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八十七話 暴かれた正体

 ゼルダは、私の前まで来て私の名を呼んだ。


 馬鹿な……。

 今の私は仮面をつけている。

 解るはずが……。


「生きていたのか! ロッティ!」


 重ねて、ゼルダは叫ぶ。


 ああ、間違いようがない。

 ゼルダは私に気付いている。


 たいしたもんだな。

 遠目から私に気付くなんて。


 どうしたもんか。

 このまま無言を通せば勘違いとして処理してくれないかな……?

 希望的な観測に少しの現実逃避を経て、まぁありえないと断じてしまう。


 なら、建設的な思考に切り替えよう。


 私は視線をゼルダの背後へ向ける。

 リューとケイが追ってきていた。

 迎撃されて倒れていたジーナも立ち上がろうとしている。


 それを確認し、ゼルダに背を向けた。

 逃げるように駆け出す。


「待て! 何故逃げるんだ!」


 ゼルダは追いかけてくる。


 音で悟らせないため、この奇襲に馬は連れてきていない。

 逃走は自分の脚力が頼りである。

 少し心配はあったが、若干私の方がゼルダよりも足は速いようだった。


 その後ろから、リュー達三人も追ってきてくれている。

 ジーナが一足先に私の隣へ追いつく。


「どうするんだ?」

「ゼルダが追ってくるなら孤立させる」

「……来るだろ。あれは頭に血が上ってるぞ」


 好都合だ。


「なら、もう少し追いかけっこに付き合って」

「わかった」


 戦場の喧騒が遠く響く場所で、私は立ち止まった。

 振り返り、視線を向けるとゼルダも立ち止まる。

 互いの声が聞こえる距離だ。


「ロッティ」

「何?」


 一つ溜息を吐き、観念して言葉を返す。

 ゼルダに驚きはない。

 私が(ロッティ)だと確信があったのだろう。


「生きていて良かった。死んだと聞かされて、私は……」


 ゼルダは顔を歪ませる。

 鼻をすする音がした。

 少し涙が出てしまったのかもしれない。


「安心したかな?」

「もちろんだ。だが、どうなってる? どういう事なんだ? いろいろ聞きたいが、何を聞いていいのかわからない」


 私は思案に沈黙の時間を割き、ややあって答える。


「簡単に答えようか。リシュコールを倒そうと思っているのさ」


 ゼルダは驚きに目を見開く。


「何故?」

「必要だからさ。これ以上の説明は複雑だ。だから今はしない。……ただ、私の正体を知った以上、ゼルダはここから帰さない」


 私が答えると、ゼルダは周囲の様子に気付いた。

 彼女の周囲をリュー達が囲っている。


「私が生きている事、知られちゃ困るからなぁ」

「……ふざけるな!」


 強い感情のこもった怒号が夜気を振るわせる。


「どれだけ心配したと思ってる! 私だけじゃないぞ! ママも! 姉妹達も! みんなお前が死んだと思って……心を砕かれるほど悲しんだんだ! いや、今も悲しみ続けている! それがなんだ! 何がしたいんだ! お前は!」


 ごもっとも。


「お叱りは後でゆっくりと受けるさ。まぁ、それとこれとは別問題だ」

「お前達に倒される私だと思うなよ! お前をみんなの前に引き摺り出してやる!」


 ゼルダは私に飛び掛かり、そんな彼女にリュー達は一斉に襲い掛かった。

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