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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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勝てなくても負けない

「「じゃーじゃん!! エイルとリルレットの何故何故LROコーナー!!」」

 

 わーわー!! (パチパチパチ)


「帰って来ました何故何故LROコーナー! 皆さんの期待が大きかったおかげでしょうかね?」

「ははは、何を言ってるんだよリルレット。前回休んだのはただの作者の都合だよ」

「違うよエイル。前回のことだけじゃない、その前もだよ! 乗っ取られたからだよ!」

「ああ、あったっけそう言う事も?」

「ヤバい! エイルの記憶がカーテナの攻撃で吹っ飛んでる!?」

「あははは、リルレット人って忘れる事でこの世知辛い世の中を生きていけてるんだよ」

「エイルがエイルが、中年のサラリーマンみたいな事を言ってるよ!! 首を切られるかどうかの瀬戸際でビール片手に煽ってる中年おやじに見えるよ!!」

「ははは、リルレットは今日も可愛いね」

「壊れた~! エイルがサラッと女子を褒めるなんて天変地異の始まりだ!!」

「あははは、はははは。あはははははははははははははは、はははははははははははは」

「エイル戻ってきて!!」


 ビシバシドゲシ!!


「戻って! 目を覚ましてよエイル!!」


 ズガーーーン!! ドガン!! チュドーーーン!!


(ピーーーーーーー。しばらくお待ちください)



「さて、きょうも張り切って行ってみよう!! エイルとリルレットの何故何故LROコーナー!!」


 わーわーわーわー(パチパチパチ)


(戻った?)

「どうしたのリルレット? ほら、今日も張り切って行こうよ!」

「エイル……大丈夫?」

「はは、なんだか体中痛いけど、頭はすっきり爽快だよ!!」

(ほっ)

「じゃあ今日はちょっとしたLROの豆知識をお教えしとこうかリルレット?」

「そうね、ようやくタイトルコールみたいな流れね。安心安心、ぜひお願い」

「では早速いこう!」

「なんだかテンション高い部分だけが治ってないような……まっいっか」


「さて皆さん、LROは本編でも良くウインドウを呼び出してますよね」

「ですね」

「だけど最近僕はある事に気付いたのです!!」

「ええ!? どういう事エイル?」

「この前とあるダンジョンに行ったじゃないか」

「ええそうね。あれは試練だったわね。途中回復魔法を貰わなかったら危なかったわね」

「そう! まさにその時だよリルレット!!」

「え? 何が? MMORPGではよくあることでしょ? 死にそうな人に、回復魔法をして上げて颯爽と去っていく事って」

「確かにそうだね。そうなんだけど……リルレットあの時、魔法だけじゃなく回復薬とかもらってたじゃん」

「そうだね。良い人だったね」

「その時、その人ウインドウを開いたんだ!」


 ドードン!!


「そんな効果音を付ける事じゃないよ。普通でしょ」

「いいや違ったんだよ。普通は中指と人差し指を伸ばして、下におろしてウインドウを呼び出して、後はタッチとスクロールするじゃん!」

「うん」

「だけどその人は一発でアイテム欄を出してました!!」

「へぇ~~~どうやって?」

「反応薄い!? 反応薄いよリルレット!!」


 ガガーーン!!


「なんだかその効果音うざったいな」

「それこそまさに――」


 ガガーン!!


「――だよ!!」

「ウザ」

「ウザがらないで! リルレットにウザがられたら死にたくなる!!」

「そこまでなんだ……で、どうやってたの?」

「ええ~とね。それはなんだかこう――ピッピって」


 空中に文字を書くように腕を動かすエイル。


「そしてら直ぐにアイテム欄が出てきたんだ!」

「へぇー。短縮機能?」

「うん、まさにそれだよ。調べてみたら、LROの機能にちゃんとあったよ。それぞれの機能を空中に描く文字に割り当てる事が出来るんだって! 凄くない?」

「確かに便利そうだね。戦闘で大変な時に、わざわざウインドウ表示・選択・スクロールってするのは厄介だもん」

「うんうん、だけどこの機能。実はログアウトだけは割り当てられないみたい。変な誤作動防ぐ為かな? まあログアウトを使う場面って切羽詰ってないから問題ないね!」

「うん、なんだか今回は一番それっぽい事した感じね。この調子でいきましょうエイル! これなら私達の未来も明るいかも!!」

「うん! 僕達の明るい未来の為にも頑張ろうリルレット!!」


(あれ? なんだかノウイの未来は私のとちょっと違うような……てか、横から変なプレッシャーが)


