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命改変プログラム  作者: 上松
第一章 眠り姫
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空の戦い

 僕は動力を元に戻す為にノウイへとメールを送った。それによって動いてくれてるノウイは、動力炉で外されたコードを元に戻す作業をしてくれる。だけどその間にもバトルシップからの攻撃は続く訳で、セラにシルクちゃん鍛冶屋の頑張りで何とか耐える。

 そんな中、コードの再接続の報告が。溢れだす動力炉の光が、この船にもう一度命を吹き込んだ。

「あった! あったっすよ! 無造作に引き抜かれたみたいな大きなコードがあるっす!」


 通信用の札から聞こえるそんなノウイの声。メールも使えた訳だけど、艦長が持ち運びようのお札もあると教えてくれた。

 飛空挺内なら、それで自由に通信出来るらしい。監視室やここにあるような大がかりなのは、基本飛空挺外との通信用との事。

 中なら結構簡単に通信が出来るんだってさ。まあそんな訳で、ノウイには監視室でその簡易通信用お札共々動力炉に向かって貰った訳だよ。そして今現在、そのお札から連絡が入ったと言うわけだ。


「よし、きっとそれだよ。急いで差し戻してくれノウイ! それが元通りになれば、今の状態でも落ちることは無いらしいからさ! 頼む!」

「了解っすよ!」


 そう言ってお札越しに「ふんぬっ!」とか僅かに聞こえてくる。僕達はヤキモキしながらノウイの報告を待つしかない。そんな中、再び聖典の一機が炎に包まれて落ちていく。そして甲高く響いシルクちゃんの叫び。同時に大きく飛空挺事態が揺れた。

 どうやら久々に攻撃が当たった様だ。後ろの方で黒い煙が上がってる。操舵室に響く警報の音が、既に何種類にも膨れていて、どれがピーピーなってるのかわからない程になってた。

 シルクちゃんは無事なのか? それにノウイは? こんな簡易な通信用のお札があるとわかってれば、全員にそれぞれ持たせてたのに。

 もどかしくて仕方ないよ。一応シルクちゃんや鍛冶屋は見える所に居るからまだ良いけど、やっぱり声を届けたい時ってのがある。姿が見えないセラやテッケンさんは、現状の報告とか無事かどうかとか、声でしか繋がれない事もある。

 ノウイが今の仕事を終えたら、二人にもお札を持たせる様に言おうと思う。特にセラの事は心配だしな。あれだけの聖典の使用……かなり頭痛を併発してるだろう。だからこそ、テッケンさんにはセラの元に残って貰ったんだしな。

 本当なら二人でやった方が早いのかも知れないけど、無茶やってるセラを一人には出来ないだろ。アイツも暴走するときはとことん行くから、誰かが見ててくれなきゃダメなんだ。

 それにはやっぱり手下のノウイより、対等な立場のテッケンさんが好都合。それにテッケンさんモブリだしね。あの体ってあんまり肉体労働には向いてない気がする。届かない所とか多そうだし。


「くっ……私の船をこんなにも容赦なくボロボロにしてくれて……間に合うのか?」


 艦長が攻撃を受けた所を心配そうに見つめつつそう言う。僕は取り合えず、お札越しにノウイへと呼びかけて見る事に。


「おい、ノウイ。どうだそっちは?」

「後一個っす! だけどさっきの爆発のせいで、繋がってたコードの何本かから、青いキラキラしたものが噴出してるっすよ!?」


 おいおい、なんだかそっちはそっちで大変そうだな。てかそれってやばくない? 状況悪化してるだろどう考えても。


「不味いな。取り合えず、コードが外れて無いのなら、締め直すだけで良いはずだ。少し時間が嵩むかも知れないが、仕方ない。そう伝えてくれ!」

「聞こえたかノウイ? 取り合えず締め直してくれって事だ。頼む! お前の頑張り次第でこのまま地面と激突するか、空を浮いてられるかが掛かってる!」

「わかってるっすよ! 自分もここでは逃げないっすよ!」


 気合い十分のノウイの声。少しでもみんなをフォローする事は僕達には出来ないんだろうか? 舵を握ってメーターとにらめっこしてるだけじゃ、なんだかいたたまれないんだよな。体が疼いて仕方ないって言うか……てか、艦長が協力してくれてるのなら、舵を託しても良いんでは?


