⑩謁見の間ーⅠ
この作品を読んでくださりありがとうございます。
「やあやあ、よく来てくれたシェリル。こうして君と顔を合わせるのはいつ振りになるかな?とても久し振りのように感じるが、どこか雰囲気も変わったね?」
「国王陛下にご挨拶申し上げます」
私の長年叩き込まれてきた完璧なカーテシーに、陛下が手を差し伸べてくださったのでそのお手を取り顔を上げた。
「ほう......これはこれは......君本来の美しさに磨きがかかったようだ。差し当たって未来の王妃にふさわしい美しさと気品を兼ね備えていると言えよう!楽にしてくれ」
「陛下のお言葉に心から感謝申し上げます。陛下とこうしてお会いするのは、陛下が城を発たれる朝にご挨拶して以来ですので一週間ぶりでございます」
私は陛下の質問にだけ完結に答えるが、その返答に満足しなかった陛下が苦笑いをしながら本日の本題へと入る。
「聡明なシェリルよ、分かっているのだろう?今回の事はレイナードが全面的に悪かった。私からも頭を下げよう。だから水に流して、これからもあいつを支えてはくれないだろうか?」
しまった!やられた、陛下に先を越されてしまった。こうなってはこちらは従うしかない。どうしよう、私がここで陛下に返事をする前にレイナード様のお考えも確認しないと......しかし、陛下も今回の事は許さなかったのね?それだけレイナード様に危機感を感じていたのかしら?
私が陛下への返事を一瞬だけ躊躇して考えを巡らせていると、謁見室の扉が開きレイナード様があの時の女性を連れて入ってきた。私の隣まで来た二人は、陛下への礼儀も作法も挨拶もなく私を仇でも見るかのような目で睨んでいた。
「おいシェリル!貴様、父上何を吹き込んだ!先日の事に飽き足らずまた何か父上に訴えているのか?」
何を......、私は呆れて物が言えなかった。正直な話この人に破棄を言い出されたのは僥倖だったようにまで思える。反論しても意味がないので黙る私に、更に悪意をぶつけてこようとするレイナード様を止めたのは陛下であった。
「黙らんか!レイナードよ、ここがどこで我々が何をしているのかお前にはそれすら分らんのか!お前達は呼んでおらん、部屋で謹慎しておけと言っておいたであろう!」
助かった......私は正直そう思った。国王陛下直々に、しかも一国の王が頭を下げるとまで言ったのだ。私に否やの選択肢はあるはずもなく、退路を断たれていた。しかし彼がこの場に乱入し、このまま暴走してくれたのならこの局面を切り抜けられるかもしれない。
瞬時に考えを巡らせた私は、普段なら決してやらない事を覚悟しそしてそれを実行するのだった。
今回いつもの半分の文字数となっており、短くてすみません。
作者が風邪を引いてしまい、どうしても書き進める事が出来ませんでした。厳しい寒さが続いておりますので、皆様も体調くずざれませんようにお気をつけください。




