんに聞いたら。
「あの子達は迷宮攻略のために、一時的に参加したプレイヤーなのよ。だから、今はいないの。」
成る程。なら、なんであんな視線を? それは、迷宮に入る前にスリート姉さんが俺達を誘ったのを咎めた、副ギルマスという肩書きの人が教えてくれた。
「自分達は苦労して有名プレイヤーと知り合ったのに、簡単に友好を結んだ貴方達に嫉妬してたんですよ。なのに、ギルマスは一緒になんて言うんですから。」
「いいじゃない別に~。それにしても、スノウちゃんの水着可愛いわね。そうだ!」
そんな事を言ってスリート姉さんがヘイルとリジェさんを確保してきて、リジェさんに何かを相談した。すると、グッと親指をつき出すスリート姉さんとリジェさん。
「うふふ。美人三姉妹の水着よ~。」
「今だけですよ~。」
「巻き込まれた。」
「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」
「「「「「キャァァァァァァァァ!!」」」」」
うるさい。
まぁ、そんなこんなで浜辺は物凄いカオスになって、三日目は過ぎていきました。




