『迷宮の隠し階段』
「「「ご馳走さまでした!」」」
「凄い食べたわね。」
お腹が空いてたのか、ただの食いしん坊なのか分からないが、三人はたくさん食べた。おかげで、持ってきた食材の残りが心配になった。
「自己紹介が遅れましたね。見習い薬師のロロンです。」
「見習い弓士のフィオ。」
「えっと…………見習い闇騎士のニコです。」
あれ? 職業ってなるたけ言わないほうがいいんじゃ? まぁいいか。
白衣に眼鏡をかけたのが、ロロン。
まんまエルフの、フィオ。
大鎌をもった、ニコ。
というか………
「「「闇騎士…………」」」
「あの、ちゃんとあるんですよ。闇属性に特化した魔法騎士なんです。見習い期間は大分長いらしいそうですが、一気に二次職になれるんです。」
このゲームの職業は、見習い→一次職(“見習い”が抜ける)→二次職(“見習い”が抜けて一気にこれになる場合有)→三次職(→四次職(一部)の順で上がっていく。
だいたいは三次職または四次職が最高で、特殊なものには、就いたら即四次職なんてものもある。後は複合職とか? まぁ、結構複雑らしいです。
向こうの自己紹介も終わったので、こちらもネーヴェ達含めて自己紹介をする。
「可愛いですね。いいな~。」
「ねぇ、そろそろ戻ったほうがいいんじゃない?」
「そうですね。もうすぐ集合時間です。」
何処に行くのか聞いてみたところ、この近くにある迷宮に挑戦するらしい。
迷宮とは、その名の通りまっすぐだったり、曲がりくねっていたりする通路や、小さな部屋、大きな部屋などで構成された巨大迷路のようなもので、内部には迷宮固有のモンスターや、アイテム等があるらしい。
ちょうどいいので、動向していいか聞くと、多くのプレイヤーが挑戦しているので、迷宮入り口までの案内はするが、一緒に攻略するのは無理と言われた。
「ふふん。私達はあの大手ギルドの一つ、《エスポワール》の一員なんだから!」
「「えっ!?」」
「といっても、二軍ですけど………」
ふーん。大手ギルドねぇ………その辺よく知らないんだよな~。でも、《エスポワール》って、どっかで聞いたことあるような、ないような。
「今日は一軍と二軍で迷宮を攻略する予定です。」
「物量で攻めるんだ、なかなか経験値入らないんじゃない?」
「あははははは。そこはまぁ、別口でレベルあげますよ。」
そんなこんなで、三人に案内されて森の中を歩いて行く、途中現れるモンスターはネーヴェ達幻獣四匹が倒していく。
四匹のおかげで、全く戦闘しなくていいんだが、戦い方がね。先ずは、大福を足で掴んだフクロが先行して敵を発見、そこにネーヴェを乗せたシャルーが突撃して撃破。地味に凄い連携。
「ほら、入り口が見えたわよ。」
フィオの指差すほうを見ると、開けた場所に洞窟の入り口がボコッと出ているだけで、その入り口の周囲にテントや蓙がしかれていた。
フィオ達は、それじゃっ! と、プレイヤーの塊の一つに走って行った。
というわけで、三人+四匹の俺達は早速迷宮に入ろうと思ったんだが、フィオ達が走って行ったプレイヤーの塊の中から手を振っている知り合いが…………あ、そうか《エスポワール》ってギルド名どっかで聞いたと思ったら、あの時か。
「スノウちゃん久しぶり。」
「おひさ。スリート姉、こっちネーヴェとシャルー。」
「きゅ!」
「!!!」
「あら。可愛いわね♪ スノウちゃんと一緒だと、余計可愛いわ~。」
そんな目したってやらんぞ。
「ちょっとスノウ!」
「何?」
「スリートさんがお姉さんなんですか!?」
「ん。」
「あらあら、スノウちゃんのお友達?」
「「は、はい!」」
自己紹介は割愛。
「そうだ! 三人とも一緒に攻略しましょう!」
「ギルマス!」
「なぁーに?」
「勝手に決めないでください。」
「相変わらず固いわね。」
「いい、三人と四匹で行く。」
「そう? それじゃ、頑張ってね。」
「ん。」
スリート姉さんと別れて、迷宮に入る。さてさて、中はどんな感じかな?
◇
迷宮の中に入ったが、まんま洞窟だった。道が三つに別れていて、そこだけ迷路な感じがする。
「どれにする?」
「うーん?」
「ホー。」
迷っていると、フクロが右の通路に飛んでいき、暫くすると戻って来て、今度は左の通路に、その次は真ん中の通路に入った。
「それで? フクロ、どれなの?」
「ホー?」
「分からないなら行かないでよ!」
首を傾げるフクロを、ライラがもふる。
「とりあえず、真ん中にしよう。」
「ん。」
「そうね。」
先ずは真ん中の通路に入って行く、さてさて、迷宮特有のモンスターがいるそうだが、どんなのかな?
「あ、来たわよ。」
通路の先からやって来たのは、みすぼらしい格好をした緑色の身体に、棍棒を持った生き物が数匹。鑑定結果はゴブリンだそうだ。
「よし! やるわ………よ?」
「終わった。」
「あははは………」
俺達が戦おうとしたら、四匹がさくっと片付けてしまった。ここにくるまでの道中も思っていたが、ネーヴェ達はかなり強い。四匹揃って協力すると本当に強い。
その後も進んで行くが、モンスターは見つけたそばからネーヴェ達が倒していくので、正直迷宮攻略というより、ネーヴェ達の散歩に付き合ってる気分です。
「きゅきゅ!」
「♪♪♪」
「ホー。」
「…………。」
四匹が突然立ち止まり、壁を見つめ始める。どうかしたのかな?
「この壁、ヒビが入ってるよ。」
「ほんとね。」
「ん。」
といっても、どうすりゃいいのかな?………あ、そいうえば、あれが使えるかも。
「任せて。」
ヒビの入ってる壁に符を張り付けていく。準備が完了したので、通路の先と前に別れる。他のプレイヤーが巻き込まれないようにするためだ。
「『爆炎』」
爆発音と何かが崩れる音が暫くした後、静かになる。
今回使ったのは、【符術:Lv15】で書けるようになった符だが、自由度の高さが売りのこのゲームなら、今回のようにヒビの入った壁ぐらいなら破壊できるようだ。まぁ、正攻法じゃないと思うけど。
「壊せたね。」
「階段あるわよ。」
「行ってみよ。」
とりあえず、何があってもいいように準備をして、階段を降りた。