「私は協力してるわけじゃない。あくまでも君達に脅されてる立場だよ。それにそこまで私を信用出来るのか?」

「それは……」


 そう言われるとな……ちょっと舵を艦長に戻すのも確かに不安があるか。それにバトルシップからの通信が入ってきた時に、僕らの誰も出ないのは不味いか。

 でもそれは簡易通信のお札でもどうにか出来そうな気もしないでもない。だけどやっぱり舵は僕が握ってた方がいいか。みんなの命をそのまま託せるまで信用ないし、この状況で眠ってる二人から目を離すのはどうかとも思う。

 もしも万が一……最悪な事に成らないように頑張ってる訳だけど、万が一にも墜落なんかしたときに、誰もクリエ達の側に居ないと守ってやれなくなる。

 それはどう考えたって不味いもんな。僕には今、この船を目的地まで飛ばす役目と、眠ってる二人を見守る役目が課せられてるんだ。

 下手に飛び出す事も出来ないか。その時、自分達の居る操舵室に向かって迫るミサイルが見えた。それも三つも向かって来てる。


「なっ!?」


 聖典の数が減って、シルクちゃんが吹き飛ばされた間に、鍛冶屋だけじゃ対処出来ない所をすり抜けてきたのか!? やばい……急いで舵を回すけど、全く持って動きが緩慢。避けれるとは到底思えない。

 僕は腰にあるセラ・シルフィングへと手を伸ばす。こうなったらイクシードで打ち落とすしかない。そう思ったからだ。

 だけどその時、横や上から追いついてきた聖典が直前でそのミサイルを打ち落としてくれた。だけどまさに直前だったから、前の衝撃でヒビが入ってた操舵室のガラスが砕ける。雨みたいに降り注ぐガラス。そして一気に爆発の黒煙が操舵室へと侵入して、風と共に流れていく。


「ゴホゴホ! 息も視界もヤバいな」


 聖典はグッジョブだったけど、これまでの衝撃で弱ってた操舵室のガラス破壊は予想外。なんだか体が少しズキズキするような……視界が晴れて体をみると、所々の皮膚が切れてる。

 まあこの位、問題ないな。舵を放さなかった僕もよくやったよ。


「も……もうダメかと思った」

「この犯罪者! さっさと投降しやがれ! でないと、俺たちまで死ぬじゃないか!」


 縛られた僧兵がなんだかうるさいな。まあ今回一番、死って奴に直面した場面ではあったよ。僕も心臓バクバクしてる。

 だけどまだそれを言うか。コイツを人質にして脅せば少しは攻撃が止まるかな? ちょっと考えてみて、そして僕は首を振る。


「なんだその残念そうな顔は!」

「お前は何にも役に立たないなって思って……」

「んな!? 犯罪者の役になんてたてるか!」


 立派な志だな。だけどこのままじゃ僕たちと共々落とされる事に成るんだぞ。実際一般人な艦長とかを巻き込んでる時点で、僧兵程度の犠牲は仕方ないとか言う奴らだよ。

 コイツを甲板に出して脅したって意味はないと思う。

 僕たちを助けた聖典は直ぐにバトルシップの方へ戻る。あれだけの数を操ってるのに、本当にちゃんとそれぞれ見えてるんだなってちょっと感心した。でも流石に限界は近いかも知れない。

 シルクちゃんも鍛冶屋も結構ボロボロだ。幾ら魔法は打ち放題だからって、精神力とか使うからね。そして鍛冶屋は鉱石操作で攻撃を防いでくれてる訳だけど、実際アイテムは有限だ。いつまでも鉱石の壁を作り続けれる訳じゃないだろう。

 スピードアップは命題だな。でないと落ちるし、どう考えてもリア・レーゼまでみんなの体力が持ちそうに無い。バトルシップもメインの砲芯が潰されたから一撃必殺は出来ないっぽいけど、その攻撃手段は圧倒的だ。

 しかも強力な障壁張ってるから、一機程度の聖典の攻撃は通らないし……奴らの足を止める事が出来ない。少し隙を作れて、その間に残りの聖典での収束砲が狙えれば、まだ勝機はあるかも知れないけど……今のこの飛空挺じゃ、とてもじゃないけど隙なんて作れそうもない。

