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⑫謁見の間ーⅢ


 いいぞもっとやれ!内心私はそう思っていた。陛下がいくらレイナード様の訴えを却下して私と復縁させようとしていても、さすがに本人のこの姿や経緯を周囲にも知られたとなると無理強いは出来なくなるはずだ。

 背後から私を心配するロドリックの気配を感じながら私は更に決定打となるものをつついてみた。


「陛下、発言をお許しください」


 私の言葉に数秒の沈黙。諦めるように許可を出してくれた陛下に、私はレイナード様に従う旨を伝えた。


「陛下は先程わたくしにレイナード様の支えにとおっしゃってくださいましたが、お聞きの通りレイナード様本人はそれを望んでおりません。更に彼には新しくお側でお支えする女性もおられるようですから、わたくしが居なくなろうとご安心いただけると......。はい、本日もレイナード様のお隣にいらっしゃいます彼女がそうです。そして素晴らしい事に彼女もすでに王太子妃となる覚悟がおありの様ですし、わたくしこれ以上レイナード様よりひどい罵りを浴びせられたくございませんので、どうかこのわたくしを憐れと思ってくださるのであれば......」


「なに?シェリル、お前この婚約破棄を認めるというのだな?父の前でそう誓うのだな?」


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「父上!聞きましたか?シェリル本人もこう申しているのですから......」


 レイナード様が意気揚々と陛下に申し出るが、周囲の貴族は顔を見合わせ、陛下でさえも僅かな変化を見せた。そう私の発言に対してだ。


「シェリルよ、そこなレイナードの相手がそう申していたと言うのか?」


「はい、間違いございません。わたくしに面と向かって直接そう申されました」


「他には?他には何か申しておったか?全て申してみよ」


「はい、わたくしに愛嬌がないから捨てられたのだと教えてくださり、今後ご自分が王太子妃となり立場が逆転するのだから頭を垂れよと。貴族のルールにのっとり、また至らないわたくしに手を上げる厳しさもお持ちの方の様です」


「なんと......それはまことか?それはいつの話なのだ?」


 陛下も周囲も唖然としているが、件の二人は未だ話についてこれていない様だったので、これ幸いと先日あった事を包み隠さず陛下にお伝えした。

 案の定自分達に有利になるよう都合のいい事ばかりを伝えていたのだろう、私の話を聞いた陛下は宰相ら数人に何やら指示を出し、本日一番の溜め息をつかれた。その様は何かを諦めているかにも見えた。


「あい分かった、シェリルよ先程の私の言葉は忘れてくれ。君もその方がいいと思っているのだろう?」


 陛下は申し訳なさそうにそう仰ってくだすったので、私は「はい」とだけ静かに答えた。

「そうか」と残念そうにつぶやいた陛下は、そうしてレイナード様達に静かにお言葉を掛ける。


「レイナード、お前の言う通りここにいるシェリルとの婚約は破棄となるだろう。しかし責を負うのはお前達だ。よって公爵家より莫大な慰謝料の請求があるだろうが、それはお前たちが責任を持って支払うのだぞ?さすれば二人の婚約だろうが認めてやろう」


 陛下のお言葉を聞き、私は思わず力が抜けてしまいそうになるが、踏みとどまり事の行方を見届けんとする。


「父上?シェリルの言っている事を信じるのですか?実の息子であり王太子である私の言葉より?」


「レイナード、お前には何度も聞き、何度も言い聞かせていたはずだ。親や大事な者たちの言葉に耳を傾けられないお前の言い分など......」


「ではわたくしが!わたくしレイナード様の代わりに訴えます!わたくしはずっとシェリル様から嫌がらせを受けていたのです。先日はお話出来ませんでしたが、本当はあの日だけではなく以前からずっと彼女に虐げられていたのです。レイナード様はそんなわたくしを助けてくれ、彼もまた彼女の度重なる悪意に晒されておりましたので、わたくし達はお互いに慰め合い助け合っていつしか友情が愛情に変わったのです。そうさせたシェリル様にも理由があるとは思いませんか?」


 ああ、いけない。陛下のお言葉を遮りあまつさえ嘘の訴えなど......。私はレイナード様と離れる事が出来さえすればそれでよかったのに。

 多くを望んでいなかった私はコリーナ様の発言に驚いていた。せっかくこれまで大人しくしていたのに何故ここにきて?と。自ら傷を負うような行為をする彼女を信じられない目で見tつめていると、見事こちらに飛び火してきた。


「きゃあああ!ほらっ見てください!ああやって私を睨み男爵家の私をいじめるのです!彼女は私に嫉妬しているのです、本当は自分を婚約者の座から追いやった私を許してなどいないのです」


 わあわあと喚いているが、私にはもう関係ないので好きにしてくれという感情でいた。陛下にも私の想いが届いたので一刻も早くこの場を去りたかった。彼女が同情を引こうが処罰されようがそれすらどちらでもよかったのであった......。







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