105
「あっ……」
格好よく新たな武器をお披露目したくて、メカブの奴はその杖? をくるくると回す。身長よりも長いわけでもないけど、ハリポタみたいに腰にさっとさせる程でもない半端な大きさの杖。それに言うならばあのメーモスとか名付けてるものを杖……といってるはメカブであって、まあ杖ではあるといえるけど……って感じの形してる。
メーモスとメカブが呼んでる杖は真ん中が輪っか的なものになってる。メモリもみえる。今はその輪っかの先端についてる棒部分がまっすぐになってるからある程度の長さの杖……にはみえる。でもあの杖の中央を見るに、あれは上の棒と下の棒をカチカチと角度変えられそうな気がする。
くるくるとメカブがしてたのも、その中心の輪っかに指を突っ込んでやってた。けどそれがポーンってね。飛んで行った。そもそもメカブはちょっとどんくさい所がある。よく転んだり、躓いたりしてるからね。そんなメカブが無造作にくるくるなんてものをしてたら、それはああなるよね。なるべくしてなったといってもいい。
「ほら」
僕は仕方ない奴だな……とか思いつつ、飛んだメーモスの杖を落ちる前にキャッチしてあげる。そしてそれをそのままメカブに渡す。
「ご苦労」
「お前な」
「あはは、嘘嘘、よくやったね。よしよし」
そうじゃねえよ。普通にありがとうっていえばいいのに、変なノリをかましてくるメカブ。僕は付き合う気にもならないからさっとさメーモスを渡して離れる。ついでにちゃんと忠告しておく。
「今度は飛ばすなよ」
「りょ。さて、やりますか」
そういってようやく貝に向き合う。貝はしっかりとその口を閉じてる。水とかここにはないんだけど……あの貝は大丈夫なんだろうか? とかおもってHPを見てみる。別に減ってる気配はない。どうやらあの貝は水陸両用みたいだ。
実際ハマグリとかは砂の中に居るしね。別に……いいのか。でも確かにあれだけがっしりと閉じてると、ダメージを与えるのはかなり難しそうな気はする。モンスターのハマグリは普通の掌サイズのハマグリとは数十倍の大きさの違いがある。
今は平べったく地面にあるが、あれをたてたら、僕の身長くらいにはなりそうだ。
「あ、これって倒していいの? 弁償とかできないけど?」
「それはいいわよ。安心して」
「そっか、なら見せてあげよう。この黙示録にも刻まれしメーモスの力を!」
するとメカブはそのわっか部物に腕を通した。そして詠唱のようなものを紡ぐ。
「来たれ黙示の悪魔の第四の使徒! メディモース!! アクティブ」
なんか最後ボソッと言ってたな。メディモース! までは勢い良かったんだけど、最後はとてもボソッと言ってた。つまり……
(あれ、前半いらなかっだろ)
僕はそう思った。




