表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Hexe Complex  作者:
71/85

Order:71

 1人になった自室で、俺はリーザさんに用意してもらった装備を手早く身に付ける。

 タクティカルベストに各種ポーチを配置したり銃器のセットアップを行ったりと、戦闘の前には色々と準備しておかなければならない事が多いのだ。

 リーザさんはもう帰った。

 アオイも出かける準備をしている。

 まずは、バートレットの情報にあった魔術師集団を確認しなければ……。

 携帯が鳴る。

 バートレットからの続報かと思って直ぐに確認するが、今度の着信はソフィアからのメールだった。

 どうやら魔術テロの報道を見て、俺の身を心配してくれたみたいだ。メールには、また戦うのか、無茶はしないで欲しいと綴られていた。

 思わず俺は、ふっと笑ってしまう。

 外見はすっかり大人の女性で、聖フィーナでも生徒たちから頼りにされる立派な先生であるソフィアだが、メールの文面から感じる印象は昔のままだった。

 俺の手をぐいぐい引いて歩いてた昔を思い出してしまう。

 今も昔も少しトゲトゲしくて、素直に自分の気持ちを表すのが苦手な部分もあるのだが、頼りになって優しいお姉ちゃんなのだ。

 俺は大丈夫だ、心配ないと返信しておく。

 猫が笑っている絵文字も添えて。

 またメールの返信が遅れると怒られるし、ちゃんと連絡しておかないとまた余計な心配を掛けてしまうし。

 プリプリしているソフィアを想像すると、俺は思わず微笑んでしまった。

 笑いながら、ハンドガンに弾倉を差し込む。スライドを引いて初弾を装填し、安全装置を掛けてから太ももに取り付けたホルスターにしまう。

 そういえば、このリーザさんに用意してもらった戦闘服、実際に着てみると、なんだか少しタイトだ。

 俺はキョロキョロと自分の体を見下ろす。1つにまとめた髪が、後ろでパタパタと揺れる。

 艶の無い黒色で、一部にグレーや白のラインが入った戦闘服は、まるでスポーツウェアの様だった。軍警でもあまり見た事のないデザインだし、もしかしたらリーザさんがどこからか試作品を引っ張り出して来たのかもしれない。

 体にフィットして動き易くはあるけど、胸の膨らみとか腰の丸いラインなどが出てしまい、少し恥ずかしい。

 このウィルの姿になったばかりの頃は気にならなかったのだが、最近は男性の視線などがわかってしまうし、やっぱり少し恥ずかしい様な……。

 俺はそっと首を振る。

 これから赴くのは、騎士団の可能性が高い魔術師集団の拠点だ。

 集中しなければ。

 俺はぎゅっと手を握った。

 油断して良い状況ではないし、相手は騎士団の精鋭魔術師だと想定して行動しなければならない。

 俺は机に向かうと、ブルハップカービンライフルの弾倉に、鈍い輝きを放つ5.56ミリ弾を詰めていく。弾倉の形は軍警制式採用のアサルトカービンと変わらないから、戸惑う事はなかった。

