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『とある戦い:チーム“雹”』


明けましておめでとうございます! 今年も宜しくお願いします!











スノウが辻斬りと戦っていた頃。他の場所でも、戦っている者達がいた。



「『ホーリースラッシュ』! やっぱり、闇系統には良く効くね!」


「『グランドクロス』! しかし、数が多すぎますね」


「『岩破拳』! しかも増えてくし~。絶対ハズレクジだよコレ!」


「『アクア・ランス』、三つ。文句言わない」


「皆さんもっと集中するんですの!」



一般プレイヤー達の砦から少し離れた場所、そこではプレイヤーがPKと激戦を繰り広げていた。


PKはたった一人。対するプレイヤーは、五人。しかし、圧倒的な数の差によりプレイヤー側は、PKに近づけずにいた。



「危ないなぁ、お嬢ちゃん達。おっさんは弱いんだぞ?」


「どの口が言ってるの!」



葉巻を加えた太った男、名をドン・クラッチ。マフィアのようなロールプレイをしようと、裏町や裏社会を頑張って探していた結果、軍団召喚能力を手に入れてしまったPKである。しかし、PKといってもロールプレイのために、裏社会で自身の縄張りを荒らした奴を倒した程度なので、そこまで悪評と呼ばれるものは無いが、その戦闘スタイルからPKの中では注目されている。


さて、このドン・クラッチは、実は始めはプチイベントに参加する気は無かった。別にPKが出来なくなっても、まぁなんとかなるだろうと思っていたし、第一召喚にはとあるデメリットがあり、参加した際のメリットと比べると、取り返せるモノでは無かったのだ。そういう理由から、当初は参加する気等毛ほども無かったのだが、PKギルド《Kill Road》からある報酬が提示されたのと、プチイベントで消費したものはリセットされると聞いて、参加することにしたのだ。



『ドン、向こう側に三人侵入しました』


『お、そうか。じゃ、こっちの仕事は終わりだな。どうせ突撃しても、スリートにやられるって言ったのによぉー。ま、やるだけやったしいいか』


『っていうか、連中本当に渡す気あるんすかね? こっちの事完全に下に見てるっすけど』


『五分五分ですかね。まぁ、渡され無かったとしても此方にデメリットはありませんし、問題はありません』


『そういうこった。とりあえず、もし万が一勝った時の事を考えて、報酬上げに戦闘は継続だ』


『『『了解!』』』



ドン・クラッチは、自身が持つとあるスキルを使い、味方プレイヤーと連絡を取ると、構成員(メンバー)と戦う、五人のプレイヤーに目を向ける。今現在、構成員は二十人いるように調整しているが、この分だと間に合いそうもない。魔力回復のポーションをがぶ飲みしつつ、クラッチはさらに追加で召喚していく。



構成員召喚(サモン・メンバー)。それこそ、ドン・クラッチの矛にして盾、プレイヤーでも無ければNPCでも無い、人形のような存在を召喚するのが、基本的な能力(・・・・・・)であり、魔力があればほぼ無制限に召喚する事が出来る。召喚出来る構成員にはランクがあり、ランクに応じた魔力量が必要である。


ほぼ無尽蔵で限界の存在しない大量召喚。これが現実だったならば、トンでもない脅威となっていただろう。


しかし、ここはゲームの中である。



「一体一体は弱いから楽だよね!」


「そうですね。戦う前に話した通り、ドン・クラッチは長期戦が得意なプレイヤーです」


「つまり、さっさと仕留めろってことだよね! ミア!」


「任せて、『アクア・トルネード』五つ。魔力回復させてね」


「強化いきますの! 『エンチャント・ロングブレード』」



ミアが水で出来た竜巻の魔法で、構成員達を纏めて吹き飛ばす。クラッチは慌てて追加を召喚するが、ロコの強化によって攻撃範囲の広がったヘイルとルシナに倒される。そして━━━



「どりゃあーーー!!!」


「うぉぉぉぉ危なっ!? おっさんは打たれ弱いんだから、丁寧に扱え!」


「うるさい! おっさん死すべし!」


「おっさん泣いちゃうぞ!?」



ニコが両手両足を使った連撃で、ドン・クラッチを追い詰めていく。クラッチは、焦ったような表情でニコの連撃を時には避けて、時には腕でガードする。


ニコが着実にクラッチにダメージを与えるのを見ながら、ルシナは内心首を傾げていた。クラッチは未だに召喚を続けているが、自分の護衛には一切使わない。何故か、自分達にばかり向けて、ひたすらニコの攻撃を耐えている。


