『試練の部屋』
階段を降りると、薄暗い広い部屋だった。そして、階段の反対側には石像があった。
『獣に導かれし者達よ。』
『絆を結んだ者達よ。』
『力を持ちし者達よ。』
『選ばれし者達よ。』
『正しき心の者達よ。』
『『『『『汝らに試練を与えよう!』』』』』
そんなセリフの後に、全ての石像が動きだす。
「ちょ! これ全部と戦うの!?」
「ちょっときつそうですね。」
「頑張る。」
石像は全部で五体、鑑定結果は“試練の石像”。
見た目は顔の無い人間の石像で、それぞれ、大剣、盾と短槍、弓矢、本、杖と、五体とも持っているものが違う。
「みた感じ、本と杖はそれぞれ、魔術士か回復職ね。」
「とりあえず、攻撃してみましょう! 『光の矢』!」
「ん。『氷礫』!」
またまた新しい符。小さな氷の礫を複数ぶつける符で、一発一発は弱いが、全部当たれば結構なダメージになる。俺とクノが狙ったのは、本を持ってる奴、あんまり効いてないかな?
俺とクノの攻撃を合図に、石像達が動きだす。
「分担するわよ! 私とスノウで“大剣”と“盾”を、クノとフクロ達は他の三体を、回復するの優先で倒して!」
「ん!」
「はい!」
「きゅ!」
「!!!」
「ホー!」
「…………。」
作戦が決まったところで、全速力で駆け出し“大剣”に飛び蹴りをかます。飛び蹴りが直撃した“大剣”は、吹っ飛んでいく。現実じゃ絶対できないなこんなこと。
「スノウ。そのまま大剣よろしく!」
「ん!」
立ち上がろうとする“大剣”に、追い討ちをかけるように『爆炎』の符を三枚投げつける。
『爆炎』による煙から、“大剣”が本当に大剣持ってる石像なのか疑う速度で斬りかかってきたが、凄く速いというわけではないので、降り下ろしてきた大剣を鉄扇で受け流して、受け流した勢いで回転して脇に鉄扇を叩きつける。
ガツンっと音がする。いててて、腕が痺れるかと思った。【魔力刃】使ってればよかった。
とりあえず後ろに回り込む。
「うーん。」
【符術】を主軸に戦おうかな? “大剣”の大降りな攻撃を避けつつ考える。
「スノウ!」
声がしたほうを向くと、“盾”を連れて走ってくるライラが………成る程。
意図が分かったので、ライラのほうに走る。そのままライラを通り過ぎて、“盾”の持つ盾に足をかけて、飛び空中で逆さまになって、無防備な背中に『爆炎』の符を投げつける。そして、ライラのほうは━━━
「『烈火五連』!」
ライラの炎を纏った剣の五連撃が、“大剣”に当たる。
「ふぅ。正直、あの盾で全部受け止められるから駄目かと思った。」
「硬い。」
さてさて、向こうは二体、こっちも二人。二対二だがどちらかというと物理寄りなんだよなぁ、俺が。ライラのほうは少し魔法寄りらしい。
「火は効きにくいみたいね。」
「水かな?」
「私、【水魔術】のレベル低いんだけど………」
ライラは、【火魔術】と【風魔術】を主軸にして戦っていたのだが、最近【水魔術】と【闇魔術】も習得したそうだが、レベルはそこまでじゃないらしい。
しかし、レベルが低くても大丈夫じゃないか?