 予備の弾倉はタクティカルベストへ。腰のポーチにもしまっておく。

 そして最後の弾倉はライフル本体に装填すると、ガチャリとチャージングハンドルを引いた。

 そこで、再び携帯が鳴った。

 今度はロイド刑事からだ。

 確認すると、なかなか長文のメールだった。

 世の中が大変になっていて、軍警隊員である俺の兄も大変だろうから、妹であるウィルちゃんも頑張って、という内容だった。

 そうだった。

 初めてロイド刑事に会った時、俺には軍警隊員の兄がいると言ってしまったのだ。

 オーリウェル市警であるロイド刑事も対テロ警備なんかできっと忙しい筈なのに、いらぬ心配をさせて申し訳なく思う。

 しかし、軍警隊員という設定の兄ならまだしも、妹の俺の方を心配するなんて、ロイド刑事もきっと疲れているのだろう。

 仕事の合間にあの眼鏡の先輩の目を盗んでメールしているロイド刑事を想像すると、なんだか笑ってしまった。

 ロイド刑事には、また落ち着いたら食事でもしましょうと返信しておく。

 俺は、ソファーの上に置いたままのラッピングされたコートを一瞥した。

 色々と落ち着いたら、ロイド刑事にはきっちりと謝罪して、あのコートを渡さなければ。

 俺はライフルのスリングを首に掛けながら、もう一通メールを送信しておく。

 ジゼル宛だ。

 またしばらく学校を休んでしまう旨と、また復帰したら遊びに行こうと送っておく。

 よし。

 これで大丈夫だ。

 俺は腰のポーチに携帯をしまい、部屋を出ようと扉に手を伸ばした。

 その瞬間、扉が勝手に開いた。

 俺がびくっとして目を丸くしていると、扉の向こうにはドアノブに手を掛けたアオイが立っていた。

 いつもの黒い尖り帽子に黒いマントという魔女の正装をしたアオイは、やはり驚いた様な顔をしていた。

 そのまましばらく見つめ合ってしまった俺たちだったが、やがてアオイが吹き出すように笑った。

「準備はいいようだな」

 俺も少し笑いながら頷く。

「うん」

 俺は部屋を出ると、アオイと並んでエントランスホールに向かった。

 窓の外はもうすっかり真っ暗だった。

 冬は日が落ちるのが早い。しかしそれにしても、今は時間が経つのが恐ろしく早く感じてしまっていた。

 俺はキッと前方に目を戻し、歩調を速めた。

 淡いランプの灯りが照らし出すホールには、レーミアとアレクスさんが待ち構えていた。

「お嬢さま方。どうかお気をつけて」

 深々と頭を下げるアレクスさん。

 彼らには、また騎士団に対する捜査に出ると説明してあった。

 メイド服のレーミアが、とことこと俺に歩み寄って来る。

「アオイお嬢さまをよろしくお願いします」

 むうっと怖い顔で俺を見上げるレーミア。

 まぁ、アオイの方が俺よりも何倍も強いのだが……。

 俺はレーミアの頭にぽんと手を置いた。

「うん、任せてくれ」

 そう言いながらレーミアに微笑みかける。

 一瞬恥ずかしそうに目を逸らしたレーミアだったが、すぐにパンっと俺の手を払いのけた。

「……ウィルさまもお気をつけて」

 ぽつりと小さく呟いて後ろに下がるレーミア。

 俺は恥ずかしそうにしているレーミアに、笑顔のまま大きく頷いてみせた。

「行こうか、ウィル」

 アオイがマントを開き、俺を抱き寄せる。

「ガナリーアの町の事は、駅舎しか知らない。一旦駅舎に転移してから、見晴らしの良い場所を探す」

 俺はアオイの腕の中でコクリと頷いた。そして、流れる転移術式の詠唱に身を任せるようにそっと力を抜く。

 俺を包み込むアオイの柔らかな感触。

 ほっと落ち着く甘い香。

 そういえばアオイと初めて捜査に出た時も、こうしてアレクスさんたちに見送られて転移したんだっけ。

 今となっては、それがもう随分昔の事のように思えるが……。

 アオイの術式が完成する。

 そして俺たちは、エーレルト邸を後にした。



 俺たちが転移したのは大きな丸屋根の建物の上だった。

 見回せば既に夜の帳が落ちた中、眩い水銀灯に照らされた幾条もの線路を見ることが出来た。

 ガナリーアの駅に到着したのだ。

 お屋敷の中の穏やかで暖かい空気とは全く違う、痛いほど冷たい夜気が俺たちを包み込む。ここ最近は、日に日に冷え込みが厳しくなっている様に思う。

 その夜風に大きくマントをはためかせながら、アオイが囁いた。

「あの塔へ。もう一度跳ぶ」

 そして再び襲い来る目眩。

 気が付くと、俺たちの目の前には星空のように広がったガナリーアの町の明かりがあった。目を凝らせば、ついさっきまでいた駅舎までもがミニチュアの様に小さく見えた。

 俺たちが再度転移したのは、ガナリーアの町の山の手に立つ城跡の遺跡だった。

 ガナリーアはオーリウェルの北西にある小さな町だ。人口もそれほど多くなく、俺も数えるほどしか来た事がない。ワインと、この遺跡くらいしか特徴のない町だった。

 高台にある城跡には、先ほどより強い風が吹き付ける。

 俺は片目を瞑りそれに耐える。

「いるな。魔術師だ」

 帽子を押さえ、静かに横たわる田舎町を見下ろしながら、アオイが呟いた。

 俺もライフルを握り締め、眼下の町に意識を集中してみる。

 確かに感じる。

 大きな魔素の気配が1つ……。

 俺も魔術を習得してから、微妙にだが魔素の気配というものを感じる事が出来た。

「……でも、これは、この町の貴族級魔術師とかじゃないのか」

