4.ギルド登録と予想外の依頼
視界の歪みが治った頃、俺は周辺を見渡すと、そこには中世のヨーロッパ風の街並みが広がっていた。
太陽の眩しさや暖かさ、頬を撫でる風にはかすかに土の匂いが混じっている。
そして、その風情を完全にぶち壊す、一点を目指して爆走する大量のプレイヤー達。
「はえ〜、話には聞いてたけどリアルやな。ただ、すごい勢いで走ってる人が多すぎて感動が薄れるのが残念やけど」
あまりの光景に思わず呟いてしまった。
確かにスタートダッシュが大事とは聞いてたけど少しはこの景色を楽しめばいいのに……と思いながらも俺は先ほどチェックした持ち物を改めて確認した。
【初級ポーション】x5 HPを100ポイント回復する
【初級MPポーション】x3 MPを50ポイント回復する
【初級STポーション】x3 STを50ポイント回復する
【スキルアップポーション】x1 初級スキルのレベルを1から2に上げる。
(初級ポーションシリーズはともかくスキルアップポーションはすぐ使ったほうが良さそうやな〜。スキルとアーツの詳細を再確認しとくか)
スキル名をタッチして詳細を開いた。
スキル
【大陸語Lv 1】この世界の文字が部分的に読み書きが可能となる。
【古代語Lv 1】すでに滅びた過去の文明で使用されていた言語を部分的に読み書き可能となる。
【エルフ語Lv 1】エルフが使用する言語を部分的に読み書きが可能となる。
【待機Lv 1】1分間留まった場所より半径30cm以内から移動しない場合、3分間につきMPとSTが1ポイントずつ回復していく。
【メモLv 1】紙に文字を書くことができる。
アーツ
【見習い司書】消費MP0:メインスキルに言語スキルが存在する場合、そのスキルのレベルに関係なくその言語を読むことが可能になる。
【見習い農家】消費ST5:農具を装備することで基本的な農家アーツの劣化版が使用可能となる。
【メモ】消費MP0:紙に文字を書く。
一通り目を通して考える。
(まず言語系3種やけどアーツの【見習い司書】のおかげで読む分には問題がないらしいからこれは除外。【待機】と【メモ】の二択やけど、待機は回復中にスキルレベルが上がるって拓也が言ってたから、上げるとしたら【メモ】かな?レベル2に上がったら【コピー】のアーツ覚えるらしいし……)
スキルを開き暫く悩む。その結果、
「よし、メモに使うか」
スキルアップポーションを使用しメモのレベルを2に上げる事にした。すると聞いていた通り、アーツ欄に【コピー】が増えていた。
【コピー】消費MP3:直前にメモした内容を別の紙にコピーする。
「【コピー】ええな〜。メモは司書系統のスキルやからスキルレベルx 1.5の経験値が司書に、等倍がキャラの方に入るからこれと待機のコンボだと座ってるだけでレベル上げれるやん」
普通に倒すよりは遥かに経験値効率は低いが不遇職なりになんとかなりそうな未来に安心する。こうして確認作業を終えた俺は、ようやく冒険者ギルドまで足を運ぶ事に決めた。
「押さないでください!!整列にご協力ください!」
「おい、まだかよ!」
「昔いった祭りより混んでるな」
プラカードを持ちながらプレイヤー達の列を必死に整列させる鎧を着た兵士らしき人と、その数百倍のプレイヤーの集団がギルド前を埋め尽くしていた。
「うへぇ〜、これ並ぶんはだるいな。ってあれ?」
うんざりしながらも兵士が持つプラカードに目を向けると大陸語で、
―【大陸語】と【メモ】のスキルをお持ちの方はギルド裏口より入場お願いします―
と書かれていた。
(これは並ばんで良くなるやつちゃうか!?早速いってみるか)
驚きを声に出さないように堪えながら、こっそりとギルドの裏側へ向かうと、表とは違い誰もいない裏口が開いていた。俺はそのまま入り、受付嬢にプラカードを見たと伝える。
「スキル持ちの渡り人様ですね」
「【大陸語】と【メモ】両方とも持っていますけど、ここでもギルド登録できるんですか?」
「はい、こちらでも登録可能でございます。表の方々は大陸語が書けないため、ギルド登録を私どもが代筆しております。こちらの窓口では用紙をお渡しするので必要内容をご本人様にお書き頂く形になっております」
そう答えながら登録用紙を差し出す受付嬢。
(ふむ、必須項目は名前とジョブだけか。スキルは別に書かなくてもいいっぽいけど、記入すればスキル構成に向いた特別依頼が回される場合があるんか)
スキル構成とか知られても問題がないので、全部埋めようとペンを取る。
(うっ、【見習い司書】のアーツって読み専門のなんか!書く方はすごく細いひらがな手帳みたいな線を綺麗になぞらないと文字判定されないっぽいな)
慣れない文字をなぞりながら、5分近くの時間をかけて登録用紙を書いていき、完成した分を受付嬢に提出する。
「それでは登録します。お名前がソーイチ様、ジョブが【見習いの司書】と【見習い農家】。スキルが言語系3種と【待機】と【メモ】ですね……。はい、無事登録が完了いたしました」
「ありがとうございます」
そう答えながら自らのギルドカードを確認する。
NAME:ソーイチ
冒険者ランク:G (0/50)
「スキルはカードに記載されないんですか?」
「ええ、他の方へスキルが知れ渡らないようにギルドカード自体にはスキルは記載されておりません。まあ冒険者ギルドやジョブギルドはカード受け取り時に確認ができますけどね」
「まあ依頼の割り振りとかに必要ですしね」
「ええ。こちらは条件に合った依頼をさせて頂く為の確認ですので、決してそれ以外での利用はいたしません」
「なるほど、教えてくださってありがとうございます。早速依頼探してみようかと思います」
俺は丁寧に説明してくれた事にお礼を言い、依頼書が貼ってある掲示板へ向かう。その矢先、
「お待ちください!」
「は、はい!」
急に大きな声を出した受付嬢に呼び止められる。
「あ、失礼しました。ソーイチ様にピッタリな依頼がありましたのでつい……」
「マジですか……。それってどんな依頼なんです?」
(おお!早くも特別依頼きた〜〜〜!!)
内心ウキウキしながら聞き返すと、受付嬢は予想もしてなかった依頼を提示してきた。
「ソーイチ様、冒険者ギルドで依頼書の作成のアルバイトをして頂けないでしょうか?」
tips
特別依頼
誰でも受けれる依頼ではなく、条件に適合したスキルやアーツを所持していないと紹介されない依頼。
貴族の護衛から街の料理屋の応援まで多岐に渡る内容となっている。ほとんどが緊急依頼のため、ギルドポイントが通常依頼より高く設定されている。
明日の6時に5話を投稿する予定です。




