パーティ進行中
その頃、サザール国宮殿の一室では人が頻繁に出入りして騒がしくなっていた。
「実家の方も確認いたしましたが、レイノルドはどこにも見当たりません」
「都中を捜索しておりますが、未だ発見には至っておりません」
部下からの報告を受けたサザール国王子は頭を抱えた。
「あの馬鹿……この一大事にどこをほっつき歩いているんだ……」
そこへ、勢いよくドアを開けて、別の部下が飛び込んでくる。
「殿下!西の町でそれらしき人物を目撃したとの情報がありました!」
王子はすぐに顔を上げると、先に報告へ来ていた部下に命じた。
「ティボルト、タイラー!すぐにその町に向かえ!本人であれば、引きずってでも連れ戻せ!」
「あらあら、かわいいカップルね」
やって来た町の馬小屋で、アーティに馬へ乗せてもらっていたところ、おかみさんに声をかけられた。
私に乗馬経験がないため、一頭の馬に相乗りするので、その様子が仲の良い恋人同士に見えたらしい。否定しようと思ったが、その前におかみさんとアーティの会話が続いてしまった。
「どこまで行くの?東であるお祭り?それとも首都観光?」
「いえ、西の渓谷に」
「まあ!あそこは人の通る道なんて整備されてないわよ?野生の動物もいっぱいいるし……」
恰幅の良い優しそうなおばさんの言葉に、疑心が確信に変わる。今から連れていかれる所はそんなに危険な所なのか。
私が恐々とアーティに目をやると、それに気づいた彼はポンッと私の頭に手を置いた。
「大丈夫です。道はわかっていますし、万が一の時の武器もあります」
アーティはそう言いながら二、三度私の頭を軽く叩いた。そうすると、何故か安心感を覚えてしまう。どこに行くかわからない、危険な所に連れていかれるかもしれないのに……何かの魔法だろうか?
知らない世界に連れてこられて、何をすればいいのか、どうしたら帰れるのかもわからないのだ。私はアーティを頼るしかない。そもそも彼の責任だ。
私は開き直って、前に跨がるアーティの腰にしがみついた。
そして、心配そうなおかみさんに見送られながら、私達は渓谷に向かった。
アーティはすごく頼りになった。渓谷で出現した鷹や狼のような生物を杖一振りで薙ぎ払い、馬を降りて崖を登る場面では、先に足場がしっかりしている所まですいすい登り、私をロープで引き上げた。
顔が良くて、魔法も使えて、強くて、力もある。中身を知らない人からはさぞモテるだろう。
「到ちゃーく」
そこは、崖の中腹辺り、妙に足場になる所が広い岩の出っ張りだった。
「……ここに何があるんですか?」
「ちょっと待ってて」
アーティは岩の壁を探るようにペタペタと触り始める。
「……みっけ」
アーティはある場所に触れると手を離し、杖の頭でその場所をコンコンッと二回叩いた。すると先程までそこにあった壁が一瞬で消え、ぽっかりと人が通れるくらいの横穴が現れた。
「この奥に目当てのものがあるはずだよ」
「なんだか、本当にアドベンチャーゲームみたいですね」
私が感嘆していると、アーティははっと顔を上げ、私を背の後ろにやった。
「え?どうし……」
何があったのか尋ねる前に、こちらへ向かって鷹のような生物が飛んできた。
「はあ、また来た……桃子、先にお入り」
「は……はい!!」
私はアーティの背に庇われながら、洞窟に駆け込んだ。しかし、次の瞬間――
「へっ……!?」
「桃子!?」
そこに足を置く場所はなく、ふわりと宙に浮いたかと思うと、私は真っ黒な闇に落ちていった。




