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月……というのは言葉ほどにロマンティックな場所じゃない。まあこれで数度目ともなると、僕たちはそんなロマンティックじゃないとはわかってる。でも今回初めて月の地を踏んだ人たちも当然いる訳で……そういう人たちは視界の向こうにある丸い星……青々としたそれに感動してるようだ。
こんな光景をみたら「地球は青かった」――といいたくなるのもわかるというもの。実際何人かのプレイヤーとかそれをいってそうだし? でもそれって実際は星の評価であって、月の評価ではないんだよね。でもそれも仕方ない。
だって月って基本砂というか? 岩場というか? それしかないからね。しかも別にカラフルでもなんでもないし。殺風景というのが一番言葉的にはあってる。わくわくドキドキとしてきた人たちには自分たちがいた星が見える事には感動しても、月自体の風景には――スンッ――となる。
どうやらゲートはそこそこの距離に開けてたらしいね。だからここからはまだ月の城とかみえない。きっとそれなりの人数を送り込むんだから、まずは慎重になったんだろう。これが僕たちだけ……とかなら、それこそ月の城の内部……は厳しいだろうけど、月の街並みのどこかにこっそりとゲートを開く……くらいはできそう。
いや、その国の所属とか、だれかが支配してる地域とかはそんな簡単にゲートをつなげるって実はできない。権限ってやつがあるからね。でも会長ならそこらへん強引に突破できそうな気はするよね。まあ今回はそこまでのリスクは取れないって判断だったんだろう。
まずは安全第一……それから段階を踏んでいくって感じだ。なにせ僕たちの最初の目標はゲートクリスタル(仮)を月に設置することだ。考えてみてほしい。もしも月でやられたら復活はどこになるのか? それはもちろんだけど、地上の人種の国のゲートクリスタルになるだろう。その場でヒーラーに復活してもらえたらいいが、そうじゃない場合だってある。復活させてもらえるのを希望して待つか、リスポーンして再び月に戻ってくるか……どっちがいいのかってことになる。
けどいちいち地上に戻るってリスクがある。距離はそれこそゲートで縮められてるが、ゲートはリスポーン地点にはならない。それに……もしも今地上を襲ってる超巨大な月人……あれがゲートクリスタルを破壊してしまったら? そうそうないとは思う。だって地上にいるプレイヤーとかその地のNPCがそれは許さないはずだ。
だって別にゲートクリスタルっていうのはプレイヤーの為だけにあるわけじゃないからな。観光名所だし、ゲートクリスタル事態にも役割がある。あれ自体がエネルギーを発してるからね。だから大きな国の首都にはゲートクリスタルがある……というのだ。ちゃんと意味が用意されてる。
だから最重要な防衛対象といってもいいのがゲートクリスタルだからね。それなら壊れないように設定してあるんじゃないか? という風にも思えるだろう。でも油断はできない。確かにシステムで守られてるとは思う。けどシステムも貫通できるからな。
普通の街中の物や建物だってシステムで守られてる。けど、絶対に壊せないのか? というとそうじゃない。壊れるときは壊れる。だからもしかしたらゲートクリスタルだって壊れる可能性はあるのだ。そうなったら、月に戻ってくる手段がもっと複雑になってしまう。
だからこそ、最初の僕たちの目標はこの地……月に新たなゲートクリスタル(仮)を設置することなんだ。




