『カレー』
階段を上がると、ニコニコ顔が………
「あらあら、スノウちゃんが見つけたの?」
「ん。さっきのアナウンス。」
「やっぱり。流石は自慢の妹!」
スリート姉さん、抱きつくのはやめてくれませんかねぇ。なんか、ハアハア言いながらこっちを凝視してる人がいるんですが?
「ほんわかお姉ちゃんに振り回される、無口クール系妹…………ぐふ、ぐふふ、ぐふふふふふ。これはいい本ができそう………」
うん。聞かなかった事にしよう。世の中つっこんじゃいけないこともある。
「それでスノウちゃん。この下のボスの情報教えてくれる? 勿論対価は払うから。」
「二人共、いい?」
「どうせ分かっちゃうことだし、いいわよ。」
「私もいいと思うよ。」
二人も教えることに異論は無いようなので、“試練の石像”について分かっていることを教える。といっても、“大剣”、“盾”、“弓”、“本”、“杖”のそれぞれの役割と、ドロップアイテムぐらいしか教えることないんだよなぁ。
「従魔強化アイテムの素か~。今のところ幻獣を仲間にする予定はないけど、持っておいて損は無いわね。情報ありがと、スノウちゃん。はいこれ、対価。」
「別にいらな━━ありがと。」
流石スリート姉さん! この程度で牛肉をくれるとは………ありがたや、ありがたや。
「バーベキューには、私も誘ってね。」
「ん。」
勿論ですとも! 姉さんのセリフに、ズルい! とか、俺も! 私も! とか聞こえてくる。参加は自由ですよ~。ただし、暴れたりして迷惑かけるなら、即刻出ていってもらいますよ~。それでも言うこと聞かないなら、強制排除ですよ~。〈ツェントゥル〉に帰ってもらいますよ~。
遠回しに、人に迷惑かけたうえ、出ていかないならデスペナにするぞ♪(はーと)
と言ったら、みんな若干引いた。
そんなこんなで、階段を降りるスリート姉さん達に別れを告げて先に進むことにしたんだが、なんだか俺達のことを好意的に見てない人達がいたのが、少し気になった。
◇
時間は少し進んで、迷宮5層目。
階段を降りた所で休憩中。
《お知らせします。》
《彩雲の草原のイベントボス。“天突く虹粘塊”が討伐されました。》
およ? どうやらイベントボスが討伐されたようだ。にしても、どこのボスかな?
「これ、あの塔の事じゃないですか?」
「確かに、そうかも。」
「ん。」
あの極彩色の塔がボスだったのか、感触とボスの名前からしてスライムかな? まぁ、今は迷宮だな。というか、ここに来るのに結構時間を食った。原因は色々あるが。
ネーヴェ達がホイホイ隠し部屋を見つけ━━隠しボスは見つけていない━━たり、偽宝箱にネーヴェが食べられそうになったり、ネーヴェ達の隠し部屋発見能力に目をつけた奴らを、ボコボコにしたり……………あれ? ほとんどネーヴェ達関わってない?
「そういえば、イベントボスって何体いるのかな?」
「さぁ? というか、そろそろ戻る? 帰りの時間考えたらこの辺で引き返さないと。」
「ん。そうしよ。」
アイテムもかなり集めたので、ささっと戻ることにしよう。
道中の敵を出来るだけ無視して、迷宮の外を目指していく。それにしても、何時まで着いてくるんだ? 二人やネーヴェ達は気づいていないようだが、スリート姉さんと別れて少したった後から、後方にうっすら気配を感じるのだ。
あ、別に【気配察知】スキルを持ってるわけではないですよ。リアルスキルです。でも、ヘイルが言うには【気配察知】スキルは、元々の気配を感じる才能? てきなのをレベルに比例して強化するようなので、後々手に入れる予定です。
そんなことより、これストーカーですかね? ストーカーなんですかね? ストーカーだとしたら誰のストーカーだ? クノもライラも美少女だし、客観的に見たら俺も美少女だし。言ってて、悲しくなってくるな。
「よし、出れたわね。」
「そうだね。戻って昼食にしよっか。」
「ん。」
これ、拠点まで着いてくるのかな? よし、かまをかけてみるか。
「ちょっと忘れ物。」
「忘れ物?」
「ん。先行ってて。」
「分かった。」
ネーヴェとシャルーも一緒に行かせる。さてさて、どっちに着いていくかな? 再び迷宮の中に入って行く俺。暫く歩くと、気配が………最初より減ってる? 二手に別れたか………
まぁ、向こうには俺と同じく気づいていたフクロがいるので大丈夫だろう。とりあえず、わざと行き止まりのあるほうに行ってみる。さてさて、どう動くかな?
