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「これって……月の石なのか?」
だって月の残骸って表示されてるんだよ? そうなると、もしかしたら月の石の一部とかさ……そんなのかなって……実際、全ての月の石が完全な状態であったなんて思えない。確かにダンジョンの奥とか壁画に埋め込まれてた……とかなら完全な状態であってもおかしくないと思う。
でもそんなのはある意味一部で、だいたいはそこらに普通の石のようにあったりしたんだよね。そもそも野ざらしが大半だったみたいだし? ならば割れたりしたのは相当数あったと思う。
これもそんな一つじゃ?
「違うから。これはそこの石と同じ、元はなんの変哲もない石だったんだよ」
「じゃあなんでこんな……」
なんし特殊な感じになってるんだ? さっき集めた石を見ても、やっぱり石としか表示されないぞ。
「簡単だよ。月の影響が強い所にちょっと置いとけばいい」
「は?」
何言ってんだこいつ? それならこんな所でなんの変哲もない石ころやらを集めるよりもさっさとリア・レーゼへといってひそかにそこの石か葉っぱでも持ってきた方がよっぽどよくない?
だってリア・レーゼにだって石も葉っぱもあるし枝も……いや、自然が豊富な場所なんだから、いくらでも同じようなのあるよ。
「それはちょっと無理かな?」
「どういうことだ?」
だってリア・レーゼは世界樹の麓に沿うように作られた都市だ。世界樹はとてつもなく大きな木で、別にそれだけが種が住む場所にあるわけじゃなく、普通にリア・レーゼ事態が森の中にある。
リア・レーゼは既に月の手に渡ってるわけで、それならそこら中にこれと同じようなものが出来上がってるはずだ。
「そこはほら、リア・レーゼは既に月領土だから、元からそこにある物には変化は起きてないわ」
「そうなのか?」
僕の言葉に彼女はコクリとうなづく。色々と調べてるようだな。でも一人でやったのか? 大変だったと思うけど……そしてそれを僕に明かす……やっぱり目的が見えないよね。
こいつは別に月との決戦をワクワクと待ってる……タイプにも見えないし。
「じゃあ、外から持ち込んだものしかこんな風にならないってことか?」
「そうだね」
「それじゃあ……単刀直入に聞くぞ。これはどう使うんだ?」
それだよね。確かになんか石が月の残骸なるものになってる。でも、それをどうするんだ? それが重要じゃん。
「それをもって一度、装備してみて」
となると、ただ持ってるだけじゃなく、アクセサリーとかの枠に置くとかか? ウインドウでそういう選択は出来るようになってるからな。その中に入れてみる。
僕は軽装の部類に入るだろうが、一応装備枠って奴は全部埋めてる。装備のステータス上昇は馬鹿に出来ないからだ。
「なんだこれ?」
なんか謎のアイコン? がHPバーの下にでてきたぞ。それは透明な円だ。いや、新月か? 月の関連だからなんとなくそんな気がした。もしかしたら徐々に満月に近づいていくのかもしれない。
「変なアイコンが出てきたぞ」
「それでいいの。そのアイコンがあれば、世界樹がなくなった影響を緩和できるみたい」
「なんで?」
「さあ?」
「「…………」」
無言の中、僕達はきっと別の事を考えてる。