 俺はチラリとアオイを見た。

 詳しくはわからないが、俺が感じられるのはそれほど大きくない魔素反応だけだ。

「いや……」

 アオイが目を細めた。

「これは結界術式だな。かなり巧妙に仕込まれている。恐らくは軍警への目眩ましと、人払いが目的だろう」

 町を睨み付けたままアオイが説明してくれる。

「という事は……」

 俺の言葉にこちらを見たアオイが、小さく頷いた。

「騎士団かはわからないが、何か後ろ暗い連中がいるのは確かだな」

 俺はライフルを構え直す。

 当たりの可能性が高いという訳だ。

「突入して確認しよう。向こうが仕掛けて来たら、制圧する」

 アオイが俺を見て再び頷いた。

 制圧という言葉にアオイは反対しない。

 魔術師も一般人も分け隔てなく、魔術で人が悲しむのを嫌うアオイだったが、騎士団に手心を加えるつもりはないのだ。

 奴らは既に事を起こしてしまった。

 奴らがその責任を負わなければならない事は、アオイも承知しているのだ。

「突入する前に、ウィルにはこれを」

 アオイは少し離れると、俺に手をかざした。

「天地、遠望、満ちて果てる、番なる獣」

 流れる詠唱。

 4言成句の術式が完成すると、俺の体が淡い青色に輝いた。

「身体強化の術式だ。私独自のな。多少は動き易くなっている筈だ」

 アオイが微笑む。

 俺は自分の腕を見て力を込めてみたり、つま先をトントンしてみるが、あまり変わった様子はなかった。

 しかしアオイの魔術だ。

 きっと凄い効果があるのだろう。

「ただし持続時間が短い。無理は禁物だぞ」

 アオイが人差し指を立てて注意する。

「うん、ありがとう」

 俺は微笑み、素直に頷いた。

 どのみち敵の渦中で長居するつもりはない。

 敵が騎士団かどうかを確認し、間違いがなければ出来る限りの情報収集の後撤退。後はバートレットを通して地元の軍警に情報提供するつもりだった。

 騎士団の次のターゲット、また何かしらの計画の情報を得られれば申し分ないのだが……。

「捉えた」

 遠見の術式を使用したアオイが、町の一点を凝視する。俺はライフルを背中に回し、アオイにぎゅっと抱き着いた。

「では行くぞ」

 アオイが3度目の転移術式を行使する。詠唱するその声は、何故か少し嬉しそうだった。



 軽い目眩の後、俺とアオイは人気のない街路に立っていた。

 俺は素早くライフルを構え、近くの路地に身を隠す。カツカツと石畳に足音を立て、アオイが俺の後ろに続いた。

 周囲に人影はない。

 まだ寝静まる時間には早い様だが、どの建物も静かだった。

 アオイがマントから手を出し、2区画先の角の建物を指差した。

「あれだ。大丈夫。奴らは油断している。一般人なら無意識に避ける結界が機能しているからな」

 アオイはもちろん、俺にも僅かながら魔素適性があるから、結界の効果はない様だが。

 それでも、油断はできない。

 俺はアオイにハンドシグナルを送る。

 尖り帽子と黒マントでまるで棒の様なシルエットになったアオイが、微かに頷いた。

 事前に立てた作戦通り、アオイが正面からの陽動。その間に俺が情報を探るべく行動を開始する。

 建物の陰に紛れ、俺は姿勢を低くして走る。

 アオイの強化術式のお陰か、自分でも驚くようなスピードが出てしまった。まるで地面の上を滑っている様だ。

 対象の建物に近付き様子を窺う。

 灯りは見えるが、内部に動きは見られない。

 俺は対象の建物の裏に回り込み、息を潜める。

 やがて正面の方から、何やら怒鳴り声や物音が聞こえて来た。アオイが仕掛けたのだ。

 俺はぎゅっとライフルを握り締めてから、近くの小窓に手を掛けた。

 アオイの強化が効きすぎなのか、力を込めると、鍵が掛かっていただろう小窓は容易く開いてしまった。

 俺はひらりと身を翻し、その小窓から魔術師の拠点である建物に侵入した。

 この建物は、外から見た感じでは三階建ての個人宅といった感じだった。アオイが一階で敵を引きつけているだろうから、俺はまずは上階を目指してみる。

「何だ! 侵入者?」

「いや、貴族さまらしいが……」

「なら味方じゃねぇか!」

 慌ただしく駆けて行く数人を、俺は物陰に隠れてやり過ごした。

 ……やはり魔術師の拠点だ。

 今の会話からしても、貴族級魔術師の関わる集団なのは間違いないだろう。

 俺は足音を忍ばせ、素早く階段を駆け上がる。

「来客など知らん! こんな夜にどこのどいつだ!」

「それが、魔術師で、それで、ファーレンクロイツ侯爵家を名乗っておりまして……」

 二階に上がる、廊下の奥から声が聞こえてきた。

 来客とは、アオイの事だろう。

 しかし、ジーク先生の家名を名乗っているのか。

「そ、そんな大物が何故ここに……」

「知るか! いや、しかし、ワシも栄えある男爵を拝命したからな。侯爵家の方がこられるのも頷ける」

 一方の尊大な喋り方の方が、上位者の様だ。

 その男が、来客を丁重に扱えと命令し、部下らしき男が走り去って行く。

 そっと様子を窺うと、大柄な髭の男がドアの向こうに引っ込むのが見えた。

 ……あそこか。

 俺は周囲に気を配りながら、素早くそのドアに取り付く。

 軽く隙間を開け、中を窺う。

 男爵だという男の姿は見えない。

 この部屋の奥にさらに部屋があるみたいだ。

 今なら1人か。

 ならば制圧できるか?