「リ……リルレッ……」

「はい! じゃあ今回はここまでです! どうかログアウトを登録させてくださーーーーい!!」

「リルレットオオオオオオオ!!」


 キャアアアアキャアアアワアアアアワアアア―――――――――――――次回へ続く。


 青く茂る森の中に突如現れる【ノンセルス1】NPCの街とか言うからどんな物かと思ってたら、なんだか結構大きいな。

 遺跡っぽいって言うか……まんまアンコールワットのような。てか同じNPCの街なのに、【ノンセルス2】とは全然見た目違う。

 ノンセエルス2は普通っぽい街だったのに、それにこんな規模も大きく無かった。やっぱり1だからなのか? そうなのか? 代わり映えしなさそうなNPCの街でもこんなに違うものなんだな。

 そう思ってると、バトルシップは真っ直ぐ街に向かわずに別方向に旋回し出す。


「おい、何やってんだよ?」

「このまま【ノンセルス1】にこれを付けるのは不味いだろう。それにおまえ達は面倒起こしにいくんだろ?」


 ふむ……そう言えばそうだな。真っ直ぐに行くのは不味いか。なんだか豪華そうな船がいくつか見えるしな。

 氷ってるのと、後三つは国旗を掲げた飛空挺が川にある。国旗とかそこまで見てなかったのが正直な訳だけど、まあ自分が行った国位はわかる。

 取りあえずあの三つの飛空挺はそれぞれ人にエルフにモブリのだな。あの氷の船は、いかにもな感じでウンディーネだろう。でもそれじゃあスレイプルのは? そう思ってると、鍛冶屋が教えてくれた。


「ノンセルスの側に山があるだろう。あれだな」

「あれ? あれ動くのかよ?」


 信じられないんですけど。テキトーな事言ってんなよ。すると指揮官席に座ってる僧兵モブリがこう言った。


「あれってスレイプルの移動要塞だぞ。動くに決まってるだろ」

「お前――なんだか随分偉そうだな」


 実はこいつは先日一緒に苦労を共にした僧兵モブリなのだ。なんだか当たり前みたいにそこに座ってたけど、どうやら正式にバトルシップの方の艦長になったみたい。


「はっ――期待外れも良いところのお前に偉そうにして何が悪い。あれだけサン・ジェルクを巻き込んでおいて、結果がアレかよ」

「ぐっ……」


 誰もが気を使ってくれてる事をズバズバと……だけど最後に付け足すようにこう言った。


「でも、まだ終わりじゃないんだよな?」

「当然。でも……それがお前達……この世界にとって本当に良いことかは微妙だな」


 だからこそ、バトルシップは隠した方が良い――って言うか、これから問題を起こそうとしてる僕たちを乗せてきたのは知られない方がいいか。

 それはきっとノーヴィスの責任になりかねない。そもそも邪神を復活させた事で、教皇とかの立場は危ういだろうしね。

 まあ実際、現状を僕はあまり理解してないけどね。それぞれの国は一体どういう反応してるんだろうな? 実際ノエインがまだ教皇やれてる事にビックリでもあるよ。

 あの選択は間違いだった――そう言って元老院共がしゃしゃり出てきてもなんらおかしくない筈だろう。てか、奴らは出てきたはずだ。それは確実だろう。

 それなのにどうして……そう思ってると僧兵モブリが僕のさっきの言葉にこう返して来る。


「やる気がまだあるんだろう? それなら別に良いさ。俺たちサン・ジェルクは自分達が信じた相手が腑抜けになって終わって欲しくない。

 俺たちはお前に乗せられたんだからな」


 乗せたのは厳密にはノエインだろう。僕は裏でこそこそやってたに過ぎないよ。てか、勝手にサン・ジェルクの総意みたいにこいつ言ってるけど本当かよ。

 まあ協力してくれるのはありがたいけどさ。それが出来るのもノエインがまだ教皇と言う地位にあるおかげだよな。サン・ジェルクの人々はまだノエインを信じてるって事だろう。