 だから頼む! そうノウイに願うしかない。そしてそんな願いが通じたのか、通信用のお札から待ちに待った声が聞こえる。


「やったすよ! 準備は整ったっす! スオウ君そっちはどうっすか?」


 そんな声で僕はメーターを見る。青い光がカスッカスだった筈のメーター内に、僅かだけどその光が強まってる様に見える。だけどまだ増えたりはしてないぞ。警告音もずっとピーピー成ってるし。

 どういう事だ? 僕は艦長に視線を投げる。


「一度電源をリセットするんだ! 一瞬ガクッと高度が落ちるだろうが。動力路のエネルギーの循環がそれで正常に戻るはず……私が座ってたイスに付いてるケース入りの赤いボタンを押し込め! そして直ぐに上昇下降のボタンに連なって緑のボタンがあるだろう。それを三秒以上の長押しで再起動だ」

「了解!」


 僕は言われた通りにまずは艦長が座ってたイスを漁ってケース入りのボタンを発見。イスの右側に固定されてた。誤って押さないように透明なケースが付いてる訳だな。僕はそれをあけて赤いボタンを力一杯押した。

 その瞬間ガクリと糸が切れた操り人形みたいな感じで高度が下がり始める。光ってた各種のメーターも警報も光が消えて音が止む。

 僕は揺れる機体にしがみつき、今度は緑のボタンを押し込んだ。


「一……二……三!」


 その瞬間、青い光の紙吹雪が飛空挺から一斉に溢れ出す様に飛び出した。損傷してる箇所から、それはもう沢山。これまでチョロチョロ出てたのとは訳が違う量だ。これが本来のエネルギー量って事か。

 メーターが溢れる様に戻り、各メーターの輝きもなんだか増したような気がする。まあ別の原因で警報は鳴り続けてるけど、動力さえ戻ればこっちの物だ!

 もう少し速く動けるのなら、やりようはきっとある。今はただ空に浮かぶ大きな的だからな。


「よし! 動力の供給は問題なさそうだ! よくやってくれたよノウイ!」

「いえいえっす! じゃあ自分はセラ様の元へ戻って二人を甲板にあげるっすよ! 合流してた方がいいっすよね?」


 確かに、これからと万が一を考えると、やっぱりみんな同じ場所に居るのがいいとは思うな。動力は戻ったけど、基本こっちの方が遅いんだし、それに何かを決めるにしても、みんなの意見は必要だ。


「ああ、頼むノウイ。それとその通信用のお札、甲板に居る二人用も持っていってやってくれ」

「わかったっす!」


 そう言って通信終了。なんだかノウイは色々と使い勝手がいいね。素直だし。基本誰かに逆らわない。どう考えてもパシリ体質があるよね。まあそんなつもりで使ってる訳じゃないんだけど僕は。

 セラの奴はそこら辺も踏まえて使ってそうだけど、僕はただ単にノウイは優秀だと思うから頼りにしてるわけだよ。戦闘以外では本当に使える奴だもん。


「取り合えずこっちはこっちでみんなの負担を少しでも減らして、尚且つリア・レーゼまで飛ばさないといけないんだよな。エネルギーも戻ったし、早速加速を――って、そう言えばまだその方法見つけてないや」


 そう言えばそうだった。横移動に縦移動は出来るけど、スピードアップだけはまだ開拓してない僕なんだ。僕は期待する様な瞳で艦長さんを見つめるよ。


「これは協力じゃない協力じゃない協力じゃないんだ。神よお許しを」


 なんだかブツブツと自分に言い訳してる。だけどそんな葛藤も終わると、ため息一つ教えてくれた。


「舵の真ん中に黒い球体があるだろう。それに手を添えて、圧力を変えればスピードアップ出来る」

「なんでここだけそんなハイテクなんだよ!」


 どうりでわかんなかった訳だ。確かに舵の中央に着いてる変な球体は気になってたけどさ、そんなデザインだと思ってたよ。

 なんか微妙に柔らかいし、下手に触るのも不味いと思ってたけど、そんな技術が隠されてたとは驚きだ。それなら舵もこんな原始的な方法じゃなくてもいいんじゃないのか?


