89
どっちかというと突発的に生えてきたのが「月の残骸」だった。偉い人たちが考えてたのはきっとこっち。
ゴト――そんな重そうな音ともに、一つの武器が目の前のテーブルおかれた。それは別に何か特別か? という風に思えるほどに普通というか? なんの変哲もないようなアイアンソードといっていいものだった。
ほらオーソドックスな冒険ゲームの最初期の装備、さすがに棒とかよりはいいけど、昨今はこれを装備して始まるのは多いと思う。だって両刃のまっすぐな刀身になんの変哲もない柄がある剣だからね。
きっと大量生産品だろうってのがわかる。
「これって普通の剣じゃないの?」
つんつんとしつつメカブの奴がそんな風にいう。みんなが思ってたことをメカブはいった。でもさすがに……ね。流石になんの変哲もない剣を鍛冶屋が出すとは思えない。だってこんなのは鍛冶屋が作るような剣じゃないからだ。
そもそもそういう剣はここの下級の鍛冶屋が作るようなものだろう。ここで最上級の鍛冶屋であるこいつが作るものじゃない。なんの変哲もない見た目だけど……なにかあるんだろう。僕は剣をじっとみて、その説明をみる。
『アイアンソード、品質普通。店の鍛冶屋でいつでも売ってるよ』
――とでた。いや、普通の剣だった。
「まあまあ、あわてるな」
僕たちのなんとも言えない視線がいたたまれなくなったんだろう。鍛冶屋はなんとか弁明しだした。剣の横に別の何か……おいた。
「本命はこっちだ」
それはなんというか? テーピングテープ? そんな風に見える。いやマジだよ? 別に冗談は言ってない。鍛冶屋が出すようなものじゃないような? いや別に鍛冶屋は鍛冶屋を名乗ってるが、別に鍛冶だけの専門ではない。なにせこのゲームには生産できるものは多種多様にある。
きっと普通に農家とかで生計をたててるプレイヤーとかもいるだろう。生産系のスキルを極めていく中で、べつの物も伸ばさなくてはならなくなるってのはよくあることでもある。それにこのゲームは組み合わせが重要だ。
無数のスキルの組み合わせ……そこに個性がでて、同じような構成になることはない。だからこそ、唯一無二のビルドが組めるんだ。だからきっとこれだって鍛冶屋が他の生産系のスキルを使って作ったといわれてもおかしくない。
まあテープって手作業でできるの? ではあるが、ここはゲームである。
「テーピングテープに見えますね。手にとっても?」
「ああ、どうぞ。効果もわかるはずだ」
そういったのはラオウさんだ。ラオウさんは普段からよくテーピング使ってるからね。一番テーピングテープを見分ける目はあるだろう。いや、テーピングテープを見分ける目ってなんだよって感じではある。
そんなことを思ってたけど、ラオウさんはつぶやく。
「確かにこれなら、ふさがった可能性を伸ばせるかもしれませんね」
――ってね。




