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僕達は移動する。そこそこ大所帯だけど、心がけるのは静かな移動だ。実際この静かに移動する……ということがどれだけ意味があるのかはわからない。だって月の事はよくわかってないし、もしも月の女王とかいう存在が月の全てを把握できるのだとしたら、僕達のこの行動は既に把握されてることになる。
いや……
(把握されてないわけないよな)
だって僕達の作戦開始の時間はセツリにバレバレだった。別に隠してなかったということもあるが、僕達の行動開始直前に合わせて月から刺客(超巨大月人)を送り込んだんだから、月側を準備を整えてるはずだ。
でもまだ僕達は戦闘に入ってない。当然だけど、すぐに戦闘に入ることだって想定してた。その場合は敵の相手をしつつ、目的地まで進んでゲートクリスタル(仮)を設置するのが最重要な目標ということになってる。
僕達も今もずっとこの大部隊について行ってるのはそれが必要だとおもってるからだ。
「おかしいですね」
「そんなの誰もがわかってるわよ。だからピリピリしてるんでしょ?」
ラオウさんの言葉にメカブが投げやりに答える。それだけ聞いてると、メカブがまともに思えるが……あいつ既にラオウさんの背中に負ぶさってるからね。早すぎるだろう。その理由は「疲れたくないから」……ふざけた理由である。
仕方ないやつ……でも今回はこいつも必要だ。だからラオウさんも甘んじてメカブを運んでるんだろう。実際、ラオウさんならメカブを重いなんておもうことなさそうだし?
「それにしても……ですよ。月側も私たちの動きは把握してるはずです。なのになんの行動もない。少なくとも動きがこっちからは見えない……それが不気味なんですよ」
だからこそ皆がピリピリしてる。テア・レス・テレスには家の学校の奴らがいるわけだし、セツリは僕ほど有名ではないにしても、リアルとこっちの容姿が変わらないのってわかってる人たちはいるだろうからな。
敵側にプレイヤーがいるって事は、こっちの動きとか予定が筒抜けになるってことだ。だからこそテア・レス・テレスの人たちも緊張感を持ってる。
「スオウ君、なにか見えないですか?」
僕に話しを振ってくるラオウさん。僕は一応周囲をくまなくみてみる。でもなにかが見えるってことはない。セツリは僕のこの目のこともよく知ってる。だから下手に視界に入ってバレるような隠密はしないだろう。
姿を消すタイプの月人とかがいたとしても、僕には無意味だ。けど何もやって来ない? そんなわけないってのも確か。この緊張感だけで精神が削られていくようだ。
それが狙いって線もある。でもこの緊張は案外すぐに壊されることになった。