「まあ、取り合えずさっさとスピードアップしないとな」


 圧力でスピードが変わるって事は、何も添えてない今は最低速度って事なんだろうか? てか、そもそも少しずつ落ちてた訳だし、最低速度よりも遅かったのかもしれないな。

 僕は早速舵の中央にある黒い球体に右手を添える。なんだかちょっとヒンヤリしてる様な、だけどちょっと奥が暖かい様な不思議な感じだな。それに実際触った感触はそんなに柔らかく無かった。

 でも少し力を込めるとプニって感じで手の形に凹むんだ。そしてそれを感知したのか、飛空挺が微細な振動を刻んだと思ったら明らかにこれまでよりも滑らかに空を滑り出した。まるで風に上手く乗れた様な感覚。


「今までと全然違うな!」

「当然だ。この船は旧型だが、耐久性は折り紙付きだからな」


 なんだか自分が誉められたみたいに鼻高々な艦長。別にあんたは誉めてないんだけど、そんな事突っ込む気にもならないぜ。

 操舵室のガラスは全部大破してるから、入ってくる風が変わったのがわかる。今までは目を開けとく位普通に出来てたけど、加速したらそれがちょっと辛い。

 吹き付ける風が直ぐに目の水分を奪っていくんだ。こんな所で風を遮る事の大切さがわかるとは……てか、実際これが普通なんだよね。

 今までが遅すぎたから問題なく感じてただけで、空を飛んでるんだからこれが当然の筈なんだ。でも結局はバトルシップの方が速いって事実には変わりないんだけど。ある意味ある程度スピードが出てくれたからか、追随しやすく成ったのかも知れないな。

 さっきまでは無駄に上や下や追い越したりして様々な感じでこの薄ノロかった飛空挺に攻撃を仕掛けてたもん。わざわざ遠くまで追い越して急旋回とかやってた訳だけど、今は普通に追いかけて来てる。

 位置は後ろ斜め上方。きっと簡単に追いつけるんだろうけど、その位置を保ってるのはそこが打ち落としやすい位置だからだろう。


『動きが戻ったみたいだな。だがバトルシップには遠く及ばない性能なのは変わりない。じり貧だ。お前達をリア・レーゼにはいかせん!!』


 そんな声が通信機から入る。そしてそれと同時に、再び射出されるミサイルが四つ。だけど直ぐに聖典が反応して空中に黒い煙が立ちこめる。けれど、そんな黒煙の中から飛び出すミサイル一つ。どうやら打ち漏らしたみたいだな。

 だけどそこはベテラン勢。シルクちゃんの障壁がそんな打ち漏らしたミサイルを防ぐ。だけどその時だった。黒煙を貫いてシルクちゃんの張った障壁へ届いた分厚い光の線。それは凶悪な赤紫色をした……収束砲? まさかまだあんな一撃必殺の攻撃手段があったなんて……近くを飛んでた聖典数機が巻き込まれたのか炎を上げて消えていく。


「きゃあああああああ!!!!」


 甲高い声が耳に届く。流石にミサイル一つを防ぐために張った障壁であの光を防ぐことは難しかった。実際結構早く障壁は砕かれて飛空挺へと差し迫る。


「うおおおおおおおおおおおお!! 下がってろシルク!!」


 勢いよく前に飛び出した鍛冶屋がありったけだろう鉱石をアイテム欄から出現させる。そして組みあがったのは大きな盾? それは今までの簡素な壁とは明らかに違う。デカいしね。

 後ろの方で組みあがった盾は凶悪な赤紫した光を受け止める。四方に拡散する光が凄くまがまがしく見える。くっそ、完全にはめられたと思う。あのミサイルはこの本命を隠すための物だったってことか。

 でも何で今更ってのはある。こんな強力な武器をまだ隠し持ってたのなら、遅かった時に打った方が確実立ったろうに……それともやっぱり遅過ぎたとかか。あの位置がベストな発射位置?


「鍛冶屋君大丈夫!?」


 僕が色々と考えてるとそんなシルクちゃんの声が耳に入ってきた。遠目だからよくわからないけど、どうやらあの鉱石の盾でもヤバそうみたいだ。光の勢いはまだ衰えてないもんな。

 どうにかしないと……この船の舵を握ってるのは僕なんだ。


「ビギナーだからな。荒っぽい運転に成るけど、耐えてくれよ!!」


 僕はそう言って下降ボタンを押した。そして右手を握りしめ更に加速。地面に向かってグングン進む。


「なっ何をやってるんだ!? 気がおかしくなったのか? 心中なんてごめんだぞ!」

「誰が死ぬかよ! これは生きるために取った手段だ!」


 地面から聳える緑の木々が迫る。そこに触れるか触れないか位で平行飛行に切り替える。するとなんとか鉱石の盾から赤紫の光を引き離せた。後ろをちら見すると赤紫の光は地面と木々を抉ってまだ迫ってきてる。

