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「世界樹でエルフの皆さんと共に戦ってくれますか? その勇気をみせたらきっと彼らもモブリを認めてくれます」
「わかった……我らは弱くなんてないってのを私が見せてやる!」
「その言葉、忘れるなよ」
会長の言葉にモブリの代表は覚悟を決めて、エルフの代表がくぎをさす。それからさらに細かなところをつめていく。
「世界樹の奪還にはその世界樹の奥にある部屋に行って対話をしないといけない。その場所の細部は? どこにあるのですか? 一応世界樹の地図はここにありますけど」
「なんで世界樹の詳細な地図がここにあるんだ?」
「必要かと思いまして?」
なんかこてっと首をかしげる会長。まあ確かに地図を眺めながら作戦を詰めるってのは定番というか? そういうのよく見るぞ。てかそれはモブリが用意してないといけないのでは?
「世界樹をこんな風に暴くなんて……」
なんかとんでもないことをしてしまったみたいな雰囲気でモブリの代表がそんなことをいってる。確かに詳細な地図ではある。でも……これって、あれだよな? 俺は会長をみる。会長はその視線に気づいたのか「あはは」とちょっと困ったような笑顔を見せてくれた。うん、やっぱりそうだよな。これはたぶん、普通に拾ってきた地図だ。だってLROをやってる有識者たちの中にはこの世界の地図を完璧にすることに心を燃やしてる奴らがいる。
だからそういうやつらはいろんな場所の詳細な地図を作って自身のサイトで公開してたりするのだ。そういうのはお役立ちアイテム……として俺たちプレイヤーは大いに役立たせてもらってる。だからこれもそこからひっぱってきたもの……ってことなんだろう。
会長はきっと世界樹に侵攻するにあたって詳細な地図があったほうがいいと思ってあらかじめこれを持ってきたんだろう。気遣いってやつだ。それがまさかダメな事だったなんて……いや、それに会長が思い至らないなんてことはないな。となると、あえて……か。
「すみません。でもこれは必要なんです。教えてください。どこにその部屋はあるのですか?」
モブリの代表の嘆きは無視して、冷徹にそういう会長。会長が敷いた紙。その紙の上に3D立体で現れてる世界樹の全景。その姿はまさに俺たちが知ってる世界樹そのものだ。それを見て、何か言いたいんだろうけど、さすがのモブリの代表だって世界樹を取り戻すことが一番優先するべきことだってわかってる。このアホでもさすがにね。だからテーブルをトコトコと歩いて、『ここだ』――という。
「ちょっと待ってください。開きますね」
会長がそういうと、丸まる一つで表示されてた世界樹がパかっと開いて内部も見えるようになった。世界樹は大きいからな。さっき『ここだ』――とモブリの代表が指さした場所は俺たちからみたら、世界樹の枝葉の一つ……みたいな場所だった。そんなわけないだろうと、会長は世界樹の断面が見えるようにしたんだろう。もちろんだけど、内部も細かくちゃんと描画されてる。リア・レーゼの偉い人たちが住まう部分は世界樹の幹に沿うように建てられてる。だからこれでその建物のどれを刺してるのか……というのがわかるというものだ。
モブリの代表が指してた場所……それはかなり上の方にあって一つだけポツンとあるような……そんな建物だった。




