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ガゴン! ガーガーとエレベーターに乗って僕たちはこの移動要塞の上に向かう。誰もが乗れる大きめのエレベーターは物資も乗せるためなのか、やたらデカい。それに……リアルのエレベーターのように箱ではない。密室じゃないのだ。四角い板を持ち上げてるだけ……みたいなさ? そんな感じのエレベーターである。落ちないようにと一応端っこには手すりみたいなのが腰の高さくらいにある。でも安全策はそれだけである。
さらにいうと動く時と止まる時の振動が凄い。今どきのリアルのエレベーターはほとんど振動なんてないだろう。それこそ滑るように……みたいに動いてる。でもこれはなんか時々ガタン! となる。そして止まる時は盛大にズガン! と止まる。皆床に手をついてなんとか耐えてた。
いや、ひっくり返ってる奴もいる。メカブである。もろに見えてるぞ。スカートとの中の物が。
「みた!?」
バッ――と急いで体を起こしてスカートを抑えるメカブ。そんなヒラヒラとした服なんて着てるから……とかいいたいが、男性共のバッと視線をかわす速度ときたら……僕に匹敵してるんじゃないか? という感じの速さで首を回してた。そのせいでなんか嫌な音が聞こえたが……まあLROだし大丈夫だろう。
そして皆が反射の速度を超えて反応したせいで、「まあメカブだし」とか思って油断してた僕とばっちりと目が合ってしまった。こういう時はどうしたらいいのだろうか? 下手にごかましても、向こうはきっと確信してる。ならばごかましは意味なんてないだろう。
そうなると……
「案外、お前も女だったんだな」
その瞬間、お前はどこの野球選手なんだよ!? と言いたくなるようなフルスイングをメカブの奴はかましてきた。もちろんバットなんて都合よく持ってる訳ないから、ご自慢の杖を使ってる。まあけど流石に血管キレて普段の数倍のポテンシャルを叩きだしたとしても、僕にとってはそれでもメカブの動きは遅いわけで、勿論よけた。
いや、ここで一発殴られたほうが早く終わるのはわかってる。けどいきなりだったんだもん。思わず避けたんだ。そうなると……ね。一回避けてしまった手前。続けざまに繰り出される杖を使ってのフルスイングに当たるのは逆にわざとらしすぎるか? と思った。
なので結局メカブが「ゼーハーゼーハー」と息を切らして動かなくなるまで避けてましったよ。
「えーと、ほら、鍛冶屋が待ってるから早くいこう」
僕はさっきの事はなかったことにした。でもなんか視線が痛いな。特に女性陣からの。