 しつこい奴。それに鉱石の盾はその役目を終えたみたいにボロボロと崩れ去ってるし、もう一度追いつかれる訳にはいかないな。

 僕は今度は上昇のボタンを押す。そして一気に空へと掛け上がる! 上へ上へ! もっと上へ! だけどまだまだ追いかけてくる凶悪な光。

 どんだけの出力を出し続けれるんだよ。飛空挺の船底部分を掠ってるのか、激しい揺れが襲う。赤紫の光は飛空挺を追い越して白い雲を喰いちぎるように空に穴をあけてる。

 このままじゃ飛空挺が真っ二つにされてもおかしくない。どうにかしないと! 僕は舵をおもいっきり切るけど、それはただの横移動にしかならない。船底の穴が広がった程度で逃れられない。スピードも既に限界で、次第に限界高度が近づいてるのか勢いが落ちてきてる。これは不味い。


『くははははは! このまま木っ端微塵にしてやろう! 神の裁きを受けるがいい!』


 ノリノリな声が通信機を通して聞こえてくる。くっそ、何が神の裁きだ。都合の良い解釈で神を使うんじゃない。それが自分達の神様を安っぽくしてると気付け。

 だけどこのままじゃ奴らにとって都合の良い神の裁きとやらが僕たちを打ち落としてしまう。どうにか出来ないのか?

 シルクちゃんとかの障壁を期待しようにも、今までよりも激しく動いてるせいか機体にしがみつく事で精一杯の様子。

 まあだけどここまで頑張ってくれたんだここからは僕の番だろう。だけど散々言うけど、スペックの圧倒的違いは痛い。逃れられる気がしないぞ。


「くっ、見てられないな!」


 そう言って艦長さんが舵の前に設置してある自分用の椅子に駆け上ってくる。そして僕の腕の所から乗り出してきてなにやらガサゴソとやってるような。はっきり言って邪魔なんですけど。


「よし、取り合えず四機のプロペラは無事なようだな。少々荒っぽいが私が合図したら、もう一度おもいっきり左側に舵を切ってくれ!」

「? りょ、了解です!」


 良くわからないけど、ここは言うとおりにするべきだろうと何となく思った。艦長さんはこの船の事を誰よりも知ってる筈だからね。


「よし、今だ!!」


 そんな合図と同時に僕はおもいっきり舵を切る。するといつもはただ横に移動するだけの筈なのに、何故かいきなり視界が百八十度回転した――ってこれは、飛空挺事態が回ってるみたいだ。


「うわあああああああ!!」


 思わずそんな声をあげる僕。だって天井と床が逆転してる。クリエとかミセス・アンダーソンとかはおもいっきり天井に落ちた形になってる。てか、みんなは無事だろうか? 一声かけるべきだった。


「何やってるんだ! 早く舵を回すんだ!」

「そんな事言われても! ――んぎぎぎぎ!」


 僕は必死に腕を伸ばして舵を回転させる。すると何とか三百六十度回転して、赤紫の光を頭上へと逃がす事に成功した。


「まだだ!」


 そう言って更に何かやってる艦長さん。今気づいたけどどうやらこの人は飛空挺の四隅に取り付けてある四機のプロペラの向きを操作してるっぽい。あれが推進力に成ってないのは知ってた。

 でもそれなら何のためにって思ってたけど、まさかこういう事の為だったとはね。飛空挺の細かい操作の為のプロペラなのか。そして今プロペラは上向きではなく横と前を向いた状態に、そこで再び舵を切れとのご命令が下る。

 すると飛空挺がくるっと横回転して後ろを向いた。

 向かい合う二つの船。旧と新の対決はまだ終われないし、終わらない。

 第二百八十八話です。

 ようやくまともに飛べるようになった飛空挺。ここから空の戦いは機体と機体の勝負へと行く筈です。まあスペックでは完璧に負けてる飛空挺だけど、向かい合う事をした以上逃げられないでしょう。

 どうやって旧が新に抗うのかは次回で!

 てな訳で次回は木曜日に上げます。ではでは。

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