 俺は音を立てずに部屋の中に滑り込む。

 中は書斎のようだった。

 足元はふかふかの絨毯。古めかしい装丁の本が所狭しと並ぶ本棚。そしてどっしりとしたデスク。

 まるでエーレルト邸のアオイの仕事場みたいな古めかしく厳つい部屋だった。もちろんアオイの部屋に比べれば遥かに狭くて、雑然としていたが……。

 男はどこだ……。

 俺は構えたライフルを目線に合わせて動かしながら、書斎の奥に続く部屋を窺った。

 奥は寝室の様だった。

 そちらはかなり広い。

 アンティークなランプの灯りが揺れている。

 部屋の隅に立つ甲冑を見て、俺はどきりとしてしまう。

 エーレクライトか……?

 大柄な男は、こちらに背を向けてベッド脇のデスクから何かを取り出していた。

 ……マスク。

 白いマスクだ!

 そのデザインには見覚えがあった。

 軍警オーリウェル支部を襲い、ゲオルグの屋敷を襲撃した騎士団の身に付けていた物と同じだ。

 間違いない。

 この男は騎士団の構成員……!

 俺はライフル構え、突撃する。

 結んだ髪がさっと流れた。

 男がこちらに気付き、振り返った。

 だが遅い。

 一気に距離を詰めた俺は、男の真正面に銃口を突き付けた。

「大人しくしろ」

 精一杯声を低くする。

「ぐ、軍警……いや、子供、か」

 髭面の男の顔が驚愕と恐怖に歪む。

「貴様、私を誰だと心得る!」

 続いて男の顔は、憤怒に染まった。

 誰と言われても、生憎と俺には見覚えのない顔だ。

 俺が眉をひそめ微かに首を傾げると、男の顔が真っ赤に染まった。

「ぶ、無礼な!」

 男がさっと手をかざす。

「Ghhyu fraou !」

 男の手から広範囲に広がる炎が吹き出した。

 俺はとっさに後ろへ飛ぶ。

 むむ。

 アオイの術式のおかげで、跳躍力も随分と強化されている様だ。

 少し後ろに跳びすぎてしまった。

 俺は勢い余って書斎まで後退しながら、床に手を突いてバックステップの勢いを消す。

 もちろん男の術式よりも早くトリガーを引き、制圧する事は出来た。

 しかし騎士団だとわかれば、貴重な情報源だ。簡単に失っては意味がない。

「曲者め! 死ね! Du fraou bbul!」

 男が短く詠唱し、火炎弾の術式を放つ。

 2発に抑えてはいるが、室内でこんな術式を使うなんて……!

 高速で飛来する火の塊。

 いかに広い部屋でも、この近接距離での回避は難しい。

 しかし今の俺には、飛来する火炎弾が良く見えていた。

 さっとライフルを構える。

 発砲。

 弾ける銃声。

 2発。

 一撃で火炎弾の結節点を打ち抜く。

 空中で霧散する炎。

「ひっ」

 男の悲鳴が上がる。

 ……はっ!

 短く息を吐き、男の巨体に向かって俺は突撃する。

「ば、馬鹿め! こんな場所で撃ったら、ワシの手下が押し寄せて来るぞ!」

 確かに銃声は響いた。

 しかしそんな事にはならない。

 何せ下の階には、頼りになる俺の姉がいるのだから。

 俺は一瞬で男の懐に飛び込む。

 銃口を振り上げる。

「ぐうっ! slullg wgeg!」

 後退りながら男が詠唱する。

 俺の眼前に展開する不可視の防御場。

 俺はその苦し紛れの防御場に、至近距離でのフルオート射撃を加えた。

 激しく跳ね上がる銃身。

 マズルフラッシュが煌めく。

 同時に、ガラスが砕けた様な音が響いた。

 ……術式の構成が甘い!

