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「なるほど……月の残骸か」
新たなに発見された世界樹の加護を僅かに取り戻す月の残骸……それを簡単に鍛冶屋に伝えた。この武器やらに+出来るテープはそもそも月の残骸って奴を想定してたわけじゃない。
だからもしかしたら、その月の残骸があるのなら、こっちのテープは別に……とかいうかなって……だってこれはちゃんと使えるレベルにするって結構大変じゃないか? どうやらこのテープで合成できるものは別に縛りって奴はないらしい。
テープで巻ければ、どんな物とも合成できる……そう聞くと確かに凄い。
「可能性の塊じゃん!!」
ともいえる。間違いじゃない。無数の組み合わせを試して、めっちゃ有用な能力がついた武器を作り出せるかもしれない。その可能性は確かにある。でも……問題はその組み合わせが無数にある……と言う事だ。
いくらでも時間がある時なら,楽しんで試行錯誤を繰り返していけると思う。なにせLROでは皆が終わることない冒険をしてる。それぞれが自分だけの冒険ってやつを。そこにはやっぱり頼りになる相棒は必須だ。
この世界はリアル程に安全じゃないしね。外でモンスターを倒すためだけじゃない。何でも組み合わせること出来るのなら、あからさまな武器じゃなくても武器にできるかもしれないし、なんでもない服とかに攻撃性能を仕込めたり? するかもしれない。
それに意味があるのか? とはおもうが、意味ではなくやれることが大事だ。けどそうなると勿論だけど考える事だって沢山になる。いくつも試行錯誤をしないと納得できる効果を持った武器とか防具はきっと手にはいらない。
それに一回組み合わせたら戻せないってなると……ゴミが出来る可能性だってあるわけで、いくらプレイヤーが沢山の武器や防具を倉庫に死蔵してるといっても、そのうちなくなったりする。
この期間ではそれは流石にないだろうけど、逆をいうとこのテープの組み合わせは無限大過ぎて方向性も何もないのだ。だからこそ、間に合わない。そう思える。
「これは確かに凄いよ。武器に新たな効果とか特性を簡単に付与できるんだ。新しい遊びが出来たってプレイヤー達は喜ぶだろう。でも……間に合わない。世界樹の奪還、そして月への侵攻までには無理だろ?」
僕は素直にそう鍛冶屋に伝える。いや、せっかく作ってくれて悪いけどね。もちろん発表されたら好意的に受け入れられると思う。でも月への反抗作戦までにはこの状態のテープじゃあ、使えるレベルの物をどれだけの人が用意できる?
多分ほとんどいないぞ。
「これは危険か……」
月の残骸に気づかなかったら、これでいくしかなかった。だって可能性は確かにある。なんとかいい組み合わせの武器を作って、挑むほかなかっただろう。でも月の残骸である程度の加護を受けられるようになった。
そうなると……ね。これはリスクが高すぎるんじゃないか? と思う。