「なあ、元老院の奴らは何もしなかったのか? 考えられないんだけど」

「ああ、それは勿論あった。世界樹の異変は彼らも感知してたからな。俺達が敗戦して戻って来た時は、さぞ嬉しそうに吠えてたな」


 やっぱり。だと思ったよ。あいつ等がそうしない訳がない。ここぞとばかりに反撃に出たはずだ。


「でも教皇はまだノエインのままなんだよな? あいつ等どうやって引き下がったんだ?」

「それは簡単だな。あいつ等は単に邪神にビビった。それだけだ。俺達と共に、乗ってきたからな……」


 ああ、なるほど。そういえばそういう事言ってたな。まさか邪神が乗ってるなんて、流石の元老院も思ってなかったんだろう。それで調子づいてノエインを叩こうとしたら、乗り合わせてた邪神やローレに逆にフルボッコにされたと、そういう事か?


「まあ大体そういう所だな」


 納得!! 超納得出来る。


「まあだが、何をやったかは俺達にはわからないな。何か脅してたらしいが……少しだけ滞在して、飛空挺持ってどこかに行ったからな」

「勝手に奪って行ったのかよ。流石はローレだな」


 幾ら同じ国で同じ種族だからって、仲悪かった間柄だろ。そんなことしたらますます――ってそんなのあいつは気にしないか。そもそもノエインなら、ローレに一言言われたら簡単に貸し出しそうでもある。

 てか、ローレ達が元老院を押さえつけたのは、自分達に都合が良いのがノエインだから? あり得そうだな。でもそれじゃあノエインの立場はあんまり変わってない様な……まあ心の問題か。

 ローレになら、本望かも知れない……あいつはさ。まあ流石に今のノエインはそこまで自己に走ったりしないだろうけど・するとここで僧兵がこんな事を言う。


「一つ気になるんだが……お前が言ってるローレってどっちだ? モブリの姿して豪華な着物着てた方か? それとも金髪のお前達と同じ姿してた方か?」


 そうか、こいつらはローレの本当の姿をまだ知らないのね。でもどうしてそんな事を? っても思う。どこでこいつは疑問に思ったのだろうか?


「いや、普通に豪華な着物を着てる方が金髪の子の方をローレ様と言ってたのを聞いたぞ。だがそれっておかしいとも思った。

 なぜなら世間でローレ様は普通にモブリの姿をしてると知られてる。まあ布越しにだが。それにやけに金髪の方が偉そうだった」


 あのバカ……そもそもあいつ等って人前で隠す気あるのかっては前々から思ってた。ローレは自分の事を問われた時、どう説明する気なんだろうな。

 今まではそんな場面無かっただけかも知れないか。今回が特殊過ぎて、一緒に本殿まで降りてきてたってだけかも。

 まあ取りあえずこう返しといてやろう。


「その疑問はきっと今日あるらしい演説か何かでわかるんじゃないか? それまで楽しみにしてろ」

「なんだそれ? 今言えよ」

「それじゃあ楽しみが一つ減ることになっちゃうじゃないか」


 そんなの損だろ。僕はお前の為にあえて言わないのだ。でもこの言い方が暗に答えを示してる様な気もするけどね。


 

 そうこうしてる内に、バトルシップはノンセルスから少し離れた森の中に着陸する。木々が比較的少なくて、着陸出来そうな場所を見つけたんだ。

 バトルシップは基本、どこででも離着陸出来るのが素晴らしいよな。なんたって助走なしで直上に浮上出来るからね。勿論下に降りる事も可能。船の形してる飛空挺とは大違い。向こうは基本水にしか着水出来ないしな。

 まあリア・レーゼでは本殿の外周に付けてたけど……あれは一体どうやってたんだろう? いや、飛空挺もその場に止まる位は出来てたし、一時的にああやって船員を下ろしたってだけかも。

 うんうん、止まった飛空挺も中の僧兵が降りたら、離れてた感じだったかも知れない。よく覚えてないけど。


「じゃあ行こう。既に会談は始まってるらしいし、急いだ方が良いかも知れない」


 テッケンさんのそんな言葉にみんなが頷く。


「お気をつけて。教皇様方を頼みます!」

「出来る限りのことをやるよ」


 なんだか僧兵は僕に対する態度と、テッケンさんに対する態度がかなり違うぞ。僕の方が一緒に大きな壁をくぐり抜けた中の筈なのに、評価が下がりすぎじゃね? 