 俺は一斉射で男の防御場を粉砕した。

「なあぁぁ!」

 野太い声は、絶望か驚愕の声か。

「はっ!」

 俺はタンっと踏み切って、男の足元から伸び上がる様に跳躍する。

 そしてその二重顎に、膝を叩き込んだ。

「がはっ!」

 男がバランスを崩して後ろへ倒れ込む。

 俺はそのまま男の胸板に足を突き、仰向けに倒れた巨体の上に着地した。

「ぐへっ!」

 カエルの様な声を上げる男。

 俺は倒れた男を踏みつけたまま、その眼前に銃口を突き出した。

「大人しくしろと言った」

 俺はなるべく眼光鋭く、男を見下ろす。

「くっ、小娘が……!」

 忌々しげに吐き捨てる巨漢の魔術師。

「こちらの質問に簡潔に答えろ、騎士団」

 俺は足に体重を掛けながら、尋問を開始した。

 ここが騎士団の拠点なのか。男自信の身分や立場は何なのか。さらに、騎士団の構成や、今後のテロ計画について、俺は矢継ぎ早に質問をぶつける。

 最初は抵抗していた男だったが、頭の横に5.56ミリ弾一発を撃ち込んでやると、素直に喋り始めた。

 尋問を続けていると、間もなく魔術師の手下を一掃したのだろう、アオイが俺のもとにやって来た。

 マントにも帽子にも乱れた所一つないアオイは、巨漢の魔術師の炎でやけ焦げた室内を見て、「派手にやったな」と無表情に呟いた。

 階下にいた男の手下は、やはりアオイが全て眠らせた様だった。

 俺はアオイに協力してもらい、男を拘束して猿ぐつわを噛ませると、寝室の床に転がしておく。

 後は地元の軍警に任せよう。

 俺とアオイは隣の書斎で資料をあさりながら、男から得た情報を共有しておく。

 男は、最近騎士団によって男爵に叙任されたという魔術師だった。

「そうして自己顕示欲の強い者に称号を与え、組織に取り込んでいるんだろう」

 アオイが不快そうに顔をしかめた。

 俺もこくりと頷いてそれに同意する。

 人は誰しも、自分を特別な存在だと思い込みたいものだ。ましてや魔術師は、他とは違い、魔術を操れるという自負がある。往々にして魔術師は、自尊心の強い者が多いのだ。市井の魔術師には、その傾向がさらに顕著だった。

