表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ショートショート1月

おとしだま

作者: たかさば
掲載日:2021/01/02

僕は、おじいちゃんから、おとしだまをもらった。


重たくて、ものすごく、ものすごく、うれしかった。



このおとしだまがあれば、僕は何だって買える!

このおとしだまがあれば、僕は何だってできる!


大喜びで駆けだした!!


思いっきりはしゃいで、大騒ぎして。

疲れ果てて、しゃがみこんだ僕は。



「・・・ない!!!」



大切な、大切なおとしだまを、失くしてしまったことに、気が付いた。




慌てて、探し回るけど、見つからない。


泣きながら、探し回るけど、見つからない。


何度も何度も、いろんなところを探し回るけど、見つからない。


行った場所を、あちこち確認しながら探し回るけど、見つからない。



僕はもう、何も買う事ができない。

僕はもう、何も楽しむことができない。


僕は、もう、何も、できない。



僕はもう、ずっとここに、いなければならない…。



とぼとぼと、道を歩いて。


おとしだまをくれた、おじいちゃんのところに、向かう。



おじいちゃん、怒るかな。

おじいちゃん、悲しむよね。


おじいちゃんに、謝らないと。

おじいちゃんは、許してくれるかな。



「おや、どうしたんだい。」



おじいちゃんの、声が聞こえる。



…僕は、顔をあげることが、できない。


下を向く僕の目から、涙が、ぽたり、ぽたりと、落ちてゆく。



「さ、上を向いて、お話してごらん。」


下を向く僕の目から、涙が、ぽたり、ぽたりと、落ちてゆく。


「お話したら、涙は止まるかもしれないよ?」


下を向く僕の目から、涙が、ぽたり、ぽたりと、落ちてゆく。



おじいちゃんが、僕の横に座った。


おじいちゃんは、何も言わずに、僕の横に座っている。

おじいちゃんは、何も言わずに、僕の横に座ったまま、遠くを見ているみたいだ。



僕は、ただ、涙をこぼし続けている。

僕は、ただ、自分のしてしまったことを悔やんでいる。


おじいちゃんは、何も言わずに、僕の言葉を待っている。


僕は、ただ、泣いて。

僕は、ただ、悔やんで。


おじいちゃんは、何も言わずに、僕の言葉を待っている。


・・・おじいちゃんは、何も言わずに、僕の言葉を待っているから。


「・・・おじいちゃん、ごめんなさい。」


僕は、顔をあげて、おじいちゃんの目を見て、謝った。




おじいちゃんは、何も言わずに、僕の目を見て、笑った。

おじいちゃんは、何も言わずに、僕の頭を、ポンポンと、優しくたたいた。



「何があったのか、言えるかな?」



おじいちゃんが、僕に、優しい言葉を、くれたから。



「もらった、おとしだまを、落としちゃった・・・。」



僕は、言葉を出したとたんに、また、涙が、こぼれてしまった。


ぽたり、ぽたり。



せっかく上げた顔を、また下に向けてしまった、僕。



「お話したら、また涙が出てしまったね。」



ぽたり、ぽたり。



「ごめんなさい・・・。」



僕はもう、おじいちゃんの顔を見ることが、できない。



ぽたり、ぽたり。




「君にあげたおとしだまは、ここに・・・いるよ。」



僕が、おじいちゃんの言葉に驚いて、顔をあげると。


僕がもらった、おとしだまが。

僕の、目の前に、浮いていた。




「君は、あまりにもうれしくなってしまって、おとしだまを置いてけぼりにしてしまったんだよ。」



僕は、おとしだまをもらえたうれしさで…一番大切なものを、失くしてしまったんだ…。




「もう、置いていっては、ダメだよ?」

「うん、うん・・・!!!」


僕は、僕のおとしだまを、ぎゅっと、抱きしめた。


「おとしだまは、大切なものだから、きちんと抱きしめておかないといけないよ。」

「やりたいことが溢れてしまっても、置いてけぼりにしないように気を付けるんだよ。」


僕は、僕のおとしだまを、ぎゅっと、抱きしめた。


「このおとしだまはね、君だけのものなんだよ。」

「君のためだけに私が用意したものだから、君以外は使えないんだよ。」


僕は、僕のおとしだまを、ぎゅっと、抱きしめた。


「君に落とした魂なんだよ、君以外の人には意味のないものなんだよ。」

「でも、君のおとしだまをほしがる人は、ここにはたくさんいるんだよ。」


僕は、僕のおとしだまを、ぎゅっと、抱きしめた。


「魂を無くしてしまった人たちが、どれだけ君のおとしだまを欲したところで、このおとしだまは、君以外は使えないんだよ。」

「このおとしだまは、君がきちんと、使い切らなければいけないものなんだよ。」


僕は、僕のおとしだまを、ぎゅっと、抱きしめた。


「私は、君なら、おとしだまを使えると思って…渡したんだよ?」


僕は、僕のおとしだまを。


「・・・大切に、使えるかい?」


ぎゅっと・・・ぎゅっと、抱きしめた。




「うん…僕、もう、絶対に離さないよ、おじいちゃん!」




おじいちゃんは、僕の目を見て、笑った。

おじいちゃんは、僕の頭を、ポンポンと、優しくたたいた。




「今度は、ちゃんと最後まで使うんだよ。」

「うん!約束する!」




「今度は、ちゃんと抱きしめるんだよ。」

「うん!必ず!」




「今度はちゃんと、ここに持ち帰ってくるんだよ。」

「うん!絶対に、帰ってくる!」




僕は、僕のおとしだまをしっかりと抱き締めて。



…自分の人生を生きるために、光のなかに、飛び込んで行った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] いいおじいちゃんですねー。 お年玉のだまは魂のだまですね。 ってことは、明日あたりは、そのお年玉を集める悪魔が登場するんですね。はい。
[良い点] いい話だなー。いいおじいちゃんだ。たぶんいいおじいちゃん、な、はず。 [気になる点] やっぱり魂だと思ったよ。 [一言] 貯金して食費につかった思い出。
2021/01/02 20:30 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