表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/131

四十六話 変わるもの 変わらないもの

「マ〜コ〜ト〜ちゃん。遊びまぁしょお」


 倉庫内に隠れるマコトに向けて呼びかけた。

 私の隣にはクローディア、後ろには松明を持った兵士達が控えている。

 さらに、兵士達の前にはマコトの仲間達が後ろ手で縛られて座らされていた。


「他のお友達とはもう楽しくやってるよぉ。お話したいのにみんなシャイで困ってるんだぁ。共通の友人である君が、僕達の仲を取り持ってくれないかなぁ?」


 私の呼びかけには何も返ってこない。

 けれど、根気よく返事を待つ。

 すると、マコトともう一人見知らぬ女の子が外へ出てきた。


「悪い子だなぁ、マコト。少し見ない間に、君がこんな不良娘になっているなんて僕は悲しいよ」

「何で、あんたがここにいる?」

「君に会いたかったからだよ」


 私は何気なく答えた。


「どうして俺がここにいるとわかった?」

「おかしな事を言うね。君は招待されてここに来たんだよ?」

「どういう事だ?」

「この倉庫は侵入(はい)りやすかっただろぉ?」

「! 全部、あんたの手の平の上だって言いたいのか?」

「気付かれないように頑張ったんだよ。捜査の厳しさに緩急をつけて、人員もさりげなく減らして、でも警備を薄くしすぎないよう、君達の能力ならどうにか入り込めるであろう厚さの警備をここに敷いたんだ」


 私が笑いかけると、マコトは強く睨み返してきた。


「君はどうして泥棒なんかになっちゃったんだい?」

「俺達は、奪われた物を返してもらっただけだ!」

「別に国は農民から作物を奪っているわけじゃない。倉庫にあるのは正当な値段で国が買い取ったものだよ。それを持っていくのは泥棒だ。たとえお金を盗っていかなかったとしてもね」


 反論すると、マコトは言葉に詰まる。


「逃げろ! マコト! ハヅキ!」


 縛られていたマコトの仲間が叫ぶ。


「私達の事なんてどうでもいい! お前達だけなら逃げられる!」

「だってさ。どうする?」


 その言葉に便乗して、マコトに問いかける。

 マコトには葛藤が見えた。


 でも悪いね。

 もう少し話がしたいんだ。


 私は手にしていた長柄のハンマーでマコトの仲間を殴りつけた。

 殴られた鼻から、おびただしい量の鼻血が流れ出る。

 私が片手で振れる程度のものであるが、それでも遠心力を加えた質量武器という物は威力が出る。


「お前!」


 マコトが怒声を飛ばす。


「死なないよぉ、これくらいじゃ。魔力も腕力も足りない私が殴っても、火花すら出ない。ただ、鼻の骨は柔らかいからねぇ。当たり所が悪かったんだ」


 ハンマーを肩に担ぎ、ぽんぽんと柄で肩を叩きながら笑いかける。


「さて、他にも柔らかい場所はあるね」


 私がハンマーを目の位置に移動させると、マコトの仲間はヒッと怯えた声を漏らした。


「やめろ!」


 その様子に激昂し、駆け出すマコト。

 木刀を上段に構え、私に突撃してくる。


 いいね。

 いい感じに冷静さを欠いてる。


 私は一歩前に出て、マコトを迎え撃つ。


「きええええええええっ!」


 気合を叫びにし、猛烈な勢いで迫ってくる。


 なるほど。

 今ならよくわかる。

 怖くないね。


 マコトの木刀が振り下ろされる。

 その直前に、私はマコトの足をハンマーで殴った。

 ただ殴ったのではなく、駆け足で上がった足を狙い横から払うように打った。

 傷つけられるものではないが、衝撃でバランスは崩れる。

 そこを狙って、さらにマコトへ背中をぶつけるように体当たりをかました。


「なっ」


 驚くマコトの手首を掴み、そのまま背負い投げた。


「がっ!」


 地面に背中を叩きつけられた痛みに、マコトは悲鳴を上げる。

 そんな彼女の目の前に、ハンマーを突きつけた。


「殺してやるという気迫が足りない。昔そう言われたっけ。君は変わらないな」


 微笑んで語りかける。


「……あんたは変わったな」


 私を睨みつけたまま、マコトは答えた。


 仕方ないよ。

 変わらなければ、目的が果たせないからね。


 彼女の顔を覗き込むようにしゃがみ込む。


「僕が何故、こんな事をするかわかるかな?」

「わからない」

「リシュコールが戦争に負け、ここがバルドザードの領地になったらどうなると思う?」

「さぁな。今が最低なのに、これ以上酷くなるって言うのかよ?」

「そうだねぇ。僕は酷くなると確信しているが、それを証明する手段はないかな。だから、僕がどうして必死になるのかという話をしようか」


 脈絡のない私の話に、マコトは怪訝な表情をする。


「動機は簡単。君と一緒さ。もしリシュコールが負けるとなれば、私の家族は死ぬだろうなぁ」

「何で?」

「新しい支配者にとって、旧い支配者は邪魔だからだよ。家族を守りたいという気持ちはわかるはずだが? 家族を守るためならなんだってする。どんな手段だろうが選ばない」


 君と同じ、という言葉にマコトは得心が言ったようだった。

 けれど、納得したわけではないだろう。


「だからって――」

「国の運営する施設を攻撃する事は、この国において犯罪行為だ。君は他人のためにすらこんな事ができるんだ。当然、家族のためでも同じ事ができる人間だ。そうだろ?」


 言いながら、私はマコトに手を差し出した。

 彼女は困惑する。


「だから僕を手伝ってくれ、マコト。君の力が必要だ」

ボツ案


「どうして俺がここにいるとわかった?」

「おかしな事を言うね。君は招待されてここに来たんだよ?」

「何? どういう事だ?」

「この倉庫は侵入(はい)りやすかっただろぉ」

「何が言いたいんだ?」

「今ので察してくれると思ったんだがねぇ」

「馬鹿にしてんのか!」

「馬鹿にしてるけど?」


 マコトが想定以上にアホになるのと、話が進まないのでボツりました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