 騎士団は、そんな彼らに伝統と歴史に裏打ちされた爵位をちらつかせ、手駒に仕立てているのだ。

「この男爵殿は、次の作戦に向けて待機を命じられているらしい。作戦概要は知らされていないみたいだけど……」

 つまりは隣の部屋に転がる男爵殿は、騎士団の中でもそれほど重大な地位にはないという事だ。

 しかし、収穫もあった。

「ヴィンデンラントのハインラート伯爵。それが、新任貴族たちの取りまとめ役みたいだ」

 そいつを押さえれば、さらなる情報が得られるかもしれない。

 騎士団が宣言したタイムリミットまで、間もなく24時間を切ろうとしている。

 躊躇っている暇はなかった。

「しかし、ヴィンデンラントか……」

 アオイが眉をひそめた。

「ふむ……。残念だが、直接転移は難しそうだな。私はあの街を良くしらないし、少し遠い」

 む。

 そうか……。

 俺は腕を組んで眉をひそめる。

 転移術式の使用条件には、転移先を目視しているか又は熟知していなければならないというものがある。

 目視出来る範囲で連続転移するという方法もあるだろうが、ヴィンデンラントは遠い。それではアオイの負担が大きすぎる。

 ……どうする。

 俺は周囲を見回しながらじっと考える。

 壁に掛けられたクラシックカーのカレンダーには、昨日のテロ実行日にマルがつけてあった。

 ……そうだ。

 俺はライフルを押さえながら、パタパタと寝室に駆け込む。そして、床に転がる男爵殿の前に、んしょとしゃがみ込んだ。

 後からアオイがやって来た。

 あれだけ尊大だった男爵殿は、随分と大人しくなっていた。

 俺は男爵の猿ぐつわを一旦外した。

「男爵殿。悪いけど、車を貸してもらえないか?」

「ぐぬっ……」

 顔をしかめた男の視線が、俺の体の前に吊り下げたライフルに移る。そしてさらに、俺の背後へと移った。

 俺の後ろでは、尖り帽子と黒マント姿のアオイが無表情に男を見下ろしていた。

「……そ、そこの棚にキーがある。も、持ってけ!」

 しばらくの沈黙の後、吐き捨てる様にそう言った男爵殿に、俺はにこりと微笑み掛けた。



 車の鍵を回収し、バートレットに現在の状況確認と地元の軍警への通報依頼をした俺は、アオイと一緒に地下駐車場に下りた。

 アオイに瞬く間に制圧された建物内は、シンと静まり返っていた。響くのは俺たちの足音くらいだ。

 開け放たれたシャッターから冷たい夜風が吹き込む車庫に止まっていたのは、真っ赤な車体のクラシックスポーツカーだった。

 覗き込むと、磨き上げられた車体に俺の顔が映り込む。

 あの男爵殿、なかなか良い趣味をしている様だ。

「ヴィンデンラントまで車で行こう。今出れば、明け方には到着する」

 俺はリモートキーで開錠すると、運転席のドアを開けた。

 2シートだ。

「しかしウィル」

 マントを揺らして俺の後について来たアオイが、珍しく困惑したような声を上げた。

「誰が運転するのだ? マーベリックを連れて来るのか? ならば……」

「何を言ってるんだ、アオイ。俺が運転するんだよ。さぁ、乗って」

 俺は座席の後ろにライフルを放り込み、ポスっと運転席に収まる。

 シートは一番前へと動かす。

 む。

 助手席からクッションを奪い、お尻の下に敷く。

 よし、これでいい。

 ミラーを調節し、エンジンを始動させる。

 エンジンが重く轟く唸りをあげた。お腹に響く音だ。

「アオイ?」

「あ、ああ……」

 何故か不安そうに助手席に乗り込むアオイ。尖り帽子を取り、膝の上に乗せている。

 運転はロイド刑事に出会うきっかけになった無免許運転事件のあの時以来だが、大丈夫だろう。

 ギアを入れ、アクセルを踏み込む。

 静かな夜の田舎町にエンジン音を轟かせ、真っ赤なスポーツカーは滑らかに走り始めた。

 さらにアクセルを踏み込み、ギアを上げる。

 取り敢えず俺は、標識に従ってアウトバーンを目指した。

 ヘッドライトに切り取られた視界に、石造りの町並みが高速で流れ去って行く。

 耳を澄ませば、唸るエンジン音の向こうに、微かなサイレンの音が聞こえた。バートレットが手配してくれた地元の軍警が動いているのだろうか。

「ウ、ウィル!」

 助手席のアオイが声を上げる。今まで聞いたことのない焦ったような声だった。

「だ、大丈夫なのか!」

 四肢を突っ張っているアオイ。

 俺は首を傾げながらアオイを一瞥し、ギアをトップに入れた。

 前と違い、今は俺の顔写真の付いた軍警の身分証明書を持っている。例え検問で止められても、作戦行動中という事で突破できるだろう。

「俺なら大丈夫だ。時間がない。なるべく急ぐから、アオイは今のうちに休んでおいてくれ」

 ブレーキを踏み、カーブに入る。

 ……むむ。

 少し大回りになってしまったか。

 アオイがコツンと窓に頭をぶつけてしまった様だ。

 慣れない車と久し振りの運転に少し荒い走りになってしまったが、アウトバーンに入った俺の車は、さらにスピードを上げてヴィンデンラントを目指した。

 そこで待ち受けているのは、先ほどの新米男爵殿の様なにわか騎士団とは違う。恐らくは、強力な貴族級魔術師の筈だ。

 気を引き締めて対さなければならない相手だが、重要な情報を得られる可能性も高いだろう。

 俺は、ハンドルを握る手にそっと力を込めた。



 ヴィンデンラントは、オーリウェルや首都オーヴァルには劣るものの、国内西部では有数の大都市だった。

 かつての城塞都市の面影を強く残す市の中心部とは対照的に、古い城壁の外側には高層ビル群が立ち並んでいた。現在はこちらが街の中心なのだろう。

 そんなヴィンデンラントの街の東の空が、うっすらと白くなり始めていた。

 黎明。

 もう少ししたら、今日の太陽が顔を出すだろう。

 東の空を一瞥した俺は、吹き付ける風圧に顔をしかめながら正面へと目を戻した。

 眼前には、ヴィンデンラントの中心にそびえるビル群が迫る。狙いはその端、やや背の低い茶色の外装のビルだ。

 俺は今、ガナーリアの町で得た情報に基づき、騎士団構成員のハインラート伯爵が拠点としていると思われる高層ビルへ突入を試みていた。

 ビルの直上方向からだ。

 騎士団の拠点と目される高層ビル上層部には、やはり人避けの結界が張られていた。それは、ガナーリアの町とは違い、内部への魔術干渉を妨害する程の強力なものだった。

 夜通しアウトバーンを飛ばし、やっとの事で敵拠点に辿り着いた俺たちだったが、その結界のおかげで直接転移術式で突入する事が出来なかった。

 そこで、結界の外側である空中に転移した俺とアオイは、そのまま自由落下でビルの屋上に侵入する事にしたのだ。

 高速で落下しながら、尖り帽子を押さえたアオイが俺を見て頷いた。

 今、結界を通過したのだろう。

 同時にこれで、俺たちの侵入が敵に知られた可能性がある。この結界には、そういう機能もあると事前にアオイが教えてくれた。

 アオイが術式を展開し、落下速度をコントロールし始める。

 その時、黎明の薄明かりの中、屋上の出入り口のドアが開くのが見えた。

 現れたのは、昔の軍服のような金の装飾の入ったテールコートをまとった男が2人だ。

 男たちがこちらに手をかざす。

 その手に炎が収束する。

 魔術師だ。

 そして問答無用の魔術攻撃。

 騎士団か!

 未だ降下体勢の俺は、何とかライフルを構えた。

 なかなか対応が早い……!

