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空気がその日は張りつめてた。人の動きはあるし喧騒だって確かに聞こえる。でも、どこか緊張があった。それを戦いに参加しない市民の皆さんもきっと感じてるんだろう。それにこれは一国の、一種の問題じゃない。
このLROに生きる人達、全員に関係があることだ。今回の決戦が、今後のLROの未来を決める……といっても過言じゃない。月の奴隷とかすか、解放されて月を下すか……それがこの日に決まる。僕とセラやローレ、あとアーシアやラオウさんにメカブは人種の国にいた。ここは月へと侵攻する者たちが集まってる。まずはテア・レス・テレスの人々や人種の軍が月に切り込むことになってる。
後の種は世界樹の奪還である。プレイヤー達はどっちに参加するのかは自由だった。だからここにいないアギトたちは世界樹の奪還の方にいってる。世界樹の奪還のためにすでにリア・レーゼの周囲に展開してる人たちもいる。リア・レーゼの町は世界樹のふもとにあるわけで、その周囲は森だ。だからそこにすでに隠れ潜んでる……というわけだ。
でもそれだけじゃない。一部の戦力はもっといろいろな方法で投入を考えるみたい。飛空艇を使っての空からの戦力を投入とか、さらには今や止まってしまってるリア・レーゼのゲート。それをどうやら会長がハッキングして一時的に稼働できるらしい。時間は決まってるらしいが……でもゲートを使えれば一気に町中に侵入できる。
外周からまずは動き出し、敵の目をそちらに向ける。戦力もある程度そっちに行くだろう。それから空からの戦力を投入してさらにリア・レーゼを混乱させる。その隙にゲートを開放してリア・レーゼの中心に最高戦力を投入して彼らには世界樹の中枢を目指してもらう……という作戦らしい。
けどこれも月から円滑に支援されてはうまくいくはずもない。だからこそ、僕たち月へと攻め込む側も必要……ということだ。これも会長のハッキングあってこそ。どうやら会長の奴、あの眠ってる間に当夜さんからいろいろと教わったのか、祝福の使い方? が飛躍的にあがってる。僕が何とかレベル3くらいになったのを喜んでた所、なんか向こうはいつの間にかレベル10を突破してるような……そんな感じである。
もともとはきっと会長はレベルでいうと5とか7くらいだったと思う。体感的にはね。それってまだ背中が見えるくらいじゃん。まだそこにいる……と感じれれた。けど今や……うん、認めるのは癪だけどこれはもう認めざる得ない。
そう、僕にはもう祝福では会長の姿が見えないくらいに差が開いてしまった。それがやっぱり悔しい所ではある。




