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現場は混乱してる。いきなりの超巨大な月人の投下。街に直接落ちる……なんてことはなかったけど、動き出した超巨大月人は地面を揺らしながら、人種の国の首都に向かってきてるのがわかる。その姿はいつもの白い月人ではなく、黒い。
それに何やら僕の目で見てみると、距離があるけど、あることがわかった。
「あれ、すでにダメージ受けてるぞ」
HPが半分くらい減ってる。
「え? それって月から落ちたから? アホじゃん」
ローレの奴がそんなことをあきれたように言う。それは確かにアホみたい理由ではある。実際本当の所はわかんないけどさ。でも実際それが濃厚ではある。だって月って星の外にあるわけだからな。この星の内でも高い所から落ちたらもちろんダメージを受けるのに、星の外からやってきて勢いよく地面にたたきつけられたわけだよ? まさに突っ込んできたって感じだったからね。うまく地面につく前に減速? したようには見えなかった。それを考えたら落ちただけでHPが空にならなかっただけ上出来なのかもしれない。
「どうやら世界各地に同じようにあのような超巨大な月人が現れたみたいですね」
シルクちゃんがそんな風にいってくる。どうやらLROの掲示板にそういう情報が一斉に書き込まれ始めたようだ。
「リア・レーゼの方は?」
「そっち方面の書き込みはないみたいですけど……」
リア・レーゼの方変には落ちなかったのか? でも僕たちの狙いをセツリの奴はわかってるはずだ。リア・レーゼと月の同時攻略……それならリア・レーゼの方にだってあの超巨大月人を落としたいハズ。それなのにない? なんてことある? でも僕はシルクちゃんの事を100パーセント信じてる。だってこんないい女の子はそうそういないからね。
はっきり言ってシルクちゃんの信頼度は僕の中で日鞠の次には高い。なら疑う余地なんてない。一歩を踏むたびに地面……建物を揺らすほどの超巨大な月人は確実にこっちに向かってきてる。近くの町を襲うように設定してあるのかもしれない。
このままではあの月人にこの人種の首都が壊滅させられる。あれに暴れられたらひとたまりもないだろう。ここにはたくさんのNPCたちが生活してる。家とか買ってるプレイヤーもいるだろう。第二の人生とか始めてる奴がいてもおかしくない。このままつぶされるわけにはいかない。
でもあれに戦力を出しすぎる訳にもいかないよな……ここに今集まってるのは月へと向かう戦力なわけで……
そう思ってると、「うおおおおおおおおおおお!!」――そんな風に勢いよく月人に向かう人たちがいた。どうやらまだ静観を決め込もうとしてたプレイヤーたちが動いたみたいだ。
「なんで?」
「あんたが言うにはあの月人HPが削れてるんでしょ? なら倒せるかもって思って先んじようとした奴らがいてもおかしくなくない?」
「なるほど……」
得だけはしたいメカブだから同じような奴らの思考は読めるのだろう。ある意味でHPが半分近く削られてるのがよかったってことか。プレイヤーならここを見捨てるって選択肢だって出来るからな。でも「勝てるかも」――と思えるのなら逃げるよりも立ち向かう方が得だと思えたってことか。
でもありがたい。そんなことを話してると、テア・レス・テレスと人種のトップの人との話も詰められたみたいだ。いろいろと指示をだしてる。いくつかの人種の軍隊は向こうに向かうことにしたようだ。それは仕方ないね。
けどテア・レス・テレスの戦力とかはそのままだから、事実上、月の攻略はこちら側……プレイヤーにゆだねられた感じになるな。