 2つの火球が撃ち上げられる。

 1つはアオイがひらりと身を捻って回避した。

 俺はもう1つに狙いを定め、トリガーを引いた。

 響く銃声。

 結節点を撃ち抜かれた火球が霧散する。

 その火炎の残滓を突き破り、そのまま敵拠点の屋上に降り立った俺は、着地と同時に一回転してさっとライフルを構えた。

 俺は即座にトリガーを引き、1人を撃ち倒す。

 背後でたんっとアオイが着地する音が聞こえた。

「くっ!」

 もう1人はとっさに防御場を展開している。

 俺はライフルを背中に回し、低い姿勢のまま全力で突撃、魔術師との距離を詰める。

 そして、防御場の内側に飛び込んだ。

「ひっ」

 魔術師の顔が引きつる。

 俺はその無防備な腹に、回し蹴りを叩き込んだ。

 魔術師は吹き飛び、ペントハウスの壁にぶつかって動かなくなる。

 アオイの身体強化術式が施された蹴りだ。魔術師の激突したコンクリートの壁は、見事にへこんでしまっていた。

 俺とアオイはさっと視線を交わし、そのまま素早くビル内へと突入する。

 アオイがマントをなびかせ、先行する。アオイも身体強化の術式を使用しているのか、黒マントと黒帽子がまるで滑空する様に階段を降りて行く。

 作戦はガナーリアの男爵殿宅と同じだ。アオイがまず先行して場を引っ掻き回し、俺がその隙に何か手掛かり見つけ出すのだ。

 俺たちは階段スペースから、長い廊下に出た。左側に扉しかない無機質な廊下だった。

「曲者め! ここをハインラート伯爵閣下の居館と知っての狼藉か!」

 その廊下の奥から、濁声の咆哮が上がる。

 廊下の先から現れたのは、現代的なビルとはかけ離れた華美な衣装の集団だった。

 皆屋上で遭遇した魔術師と同じ、軍服のような格好だ。そして、全員が白い仮面を装着していた。

「下賤の輩め! 隊列を組め! 殲滅してやるわっ!」

 その集団の中で一番派手な格好をした魔術師が、大声を張り上げる。

 廊下を塞ぐようにして横隊を組む仮面たち。ガナリーアの男爵殿の手下とは違う統制の取れた動きだ。

 その魔術師隊の前に、すっとアオイが進み出た。

 マントの中から差し出される細い腕。

「空、絶、転じて虚ろ、花立つ、絶佳の調」

 鈴音の声で流れる詠唱。

 その瞬間、10名の魔術師ごと空間が軋んだ。

「な、何だ!」

「ぐっ!」

「くそっ……」

「ま、魔、女……!」

 悲鳴が上がる。

 魔術師たちは、まるで見えない何かに押し潰される様に倒れていく。さらにはその周囲の壁や床にも、次々と亀裂が入り始めていた。

 しかし廊下の先からは、さらに次々と新手がやって来た。

 飛来する火炎弾や電撃。

 短い詠唱で術式を切り替えたアオイが、それを何らかの力場で握り潰す様に防いでしまう。

 只の防御場ではない。

 敵が明らかに動揺しているのが分かった。

 さらにアオイは、周囲に浮かび上がらせた青い光を弾丸の様に撃ちだした。

 アオイがちらりと俺を一瞥した。

 俺は頷くと、魔術を放ち続けるアオイの脇を通り抜ける。

 交錯する視線。

 俺はそのまま、近くのドアを蹴り破り、内部に突入した。

 ライフルを構え、素早く周囲をクリアにする。

 室内は広い部屋の中央に大きな机が置かれた会議室の様な場所だったが、ふかふかの赤い絨毯や厚いカーテン、装飾の施された大きな机や柱など、クラシカルで華美な内装だった。

 先ほどの魔術師は伯爵の居館と言っていたが、ここが単なる騎士団の拠点ではなく、ハインラート伯爵の屋敷を兼ねているなら、この作りも頷ける。

 雰囲気がエーレルト邸と良く似ていた。

 ならば、狙うのは伯爵の書斎か執務室だ。

 廊下で戦うアオイたちを避けて移動するため、次の部屋に続く扉に向かおうとした瞬間、そちらから魔術師が現れた。

 3人。

 その詠唱が始まる前に、俺はトリガーを引いた。

 狙いを素早く切り替え、3発で3人を無力化する。

 血を流し、呻く魔術師たち。

 殺してはいない。

 このまま放置すれば危ういだろうが……。

 俺は倒れた男たちを飛び越え、素早く次の部屋に移動する。

 ビリヤード台がどかんと置かれた部屋。

 遊戯室か。

 アオイの屋敷で見慣れているから、もう驚かない。

 目線にライフルを合わせて構えながら、素早く移動する。しかし物陰のチェックは怠ってはならない。

 死角を確実にクリアにし、さらに次の部屋へ。

 遊戯室の扉を開くと、短い廊下に出た。

 窓がなく、薄暗い。

 アオイが戦っている廊下とは違い、貴族屋敷の内装が施されていた。

 その先には、手すりに精緻な彫刻が施された螺旋階段が下へと延びていた。

「し、侵入者だっ!」

「上からだってよ!」

「ぐ、軍警にバレたんじゃ……」

「いや、魔術師だ。魔女だってよ!」

 螺旋階段の下から話し声が響いて来る。そして階段を上がって来る音が響く。

 4人。

 いけるか……?