「おやおや、自ら行き止まりに行くとはバカな奴だぜ。」
「迷宮で手に入れた物全部、渡してもらおうか?」
「クヒヒヒ。持ち物全部掻っ払おうぜ。」
わーお。予想以上のクズが来てしまった。それも三人。
「おい。大人しく━━━」
どう倒してやろうか考えていたら、三人の首が同時に胴体から離れて、デスペナルティになった。す、凄いな。気配をまったく感じなかった、というより、俺より速いのか? これでもプレイヤートップクラスの速さがあると思ってたんだが、上には上がいるということかな?
ん? あぁ、そういうことか。速すぎて見えなかったんじゃなくて、武器が細すぎてそう見えただけか。というか、糸を武器に使う人って本当にいるんだ。
キラリとほんの少し光って分かった糸という武器。にしても、お礼言いたいんだが。聞こえるかな?
「ありがと。」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇その頃の、迷宮入り口◇
「おい、この人大丈夫か?」
「鼻押さえてうずくまってるな。というより、なんで全身黒ずくめ?」
「忍者………くノ一っぽいな。」
も、もったいなきお言葉。あぁ、主になってほしい。ん? この場合は姫か? 姫と呼ばせてほしい。この体たらくでは会えないが、いつか必ず! 待っていてください姫!
「今度は、立ち上がって拳を天に突き上げたぞ。」
「本当に大丈夫か?」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
場所は変わって拠点です。合流した二人に何か無かったか聞くが、何も無かったと答えた。でも、気配を感じないし、諦めたのかな?
「スノウお母さ~ん。今日の昼食は何ー?」
誰がお母さんだ! お父さんと呼びなさい。いや、なんかお父さんと呼ばれるのは嫌なきが……うん? これはヤバい傾向なのか? 違う、違う! 俺は可愛い女の子が好きだ! そう、クノみたいな子が! ふぅ、落ち着いたぞ。
本日のメニューですが、迷宮で手に入れた例のアレを使う時が早速きたようだな。先ずは、鍋で玉ねぎと牛肉を炒めます、次に水を入れます、じゃがいも、ニンジン、ほうれん草、ガボチャを投入、暫く煮込みます。
…………………
「まだ~?」
「なんか、何時もより長いですね。」
よしよし、言い感じに煮込めたな。家ではナスもいれるんだが、あいにくまだ見つけてません。そして、取り出しましたるは、忘れ物と言って迷宮に戻った後の帰りに出会ったモンスター、その名も“華麗スパイダー”という、会った瞬間に逃げるというモンスターだったが、追い付いて殴ったら落としたのだ。
カレールー詰め合わせを━━━
甘口、中辛、辛口、激辛、マイルド……等々。
そんな俺の手にあるのは………
『地獄ノ晩餐』
いや、ここは甘口にしとこう。もうルーが赤いとかじゃないんだよ。グツグツ言ってんだよ。固形物なのにグツグツしてんだよ。
「こ、この匂いは!」
「まさか!」
「お米はない。」
パンしかないんです。ナンみたいなのあるから、それで我慢してください。
なお、お米は無くてもカレーは美味しかったです。
謎の糸使い(笑)登場。