「前まで使ってたのは、魔術を剣に宿して攻撃するって感じだったんだけど、【剣術】スキルと【魔術】スキルをそれぞれ10レベルにすると、さっきというか最近使ってる“魔剣技”が使えるようになるの。」
なんでも、【魔法剣】というスキルの真骨頂は、魔術と剣を使った攻撃スキルを複合させた、“魔剣技”を使えるところらしい。そして、【水魔術】と【闇魔術】は10レベルになってないらしい。
「ま、“魔剣技”使えなくてもいけるかな? 【魔法剣】━『ウォーターカッター』!」
ライラの魔法剣が“大剣”に炸裂する。おぉー、結構効いてるんじゃないか? そして、そのまま攻撃を続けるライラ。よし、こっちもやるかな。といっても、俺が今作れる符には、“水属性”の攻撃タイプは一つしかないんだよね。“氷”もいいなら、『氷礫』も入るんだけど。
「『水槍』!」
先ほどと同じように、“盾”の背中に『水槍』を食らわせる。すると、“盾”が膝をついた。よし、畳み掛けるか。
「きゅきゅ!」
「!?」
ネーヴェの鳴き声に振り向くと、矢が飛んで来ていたので、反射的に横に倒れるように回避する。サンキューネーヴェ。向こうは任せて、“盾”を倒そう。
「せいっ!」
起き上がろうとする“盾”の後頭部に、最初に“大剣”に食らわせた飛び蹴りを当てる。ただし、今度は魔力を纏わせた状態でだ、最近鉄扇だけじゃなく、身体にも魔力を纏わせられるようになったのだ。
俺の飛び蹴りを食らった頭は砕け散り、“盾”が光の粒子となって消えた。
「『竜巻連刃』!」
ライラが竜巻のように回転しながら連撃を食らわせ、“大剣”を倒す。よし、後は後衛だけだ!
◇
「うぅ~、回復能力高すぎじゃないかな……」
「クノ! こっちは終わったわよ!」
「本当! それじゃ、よろしく!」
「分かったわ!」
「ん。了解!」
攻撃方法を見たところ、“弓”はそのまま弓矢、“本”は魔法、“杖”は回復のようだ。とりあえず、“杖”から倒すのがセオリーだし、早速やろう。
ちなみに、ここで一番役にたってるのは━━
「!!!」
シャルーだ。
空中を高速で泳ぎながら、【水魔術】かな? で、攻撃していく。ネーヴェとフクロは“杖”に攻撃をしかてけていて、大福はクノを守っている。
「とりあえず、私は“本”をやるわね。」
「ん。シャルー、“弓”に集中。」
「!!!」
それからは特に説明することもなく、後衛三体をボッコボコにした。
◇
『試練を乗り越えし者達よ、汝らに神々の祝福があらんことを。』
《迷宮の隠しボス、“試練の石像”が討伐されました。》
《討伐に参加した全てのプレイヤーに、イベント称号“隠されし試練の突破者”が与えられます。》
《“試練の石像”を完全討伐したことにより、討伐に参加した全てのプレイヤーに、“試練突破の証明書”が与えられます。》
これソロだったら、かなりきついと思うんだけど………
とにもかくにも、隠しボスを知らないうちに倒せたようだ。ここで、戦利品なんだが………
「えーと、“獅子の欠片”?」
「“獅子の欠片”、“陸亀の欠片”、“黒猫の欠片”、“霊狐の欠片”、“迅馬の欠片”、“賢猿の欠片”、“銀狼の欠片”。どれも、従魔強化アイテムや、装備の素ってなってますね。」
「今は使えない。」
「そうね。でも、いつか必要になるだろうから、また戦えるなら、何回かやろっか。」
「だね!」
「ん。」
これ以上先はないようなので、戻ることにした。
ヒビは、【採掘】スキルを持った状態でピッケルで何度か叩くか、オブジェクトを破壊できるアイテムやスキルで、ヒビ壁の耐久をゼロにすると壊せます。
石像と戦うには、条件を満たさなければならず、石像一つにつき違う条件があります。
『獣に~』→幻獣、魔獣、神獣のいずれかをつれている状態で部屋に入る。
『絆を~』→住人からの好感度一定以上。
『力を~』→ボスクラスモンスター三体以上討伐。
『選ばれし~』→特殊NPC、竜、精霊、神のいずれかに選ばれる、認められる、祝福される。
『正しき~』→悪意を持ったプレイヤーキル、NPCキルをしていない。
パーティーの場合、一人でも達成していればオーケーですが、スノウ達三人は全員上を達成しています。