何か可笑しい。そう思った時、クラッチがニヤリと笑った。



「っ!? ニコ! 引いて下さい!」


「え?」


「『召集(コール):五十嵐』!」



クラッチの隣に魔法陣が出現、そして、そこから大柄な人影が現れて、呆気に取られているニコに向かって、手に持っていた巨大な斧を振りかぶる。



「『捨て身の一撃』!」


「ひっ!?」


「! 『カバームーヴ』、ぐっ」


「ヘイル!」



斧がニコに当たる直前、アーツを使用したヘイルが割って入って剣で受け止めるが、強力なアーツを使用した斧の一撃は、完全には受け止められずに、吹き飛ばされた。


慌てて、ロコがヘイルに回復魔法をかける。



「良くもヘイルを!」


「そいつは悪手だぜ!」


「え?」



ニコが斧を持った男を攻撃するが、斧でガードされる。そして、斧の男がニヤリと笑った。



「『強制勧誘』!」



クラッチがニコの頭に手を翳し、アーツを発動させる。すると、ニコは加勢しようとしたヘイルに向けて、跳び蹴りを決めようとした。慌てて避けるヘイル。



「ちょ、ちょっとニコ!? 何するの!」


「分かんない! 体が勝手に………」


「プレイヤーの召喚に、魅了………いえ、それより質が悪そうですね」


「『リフレッシュ』! 効きませんの!?」



ヘイルとニコが格闘する中、ルシナは冷静に状況を分析する。ロコは、状態異常回復の魔法が効かなかったことに、驚いている。



「悪いな、お嬢ちゃん達。おっさん、こうみえて人望は結構あるんだぜ? そっちのお嬢ちゃんも、おっさんのカリスマに当てられ━━━」


「そんなことないよ!」


「おっさん泣きそう」


「まぁまぁ、ドン」



ヘイル達はさらに追い詰められる。ヘイルとニコは格闘を続け、ルシナ達は増える構成員と戦い身動きが取れない。そして、クラッチの方は斧を持ったプレイヤーに守られている。


完全に膠着状態………いや、MPが続く限り足止めが出来るクラッチの方が、消耗した所を狙える分強いだろう。



「あぁもう! ルシナちゃん! あれ使っちゃうね!」


「………そうですね。ここで出し惜しみしても意味は無さそうです。ニコは私が止めます」


「うぅ………面目ない」



ヘイルはルシナ達の方に移動し、ニコの相手をルシナに任せ、自身の目の前で剣を構えて目を閉じる。ヘイルに近づく敵は、ミアが魔法で吹き飛ばし、ロコは皆をせっせと回復し、ヘイルに強化をかけていく。


そして、それをぼーと見るおっさん………もとい、ドン・クラッチ。



「あーヤバそうだな」


「もう1つ上、使わないんで?」


「んー」



ドン・クラッチは少し考えた後、ニヤリと笑って今じゃないと呟く。そして、味方プレイヤー………クラン《ザ・クランチ》のメンバーに、撤退するという連絡を入れる。


そして、クラッチの連絡が終わった時、ヘイルの準備も終わった。ヘイルの剣には、青く輝く巨大な光の刃が纏われている。



「【破邪聖刃】、『グランド・セイントスラッシュ』!」



巨大な刃が、クラッチが召喚した構成員、そしてクラッチ本人すらも飲み込む。純戦闘タイプではないクラッチは、最後に「そういう攻撃をしてくるのか」と呟いて、デスペナルティとなって消えていった。


クラッチが消えると、ニコも元に戻った。



「勝ったー!」


「やりましたね」


「ふぃー。一時はどうなるかと思った」


「やったね」


「勝ちましたの! 嬉しいんですの!」



ヘイル達は、勝利の余韻に酔いしれながら、砦へと戻っていく。自分達の戦いが、序の口だったと言える程の戦いが、未だに行われている砦に。





















「いやー負けた負けた」


「わざと負けたくせに何言ってるんすか」


「まぁ、今回はそこまで大事な戦いでは無かったですしね」


「にしても、PK側は自身満々だったすけど、どうなるんですかね?」


「あぁ、負ける負ける。向こうには、ソウレンがいるし………多分、後一時間もせずに負けが決まるだろ」


「そうですね。しかし、あの人達と戦わなくて良かったですね」


「あぁ、まだ交渉の余地があるからな」






何話ぶりの登場だ?


あれ? 可笑しいな、ヘイル達がメインのつもりだったのに、ドンさんの方がメインみたいに…………ま、いっか!

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