 俺は手すりの陰に隠れて息をひそめる。

 やり過ごしてしまえば、アオイの背後を突かれてしまいかねない。

 ここで押さえなければ……。

 1人が通過する。

 2人目……!

 俺はさっと身を踊らせた。

「なっ!」

 3番目に階段を上がって来た男の腹を殴りつけ、吹き飛ばす。

「ぐはっ!」

 4人目を巻き込みながら、3番目の男が階段を転がり落ちていく。

「何だ……」

 素早く反転した俺は、振り返った2人目の懐に入り、肘を叩き込む。

 そのまま2人目を突き飛ばし、先頭の魔術師の背中にぶつけた。

「ぐへっ」

 アオイに強化されているおかげで、肘打ちを受けた魔術師はあっさりと昏倒する。しかし巻き込まれて倒れただけの先頭の魔術師は、まだ呻き声を上げていた。

 俺はさっとその傍に移動すると、その頭にライフルの銃口を押し当てた。

 魔術師が短く悲鳴を上げた。

「ハインラート伯爵はどこにいる」

 精一杯低い声で尋ねる。

「お、女か……。軍警か? 最早貴様等に我々を止める事など出来……」

 俺はライフルを構えたまま、腰からナイフを引き抜いた。その鋭い刃を見せつける様に、俺は男の眼前にナイフを突き立てた。

 短く悲鳴を上げた男が、伯爵の執務室を教えてくれる。

 俺は男を拘束して床に転がすと、二階下にあるという執務室を目指した。

 その後も突発的に遭遇したり、避けては通れなかった敵魔術師を昏倒させて無力化する。

 アオイが派手にやっている間は、なるべく静かに行動したかった。

 そして俺は、何とか執務室があると思われる場所の手前の部屋に辿り着いた。しかしそこには、6名ほどの魔術師が集まっていた。

「侵入者は魔女だけではないぞ!」

「軍警かわからんが銃使いがいる! 奴らは奇襲してくる。注意せよ」

 突入から時間が経っている。

 流石に俺の事もばれてしまっている様だ。

 大人しくしているのは、ここまでか。

 さすがに、6人の中を見つからずに通り抜ける事は不可能だ。

 ならば……。

 俺は壁に背を預け、短く息を吐く。

 残弾が僅かになった弾倉を引き抜き、ポーチに戻す。そして新しい弾倉を取り出すと、ガチャリとライフルに差し込んだ。

 次に俺は、腰のポーチからスタングレネードを取り出した。

 安全ピンを外すと、僅かに開いたドアから無造作に部屋の中へと放り込んだ。

 心の中で静かにカウントする。

 1、2、3……。

 ……今!

 扉の向こうで広がる大音響。

 間髪おかず、俺は室内に突入した。

 スタングレネードの火薬臭が鼻を突く。

 狙う。

 トリガーを引く。

 銃声が響き、マズルフラッシュが煌めく。

 大音響と閃光に眩惑された魔術師たちを、次々に無力化する。

 しかし。

「お、おのれ、下劣な!」

 最後の1人が苦し紛れに電撃を放った。

 迸る雷が床を焦がす。

 なかなか立ち直りが早いが……!

 俺はとっさに右に飛んで回避。

 膝立ちの姿勢から連射する。

 最後の魔術師が、派手に吹き飛んだ。

 雷撃が空気を焦がし、濃い硝煙の臭いが漂って来る。

 俺はゆっくり立ち上がると、部屋のクリアを確認した。

 はっ、はっ、はっ……。

 何とか息を整える。

 ……よし。次だ。

 俺は再びライフルを構え直し、ハインラート伯爵の執務室の扉に手を掛けた。

 片手でライフルを保持したまま、もう片手で豪奢なドアノブを回す。

 その時ふと、腕のデジタル時計が目に入る。

 もう突入から30分以上経過していた。

 日の出の時間は完全に過ぎてしまっていた。

 騎士団が次に行動を起こすタイムリミットまで、後僅かだ。

 俺たちに残された時間は、もう殆どない。

 俺はくっと歯を食いしばり、扉を押し開いた。


 読んでいただき、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