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七十六話 次の一手

 皆様、こんばんは。

 今回の更新は三話分です。


 少し修正しました。

 降伏勧告を受けたリーディアは、期日いっぱいを使い、降伏を受け入れるという旨を伝えてきた。


 リーディアの王を捕らえ、処断するという流れになったが……。

 最も効率よく領の運営が出来る人材という事で、領主として働かせるべきだと私は主張した。


 子供を人質として王都に軟禁し、その働きによって罪を減じるという事を条件にする。

 派閥の人間を使い、その意見を押し通し、ゼリアはその案を採用した。


 ゼリアは、内政に限れば臣下の話を受け入れる傾向にあった。

 難しい事にあまり関わりたくないのだと思われる。

 だからこそ、内部の問題が肥大するという見方もできるが、私としては好都合である。


 今回の一件で私の発言力は高まり、磐石になった。

 大体の意見は強引に通す事もできるだろう。

 この国の場は整ったと見ていい。


 しかし、それで全てが上手く行くという話でもない。


 内政と違って戦に関して言えば、ゼリアは誰の忠告も聞かないからだ。


 ゼリアの目は、常に最大の敵としてバルドザードを見ている。

 パパを奪った事への恨みから、目を背けられないのだ。

 それ以外は些事。

 戦いの事に関しては私の話も耳に入らない。


 だから、目を向けさせる必要がある。


 リーディアに関する後処理を済ませると、私は王都を発った。

 自領に立ち寄り、経営状況を確認してからシャパド領へ向けて出発する。


 領城へ着くと、すぐに執務室へ向かう。

 そこではミラが仕事をしていた。


「おかえりなさいませ」


 私に気付くと、ミラは迎え入れてくれる。


「不在中に何か変わった事は?」

「バルドザードから使者が訪れました。持ってきた内容は、こちらを支援したいというものです」


 知識の範囲内だ。


「それで?」

「申し付かっていた通り、受ける事にしました」

「使者の名は聞いているか?」


 ゲームではシロだったはずだ。

 彼女が幹部の一人であると発覚するのは続編になってからだが。

 初めて知った時に「まさかこいつが?」となったのは憶えている。


 王都で私と話をして、その後に来ていたなら大忙しだな。


「ギオールと名乗っております。それに、すぐ帰りましたがリジィという者もいたとか」


 シロではない。

 しかも二人で来たのか……。

 この変化はどういう事だ?


 二人を動かしたというならば、それはヘルガの意図に違いない。

 そして二人はどちらも戦闘で真価を発揮する人材。

 お使いだけで寄越すにはあまりにも贅沢だ。


 同盟国の反乱で、私に多少の警戒心を持たせてしまったかもしれないが、私と反乱軍の繋がりについては一切伝わっていないはず。

 そのように注意を払ってきた。


 ヘルガの意図が反乱軍単体のものであるなら、何を思って二人を送ったのだろうか。


「二人はバルドザードの申し出を伝えに来ただけか?」

「いえ、ギオールは今もここに滞在しています」


 なんだと?


「リジィの方はすぐに立ち去ったのですが、ギオールはリュー達と意気投合してしまいまして」


 ……それは、バルドザード側から戦力の貸与として武闘派二人を寄越したという事でいいんだろうか?

 ゲームでそのような事はなかったが、もしかしてヘルガからは戦力を貸し出さなければならないほど反乱軍は頼りないと思われているという事か?

 じゃあ、何でリジィは帰った?


 わからん。


 ミラの報告が、次に移る。

 各地の反乱軍が合流し始めているというものだ。


「王は必要なく、民だけの世界を作る、か……」


 報告を聞き終え、その中にあった人物の考えを口にする。


「世迷い言です。未来の見えない者には理解できない、と罵倒されました」


 ミラが不機嫌そうに言う。

 わざわざ伝えてくるという事は、よほど腹が立ったのか。


「その人よりも、君の方が未来は見えているはずなんだがな」

(アマテラス)の話ですか?」


 未来予知と思考伝播がアマテラスの能力だ。

 しかし、今まで彼女がそれを使っている所は見た事がない。


「本当にそのような力があるんでしょうか?」


 そう問い返してくるという事は、まだ聖具を使いこなせていないのだろう。


「私が信じないからだ、とコレは嫌みったらしく言っておりますが」


 ミラは頭の(アマテラス)をつつきながら続ける。

 波長は合っても、気が合わないという事なのだろうな。


 ゲームではレベルアップと共にスキル性能もクラスアップしていた。

 イベントがきっかけで変わるという事もなかった。

 こればかりは、どうすればいいかわからないな。


「ま、少しずつ仲良くなってくれ」

「努力はいたしましょう」

「じゃあ、これからの方針について話そうか」

「はい」

「私はこれから、ディナールを目指そうと思う」

「ディナールですか」


 ミラは私の言葉を繰り返し、黙り込んだ。

 どういう意図か、推し量ろうというのだろう。


「確かに、落とす事は可能でしょうね」


 ディナールは私の治める領だ。

 どうにか行き着けば、無血開城は間違いない。


「王都に近づきますね。攻め上がるには、戦力が心許ないと思いますが」

「不可能かな?」

「難しいだけです」


 ミラはプライドの高い所があるが、こういう時に虚勢を張る事はない。

 できなくはないのだろう。


「拠点は移すのですか? それとも増やすのですか?」


 その二つには大きな違いがある。


 シャパドからディナールまでには、三つの領を跨いでいる。

 当然、人を移せば飛び地となる。

 反乱軍の戦力的に、四方を敵に囲まれた領土を増やすのは現実的でないだろう。


 ミラの懸念はその部分にあると見た。

 けれど、その懸念は杞憂である。


「いいや、このまま途中にある三領を併呑し、一直線に攻め上がろう」

「……! 本気ですか?」

「もちろん。そしてディナールに辿り着けば、次は国軍が相手だ」


 ミラの表情は驚きから戦慄に変わる。

 流石にこれは無茶だと思うか。


「無謀です。如何に人が増えたとはいえ、所詮は賊と見紛うばかりの雑兵ばかり。国軍と戦うなどできません」

「だから鍛え上げるんだ。ディナールまでの道程は、練兵でもある。この期間に、玉石混交を精査し磨き上げる」

「ですが!」


 言い募ろうとするミラと視線を合わせる。

 ミラは口を(つぐ)んだ。


「君の優秀な頭脳は、僕の説得じゃなく。どうすれば弱兵で強兵を討てるか、弱兵を強兵に仕立て上げられるか、という事に使ってくれ」


 ミラの肩に手を置く。


「何、君ならできる。僕が選んだ人間なのだから」

「……承知しました」


 ミラもまた、鍛え上げなければならない人間だ。

 この無茶を凌げる人間になってもらう。

 新居に移って数年。

 ゴキは未だ見ないが、ついに紙魚が涌いてしまった。

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