36.聖水の効果とライバル達の猛追
「ST回復に加えて、1時間とはいえ経験値上昇はやばいな。狩りに持っていって休憩の度に食べたら、今より高みへと目指せるんとちゃう?」
「流石に休憩の度に食べるのは難しいがな。ところでSTと経験値上昇の両方が聖水の効果なのか?」
「う〜ん。普通のポトフの効果がST回復でしたんで、聖水要素は多分経験値だけだと思いますよ」
「じゃあ、聖水だけ飲んだら経験値増える効果出んかな?」
「いや。アイテムの効果は説明文で出てくるんだが、聖水にはそんな文面ない。だから最低でも料理に使用しないとダメとか条件がありそうだ」
「う〜ん、携帯性があって水素材を使う料理ですか……。今は思いつかないのでレシピとか漁って考えてみます」
「そやな。俺も思いついたら連絡するわ」
「じゃあ、効果も確認出来た事だしポトフ食べるか!」
「待ってました!」
一通りの検証も済んだので本命の味の確認に移る。
「熱っ!でも美味いな」
「だな、ソーイチが育てた野菜も甘くてホクホクだし、一緒に入ってるブラウンボアのウインナーがプリッとした食感がうまい!スープ自体もめちゃくちゃ美味いな」
「今回使ったコンソメボールはギルドで購入したんですけど配合は教えて貰えなかったんですよね。この味が出せるよう研究していかないと……」
「これめっちゃ旨いし応援してるで」
「ありがとうございます」
1時間ほどビールと料理を堪能した俺たちは、食べ終わった後もトークを続ける。
「そういえばユサタクは冒険者ランクEなった?」
「ああ、ここに来る前に昇格した所だ」
「じゃあ、あれ見た?」
「ああ」
「ええ〜、なんですか?」
「いやネタバレになるから」
「どうせ次のログインまでには広まってるし、今教えてくださいよ〜」
「しゃ〜ないな。Eランクになる前にこの世界の慣習ってことで女神像の前で祈るんやが、その時にオープニングが流れるんよ」
「え、本当ですか!?」
「ああ、Eランクになるのが実質的なスタートラインらしいからな。だからこのタイミングで流れるんやろな」
「なるほど、ここまでがプロローグって訳ですね」
初めは驚いていたモチョも、MJOの設定を聞き納得する。
「それでオープニング見て気付いた事あるか?」
「いや?強いて言うなら巨大魔法陣が何を意味するのかくらいかな」
「それも意味深やけど一番はラストやろ?」
「島を上から俯瞰した状態でロゴが出るあれか?なんか見どころあったか?」
「鈍いな〜。気づかんか?その島にはノアしか町が存在しなかった事に」
「えっ、それは気付かなかったが本当なのか?」
「ああ。色んな人に他の町の行き方を聞いたり、町の歴史の本を読んだんやけど、はぐらかされたり書かれてないんよ」
「うわ〜、それは怪しいですね」
「ああ。明らかにイベントといくか、MJOの謎の匂いがするな」
この島に町が一つしかない疑惑に、初めは疑っていた2人も段々と信じていく。
「で、聞き込みの中で気になる事を言った人がいたんよ」
「どんな内容だ?」
「農業ギルドの受付嬢に食料問題について聞いたんやが農家が少なすぎて厳しい。このままじゃ他の町への支援どころかノアの町も危ないってボソって言ったんや」
「それは意味深だな」
「近くに町がないのに食料を援助することが出来る。ってことは海を渡って〜ってことはないと思うねん」
「船だと時間がかかりそうだし、頻繁には行けそうにないからな」
「ただ現状それ以外に他の町の手がかりがないんよ。だから俺的には食糧の生産量を増やす事が次の町へのキーポイントになるんとちゃうかなと思うねん」
「ヒントが聞けたのも農業ギルドでしたしあり得そうですね!」
「確かにな。ああ、だからソーイチは称号の件以外でも農家を勧めてたんだな」
「そういう事。だから町イベントを進めるためと称号の為に【ユーザータクティクス】総農民計画が必要と思う」