 まあテッケンさんは、同じモブリってこともあるんだろうけどな……しょうがない、その評価は自分の行動でしか上げる事は出来ないだろうし、頑張るかな。

 やった後で、祝福されるかはやっぱり微妙だけど……


「んじゃ、行ってくる。お前たちはどうするんだ?」


 ここまで送ってくれて既に十分なんだけど、何か予定があるのだろうか?


「取りあえずここで動向を見守ってるさ。そしてやばくなったら、これを使え」


 そう言って渡されたのは赤いお札だ。なんだか初めて見るタイプだな。


「それは緊急信号用だ。破ればこちらに信号が届く。そしたら向かいに行ってやる」


 なるほど非常用ね。でもそれは……僕は艦長席に座る僧兵を見つめてこう言うよ。


「そっか、ありがたい。でも使わないかもな。だって言ったろ? 僕たちがこれからやろうとしてることは、もしかしたら五種族の代表の総意とは異なるかも知れない。そうなったら、僕たちはきっと非難されるだろう。

 そしてそんな僕達をノーヴィスしか所有してないバトルシップが助けたらどうなる? 今し方手を結んでた筈の五種族の中で責められるのはノエインだ。

 このバトルシップが大衆の面前で出てきたら、知らぬ存ぜぬなんて通じない」

「それは……確かにそうだが……」


 僕の言葉に顔をしかめる僧兵。僕は一つ息を吐いて、顔を若干柔らかくして更に告げる。


「十分だよ。ここまでやってくれれば十分だ。後は自分たちで……これはさ、僕達の世界を無視したわがままだからな。

 ここまでで良い」

「だけど問題起こしたら、それこそ五種族に追われる事になるんだろう? どうやってこんなへんぴな場所から逃げる? 数を出されたら、不利だぞ」


 確かにそれはごもっともだな。問題は行動を起こしたその後。捕まったら元も子もない。バトルシップがあれば、どんな追撃だって余裕でかわせるだろう。

 だけどこれ以上、アテにはできない。それは絶対だ。甘えちゃいけない。これは僕達のわがままなんだから。


「その時は、他の船を奪ってでも脱出するさ。それくらいの覚悟はある」

「それじゃあ本当に指名手配されるぞ」


 呆れた様にそう言ってくれる僧兵。だけど、仕方ないだろ。


「しょうがないさ。それにその前の行動できっと指名手配はされるだろ。五種族の代表達がどっちを取るか……は知らないけど、邪神とガチでやり合う気はないと思うんだ」

「じゃあ、この世界は邪神に支配されるって事か? それを良しとしない奴らは立ち上がるだろ」


 う~ん、ここはちょっと憶測でしかないなんだよな。ローレの奴が言ってた事を考えると……


「いや、邪神に支配されるって訳じゃないのかも。これはあくまでもローレの言葉だけど……あいつはこの世界を新しいステージに進めさせたいって言ってたし、必ずしも邪神が世界を闇に落としたい訳じゃないって感じだった。

 邪神には目的が確かにある。その目的と、ローレの思惑が同じ方向にあるから、あいつ等は互いに協力関係を結んでる。それなら、邪神を受け入れるって選択は必ずしも、不幸だけがあるとは限らないんだ」


 だからこそ、五種族の代表を手玉に取れる――そうローレは考えてると思える。下手にあの化け物と戦って破滅を招くか、それともある程度のリスクを犯して、その口車に乗ってみるか……国という大きな物を背負ってる奴らは一体どちらを選択するのかって事。


「う~ん」


 なんだか僧兵は考え込んでるな。難しかったか? 取りあえず、僕が言いたいのはここまでありがとうって事。そしてもう十分だって事だ。


「ここまででお前達は良い。大切な人たちが帰る場所に居るだろう。犯罪者の汚名など、持たせられないからな。その役目はふがいない俺が背負う。

 主に刃向かう、出来損ないの俺がな」

「リルフィン様」


 どこに行ってたのかと思えば、いつの間にかこの操縦室の扉部分に奴は居た。どこから聞いてたんだか、おいしいところ持ってく奴だ。全く、なんか自由になってちゃっかりしだしたな。


「心配するな。教皇猊下に承ったのは送るまで。お前達が気にすることではない」

「それはそうなんですけど……はぁ、ではせめて、シスカ様の加護を願ってます」

「ああ」


 僕達はそんな言葉を受けてバトルシップを後にする。降り立つのは森の中。そこかしこからギャーギャーと動物の声が聞こえるうるさい場所だ。でも逆に普通の森らしいとも言えるな。

