姉の帰還
しばらくはセレーナさんがここの暮らしに慣れるようにみんなで気を配って、適度に交流を持った。
九曜さんもお社から出てきて、雪音さんも誘って水槽前で宴会したり、スィーツを食べたりして。
人型の姿のセレーナさんはかなり美しい。真珠の肌に銀彩を纏う白い髪、とんでもなく絵になる人だ。横に居るミズメさんもセレーナさんとは似た色合いだけどそれぞれが異彩を放っている神秘的な存在で眼福だ。
そんなこんなで雪音さんの冷気にもヒートテックやカイロを使ってなんとか対応できるように慣れていった。
ドS秘書は俺に子守?をさせておくことができて集中して日々の仕事をこなせるようになったと笑う。
俺は大学に行ったり友達と飲みに行ったりする余裕ももてるようになった。
が、付き合いは悪くなったと太郎たちには言われてしまった。
待ってる人...家族がいると思うと自然と帰ってしまうんだよ。今までは1人だったからさ。
ようやく今の環境に慣れた頃、唐突に姉が帰ってきた。マットーヤとサイジョーを連れて。
「よぉ!舜、大きくなったな!」
日焼けしまくりの筋肉ムキムキで、ダイナマイトボディな姉に思いっきりハグされた。
そりゃ10年以上会ってないんだから大きくなってるさ。
「しぬ!!」
巨大な胸に挟まれて危うく昇天するところだった。
身内の胸じゃ萌えないけど、情けない死に方になるところだ。勘弁してくれ。
「お前たちも長いこと留守にして悪かったね」
双子猫又、座敷童子、お狐様、雪女、蛇とハグして回って大騒ぎだ。みんな泣いたり怒ったり、姉が愛されてるとわかる。
「姉さん、子供たちはなんで連れてきたの」
この騒ぎの中、大人しく寝てる子供が気になって聞いた。
「あー、あの親父は結局逃げるからね。舜が金を渡さないって言ったことだし、ろくな環境じゃないから。向こうの家族を説得して私が育てることにしたよ」
向こうの部族には部族なりの暮らしがあるけど、子供たちは日本人とのミックスだから誘拐の危険や迫害の心配もあるから、年に一度子供たちを里帰りさせることで話をつけたそうだ。
「なんだかんだ、血が繋がってるからね。大事のしたいではないか」
家族の縁が薄いから気持ちはわかるけど。子育ては大変だぞ。
「「蘭様と舜さまの家族は私たちの仲間だにゃん」」
「今更1人2人増えたところで問題はなかろう」
双子と九曜さんはあっさり歓迎の意を示す。
「私は小さな子は凍らせてしまいそうで怖いわね」
残念そうな雪音さん。
セレーナさんは一時間しか水の外にいられないからとしょんぼりだ。ちなみのセレーナさんは日本語と英語を秘書とミズメさんに習っているのだ。えらい。
「蘭、インディアンとやらはどうなったのだ?」
「振られた」
ミズメさんに言われて少し口を尖らせて答える姉。会うことはできたのね。
「まぁ、環境を変えたいものばかりでもないだろうね」
「またチャレンジするさ」
諦めないんかーい。
マットーヤとサイジョーは、あずきちゃんと双子が張り切って世話をすることになった。
小さくて可愛いものが大好きで世話好きだからな。九曜さんがよく本邸に来るようになった。
最初は落ち着かなそうにしていたサイジョーとマットーヤはすぐに慣れた。
2人とも親父にはあまり似ていない。肌の色が薄いのと顔が母親より若干平たいくらい。
将来は彫りが深くなるんではと秘書が言ってる。
俺はと言えば、母の死で一生一人っ子だと思っていたのに唐突に弟妹ができて、すっかり兄バカになった。正直親父のことはムカつくけど弟妹にはなんの非もないから。
日々成長する姿が可愛くて仕方ない。
みんなで構い倒すと親父のようになるぞと秘書に脅されつつ、毎日を過ごした。
姉といえば、しばらくは日本国内の友人たちと会ったり、秘書に任せっきりの仕事を確認したりしていたが、また海外の行ってしまった。
子育て丸投げ!!人手はあるけど、連れて帰ったならもう少し一緒にいてやれよ。
マジ親父の血が濃いと思うぞ。
そろそろ就活をがんばろうと思っていたら秘書に、やりたいことがないなら、姉の秘書になればいいでしょうって言われて、そのまま流された。
ま、他人から見れば簡単な方の流されてって思われるだろうが、ドS秘書は厳しい。仮にここを追い出されても生きていけるようにと鍛えてくれているよ。
そんなわけで、俺は寿邸で暮らす日々から逃れられないようだ。
終わり
間が空きまして申し訳ありませんでした
このお話は本当は舜がみんなの好感度を上げていってハーレムにするつもりで練っていたのですが、私にはハーレムは無理でした
いつかリベンジしたいのですが、恋愛系が苦手なのでどうなることやら
最後までお読みくださってありがとうございました
他の作品も読んでいただけたら嬉しいです
またお会いできますように




