どうしてこうなった
――俺のメル友のあっくんことアティール・キース・レイノルドは、異世界の魔法使いだ。
あっくんは俺がいる世界に行こうとして、うっかりミスってトーコちゃん……俺の幼なじみでお隣さんの藤田桃子を異世界に召還してしまった。元の世界に戻る方法がわからず、トーコちゃんは異世界の研究をしているあっくんがなんとかしてくれるのを信じて、行動を共にすることにした。
でも、トーコちゃんには更なる急展開が待っていた。
あっくんが住むサザールという国には、異世界人に反応して鳴る鐘があって、トーコちゃんがこの世界に来たのと同時に鐘の音が鳴り響いた。困ったことにその鐘は、“異世界から勇者がやって来たことを知らせる鐘”として国民に知れ渡っていた。皇太子が亡くなったばかりで不安いっぱいの国民は、この上勇者が必要になるような大事があるのか、と動揺しまくりだったらしい。
そこで、国王の孫で次期皇太子のセイヤ王子は、手っ取り早く魔物を用意し、それを勇者に退治させることで国民の不安を解消させることにした。
そんなわけで、実は貴族のお坊っちゃんで、サザール国の王子直属の部下だったあっくんが王子のお迎えに強制連行されるのと一緒に王宮へ連れてこられたトーコちゃんは、半ば無理矢理、勇者にされてしまった。
どうにかこうにか魔物を退治したトーコちゃんだったけど、今度は王子の失脚を企む将軍に誘拐されてしまう。まあ、それもなんだかんだで解決し、大団円を迎え、運良く見つけた魔法で元の世界に帰ろうとした。
ところがどっこい、その魔法は不完全だったのかなんなのか失敗し、元の世界に帰れなかっただけでなく、今度は俺、杉山稔が異世界に召還されてしまって、今に至る、と……。
ところで、今リンゴン鳴ってるの何?
……あ、神殿の鐘かぁ。
ってことは……あれ?
俺も勇者ってこと?
……え?
どうすんの?