 強力なモンスターとかが居ると、やけに静かになったりするもんな。変な異変が起きてたりしてもそうなる。そう言うのは困るもんな。


「だけど……やけにうるさくないっすか?」


 確かに。ちょっとうるさすぎる気はする。ギャーギャーウゴーウゴーガーガーとそこかしこから叫びが上がってる。なんなんだ一体? まさか邪神の存在を感じて動物達も興奮してるとか? それか世界樹の枯れた事が原因か? 実際この実りある大地って世界樹の力の恩恵だった筈なんだよな。世界樹が枯れた今……世界が今後どうなっていくのか……誰もが不安な所だ。誰もが……というか、ここに生きる全生物がか。


「取りあえずノンセルスを目指すぞ」


 そう言って進み出すリルフィン。だけどそこでシルクちゃんが待ったを掛ける。


「待ってください。ここは一応補助魔法を掛けときましょう。何が起きるかわかりませんからね。それに暗黒大陸のモンスターが迷い込んでるかも知れません。

 邪神が居るからって迷いモンスターみたいなのは居るんです。実際その報告は上がってます」


 なるほど。確かにこの森にはモンスターが居るだろうし、暗黒大陸のモンスターがまだ大々的に動き出してないからって、一部はこちらに来てるんだよな。それにノンセルスは暗黒大陸に比較的に近い。

 もしかしたら、そっちのモンスターに鉢合う可能性は十分にあるか。なんだか暗黒大陸に飛ばされた事が、随分前の様な気がするな。

 行ったのはそんな感じなんだけど、あそこで戦ったモンスターの強さは鮮明に覚えてる。あの時はマジで死ぬかと思ったよ。

 いや、あの時はまさかあんな普通に外を徘徊してるモンスターにやられるのかって思った物だ。呆気なさ過ぎるって言うか……邪神テトラや、シクラにやられるならまだ華やかにちれそうだけど、そこら変のモンスターにやられるなんて、ただ一回死んだだけ……そんなとらえ方で終わられそう。それは流石にイヤだったんだよな。


「そんなもの――」

「お前な、暗黒大陸のモンスター舐めるなよ! 頼むシルクちゃん!」


 僕はシルクちゃんにお願いする。元気に頷いてくれる彼女は早速事前に用意してたストック魔法を発動。いつもは長い詠唱を必要とするのに、今回は一瞬だった。

 やっぱ便利だな。ストック魔法は。


「――全くなにをビビってるのか。そんな奴らにビビってたら、邪神を相手になんて出来ないぞ」

「ふん、準備は大切なんだよ。路傍の石に躓くことだってある。でも今はそんな事、絶対にあっちゃいけないからこそ、万全を尽くすんだ。

 お前だって召還獣なんだから、暗黒大陸のモンスターの強さ位わかってるだろう?」

「確かに知ってる。だが今の俺達は暗黒大陸のモンスターの一体やニ体に出くわして遅れを取るメンツか? 違うだろう。過信は危険だが、自信を無くしては立ち向かえなくなるぞ」


 そんなの分かってるっての。確かにあの時と今は違う。あの時はセラともう一人は初心者だったしな。このメンツならあの時のモンスターになら負けることはきっとない。それは断言できる。


「お前は二度あの邪神に負けた」


 むっ……いきなりなにを言い出すんだこいつ? そう思って聞いてるとこいつとんでもない事を言いやがった。降り立った森の中……少し生暖かい風が吹き抜けて来る場所で、その言葉は僕へと響く。


「そして今回の作戦。正直、臆病風に吹かれてるよな。お前は本当に勝てると思ってるのか? お前は今から既に、勝てない事を前提に戦おうとしてる」


 面白い事を言いやがる。


「僕は確かに邪神に勝とうなんてしてない。そんな必要ないからだ。僕達は僕達の勝利を目指す。そう決めた」

「それが臆病だと言ってる。そんなんで本当に奴に立ち向かえるのか? 次は本気で来るかも知れないぞ。勝てないなんて、心で決めてる奴に邪神は遅れを取るような奴なのか?」