「総農民化!?他の人はともかく私は職業的にキツいですよ!」
「確かに3職連続生産系はキツイよな……」
「スキル枠も解放されんしな。でも、メンバー全員が農家になったら素材融通し放題やし、モチョのレベルもすぐに上がると思うで」
「う〜ん、言われてみれば、そうかも?」
初めは難色を示していた【見習い農家】への転職だが、称号・イベント・経験値で説得を受け、モチョの顔に納得の気配が感じられるように。
「ただ、お金と素材をチーム内で循環していかないと不味いから、一刻も早くクランは作っておきたいな」
「確か、冒険者ランクEが5人と設立金が5万ゴールドやっけ?他のメンバーは達成できてないんか?」
「俺は戦闘以外に木こりやってるから、休憩中で集めた木材を木こりギルドに納品した分、早めにランクが上がったんだよ。でもほんの僅かだし、明日の午前中には皆Eランクになれると思う」
「じゃあ、作る前にコール頂戴。俺も立ち会うから」
「うう〜、私は食堂のお手伝いが入ってるんで行けそうにないですね……」
モチョが嘆いた時、異変が起きる。
《アーサー様がプレイヤーで初めて【見習い】ジョブのレベル上限に到達いたしました》
《アーサー様がプレイヤーで初めて【見習い騎士】のレベル上限に到達いたしました》
《アーサー様がプレイヤーで初めて【見習い剣士】のレベル上限に到達いたしました》
ライバルチームのPP取得メッセージが3つ同時に流れたのだった。
「あれ?時間的に閉門しとるよね?なんで今戦闘職がレベルアップしてるん?」
「……おそらくデスペナ覚悟で夜のフィールドで狩りをしてるみたいだな」
「マジか。もう夜対策取れるようになったんか」
「う〜ん。対策可能かはともかく、今回に限りある程度はデスペナを無視出来るな」
「そうなん!?デスペナ周りは調べてないから、よく分からん」
「おいおい、仕様くらいは把握しといてくれよ」
「いや〜戦闘する気ゼロやったし完全に頭から抜けてたわ」
「それじゃあ説明するが、MJOのデスペナは①討伐系依頼の場合カウントがゼロになる②装備の耐久減③アイテムの一部ロスト④レベルアップ後に獲得した経験値の喪失⑤ゲーム内時間で8時間のログイン制限の5つだな」
「めちゃくちゃ重いな!」
「ああ、だが序盤は貴重な装備やアイテムは少ないし依頼は討伐系受けてなければノーダメだ。それに経験値とログイン制限も今回は殆ど無視出来る」
「ああ!レベル上限になったらジョブに関しては経験値ロストは無視出来るし、ログイン制限も睡眠ボーナス要らんとしたらこっちも無視出来るんか」
「そういう事だな。初日は暗い中での狩りの対策する時間もないしするメリットも少なかったが、もう少しで見習い上限になるんだったら狩場が空いてる分アリと考えたんだろうな」
「無茶するな〜」
「私なんて夜は町中でも怖くなっちゃいますもん」
「多分ソーイチに独走状態許してるから焦ってるんだろ。ただそのギャンブルが成功したって事はこれからパーティーメンバーのアナウンスも流れ続けるだろうな」
ユサタクの予想通り【円卓の騎士】のワールドアナウンスが俺がログアウトするまで鳴り響いた。
tips
デスペナルティー
MJOのデスペナルティーは以下の5つである。
①レベルアップ後の取得経験値を全部ロストする。
②ゲーム内時間で8時間のログイン制限と復帰時にノアのギルド前にHP・MP・STが全て1の状態で復活する。
③装備の耐久値が50%減少
④装備以外のアイテム5種類ロスト
⑤討伐系依頼のカウントがゼロになる
ただし条件によってペナルティーが変化する
これにて2日目終了。次回は掲示板回です!
ブックマークや評価・誤字報告していただきありがとうございます!!
今後とも本作をよろしくお願いします。




