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閑話 スタンドアローン・コンプレックス

 予め決めていた合流地点で、シロはリジィさんを待っていました。

 合流地点には、リジィさんが置いていった家族達がいて私は少し怖い思いをしていました。


 しばらくして、リジィさんがやってきます。


「おかえりなさい」


 やってきたリジィさんの足元には、仔犬と仔熊が群がっていました。

 子供達にじゃれつかれ、歩きにくそうです。

 靴も靴下も引っかかれたり噛み付かれたりでボロボロです。


 そんなリジィさんに、待っていた家族達も群がります。


「ずいぶん大家族になって帰ってきましたね」

「この子達の親は、私の都合で命を落とした。なら、私が親代わりとしてきっちり面倒を見るのが筋だろう」


 彼女は自分がけしかけた事で命を失った獣達を気にしているようでした。


 その内の一匹がシロの方にやってきます。

 尻尾を振って、シロを見上げています。

 多分山犬なのでしょうが、子供だと犬と変わりません。


 可愛いです。


「気に入られたようだな。お前が世話をしてみるか?」


 リジィさんはそう訊ねてきます。


「シロは自分以外の命に責任を持てませんよ」

「そう答えられる奴は好きだぞ」


 そう言われると少し嬉しいです。


「しかし……何故お前はロッティを殺したくないんだ?」

「こっちにもいろいろあるんですよ」


 ロッティちゃんはシロを友達だと言ってくれました。

 本当は少しだけ疑わしさも覚えていますが、それでも彼女がそう言ってくれたならシロも友達だと思いたいです。


 シロは裏切り者が嫌いです。

 自分も裏切り者になるつもりはありません。


 本当は襲撃に関わらないのがいいのでしょうが、シロはヘルガさんもロッティちゃんも裏切りたくないのです。

 なら、こういう形になってしまうのも仕方ありません。


「いいじゃないですか。彼女一人を殺すだけなら、リジィさんだけで十分でしょう?」

「子供達程度なら十分だ。だが、あいつは無理だ。私と相性が悪すぎる」


 護衛の女性を言っているのでしょう。


「正直に言うと、今回はお前に腹が立っている。しっかりとあいつを仕留めていてほしかったというのもあるし、標的の襲撃に加担してくれていたなら被害も少なかっただろう」


 態度は穏やかですが、シロを見るリジィさんの目にはかすかな怒りが見えます。


「あれで死なないなら、シロにあの護衛は殺せませんよ。嫌な予感がしたのでずっと警戒していましたけど、それでも隙を衝かれて狙撃し返されたんですから」


 リジィさん側の戦況が気になって、視線を少し向けただけ。

 それだけのわずかな隙に、あの護衛は弓を撃ち込んできた。

 目視などできないだろうに、気配だけでその隙を探り当てた。


 気付いた時には、反撃など考えられなかった。

 シロには逃げる事しかできませんでした。


 もう少し距離を取るべきでした。

 矢の込められる魔力が威力を保つのは、長くても二秒程度。

 シロの得物はそういった威力の減衰がないので、矢の威力が持たない距離で戦えば封殺できます。


「シロは自分のしたいようにしますよ。やりたくない事はやりません。ヘルガさんだってそれを許してくれていますし、リジィさんだってそうでしょう? リジィさんは獣達(自分の家族)が大事で、だから反撃を受けた時にすぐ退かせた」

「あのまま攻め続けていても、聖具が相手では分が悪い」

「あなたが共闘すればなんとかなりましたよ。リジィさんの呪具はかけられる相手を選べるんでしょう? でもそれをしなかったのは、少しでも被害を出さないため……。あなたも、任務より家族(したい事)を優先しているじゃないですか」


 リジィさんは黙り込みました。


「結局、シロ達はみんな自分の目的のためにしか動けないんです」


 シロは人を信じられないわけじゃありません。

 本当は心から人を信じたい。

 でも、信じても人は裏切るんです。


 だから、シロは恐ろしい。

 不安が拭い去れない。


 だから、シロは欲しいんです。

 向けた信頼の報われる世界が。


「でも、それがシロ達の在り方です。それでいいと、ヘルガさんも言ってくれました」


 目的は違っても、シロ達は同じ方向を向いています。

 それがシロ達を仲間にしてくれているんだと、そう思っています。


「……そうだな。お前は正しい」

「ありがとうございます。じゃあ、帰りましょうか」


 シロ達はバルドザードへ向けて出発しました。


「次は誰が差し向けられるんだろうな?」

「さぁ」


 これからもヘルガさんがロッティちゃんに関わろうとするかはわかりませんが、シロ達が失敗した以上は次に送られるとすればもっと戦闘力の高い人が差し向けられる事でしょう。


「ギオールさんかもしれませんね」

「イヴかもな」


 その名前が出て、シロは体がかすかに震えました。

 イヴちゃんが悪いわけではない。

 でも、シロはイヴちゃんに対して恐ろしさを覚えています。


「イヴちゃんはこういう事に向かないと思いますけど」

「そうだな。ならやはりギオールが妥当か」

「それ以前に、今後は標的を変えるという事もあるかも」

「何で?」

「今回の事で狙いが露呈しましたからね。もう、ロッティちゃんは外に出てこなくなるかもしれません」

「……当然だな」


 どうなるか、先の事はわからない。


 シロがこういう事を思うのはよくないのかもしれない。

 けれど……。


 ロッティちゃん。

 できれば、無事でいてください。

書いていて、某アニメのセリフを思い出したのでこのタイトルにしました。

もしかしたら、今後変えるかもしれません。


今回の更新はここまでです。

また月末にお会いしましょう。

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