 僕は拳を強く握る。自分が間違ってるなんか思わない。だけどリルフィンの言うことも分からない訳じゃない。


「お前達の勝利は分かる。大きな物に囚われてたという判断も、あながち間違ってはいないだろう。だが、勝てないから……など使うな。

 そんな気持ちは戦場に持っていく物じゃない」


 僕達は激しい視線をぶつけ合う。好き勝手に……本当に好き勝手に言ってくれるな。だが……まあそうかも知れないな。

 勝てないは……滑稽か。勝てない奴に勝たなきゃいけないのに、気持ちが最初から負けてるなよって言いたいって事だろ。

 わーったよ。じゃあなんて言おうか。僕は空を仰ぐ。青い空がどこまでも続いてた。大きく息を吸って――



「僕達はもう負けない。負け続けない為に、足掻きに行くんだ」



 まっすぐにリルフィンを見つめてやる。だけどなんだか呆れた様なため息を一つ吐かれた。なぬ!? ダメだったか?


「全く、勝つとも言えなくなってないか? まあ勝てないなんて諦めよりは良いのかもな。お前達もそれで良いのか?」


 リルフィンは周りのみんなに視線を移す。


「私は勿論です。私は今度こそ、みんなを守って見せます」

「僕も負けない。勝てなくても負け続けても、それでも諦めない男になりたいからね。僕達は挑む事が何度だって出来る。だからこそ、諦めちゃいけないと思うんだ。それこそスオウ君以上に」

「私はそうね……ローレが気に入らないから」


 おい、セラの言葉超軽いぞ。シルクちゃんと、テッケンさんの良い言葉が台無しじゃないか。もっと何かあるだろ。

 そんな空気を察したのか、セラはこう付け足した。


「後はそうね、このままアイツの思い通りは許せない。癪に障る。邪神なんてこの際どうでも良いわ。アイツの思惑のままに進みたくない」


 セラはなんだか目的をすげ替えてるな。僕達の行動は基本クリエの願いが基準だからな。メインは邪神に関わるとおもう。

 まあそれはローレの妨害につながる事は間違いないと思うけどね。


「流石っすセラ様! 自分は一生ついていくっす! でも、それだけじゃないっすよね。セラ様は、クリエの事、そしてもう一人の事……救いたいって思ってるっす。自分は分かってるっす!」

「バッ!? なに勝手な事を言ってるのよ!」


 ノウイの言葉に顔を赤くするセラ。はは、そうだったのか? 結構気にしてくれてたんだ。そして最後に鍛冶屋が紡ぐ。


「俺も概ね了承してる。俺たちの目的は最初からそうだった。勝てなくて負けないのなら、打たれ続けろ。そしたら必ず強くなる。

 俺たちが作る武器のようにな。きっとそこには何かが生まれると信じるさ」


 おお…………なんだか鍛冶屋が良いことを言ってくれた気がする。


「揃いも揃って影響されてるな。いや……それは俺もか」


 小声で何か言ったみたいなリルフィン。どうしたんだ? そう思ってると、奴は背中を向けて歩き出す。


「行くぞ。目的地はすぐそこだ」

「おう」


 どうやら納得してくれた様だな。その背中を追って僕達も歩き出す。緊張してくるな。手汗が既に凄いことに……リルフィンの奴がここであんな質問してくるから、妙に緊張しちゃったじゃないか。

 だけど……ある意味良い緊張感なのかも。勝てない気持ちを誤魔化したまま挑むよりは、勝てなくても負けない勝利の為に、僕達は進む。

 森を進んで見えてくる……ノンセルス1と言う、新たな戦いの場が。

 第四百八話です。

 いきなりですけど後二日ですね。いや、これは十五日に上がるから、後一日です。『何が』と言うと、察しの良い人はおわかりかも知れないですけどNEWIPADです。

 実は発表日に買って支払いも終わってるから楽しみなんですよね。そして今はこの文章もポメラに頑張って貰ってるけど、替わる事が出来るか期待してます。自分のは初期のポメラだからいかんせん変換が馬鹿すぎて……それにこれ→「…」もポメラじゃ「・・・」ですからね。

 PCに移してから返還してるんですけど、面倒!! しかも二人が一発で返還されないし、どこまでだよ!? って思います。DM100にするかも迷ったけど、出来る事が多そうなNEWIPADにしました。

 キーボードも買いましたよ! これで文章書くのに死角はない! かな? 後は絵も描きたいですしね。前にもちょっと言ってたけど、面倒で止めてるから、出来れば嬉しいです。ペンも既に買ってます!!

 PCの代わりは出来ないって言われてるけど、自分はPCでしか出来ない事をやったことないので、きっとIPADで十分です。期待してます!!

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