224.駆け込み納品と延長業務
「ヤバいヤバい!今18時55分やから、閉門までちょっとしかないやん!納品したいアイテム山ほどあるのに!?」
「あはは、頑張れ〜」
雑な口調で応援するユサタクに少しイラっとしながら、納品用のアイテムをインベントリーに詰め込んでいく。
「えっと……種オーケー。12時間系と22時間系の作物オーケー。……うん、いつもの納品数なら50個は依頼達成出来そうやな」
「50って多すぎだろ!?ギルド閉館前にこの量は迷惑すぎるぞ」
「やっぱり迷惑か〜」
シフト上がり前の残業確定の業務量。自分ならブチ切れそうな行いに心が痛くなる。
「まあ、対応できるかどうかは受付次第だ。それならダメ元で納品してみろよ」
「それしかないか……」
「それより、せっかく沢山の依頼をクリアするんだ。受付前にギルドカードのポイント状況はメモっとけよ」
「ギルドカードをメモする?……ああ、なるほど。確かにどんだけポイント増えるたか、目に見える形で記録した方がモチベも上がるか」
ユサタクの提案に妥当性を感じた俺は、ギルドカードを手に取った。
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NAME:ソーイチ
冒険者ランク D (10,010/20,000)
戦闘職ランク E(3,300/5,000)
生産職ランク D(11,000/20,000)
(登録ギルド:司書・農業・木こり・付与)
所属クラン:ユーザータクティクス (20/20名)
クランランク D(6,800/20,000)
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「よし、確認終了。じゃあギルド閉まるしもう行くわ」
「おう。今回だけでどれくらいポイント稼げたか、後で教えてくれよ」
「あいよ」
地面に座ってダラけるユサタクに見送られながら、俺はいそいそと転移クリスタルを天に掲げた。
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「お、お待たせしました。種系アイテムの納品が25個、作物系の納品が25個。合計50個の依頼達成を確認しました」
「一気に沢山納品してごめん!閉館前やし、少なくした方が良かったかもな」
「あはは……。今日は閉館しないので気にしないで下さい」
農業ギルドに到着した後、事前に準備した作物達を取り出し一気に依頼報告。大急ぎで納品依頼50個分の確認作業を終わらせたアレンに、俺はペコリと頭を下げた。
「閉館しないってなんで?新聞とか告知には営業時間変更について載ってなかったよな?」
「実は冒険者ギルドのマスターの思い付きでイベントを開く事になりましてね。そのせいで明日の20時まで農業ギルドと調理師ギルドの2つは開ける事になったんですよ……」
「ええっ、当日に長時間営業決まったん!?ラクレス何考えてんの!?」
いくらゲームの世界とはいえ、ブラックすぎる無茶振りにドン引きする俺。
「まあ、他のギルドや元職員などから応援もあるので、労力だけなら問題ないですよ。ただ、急な夜シフトで体内リズムが狂いそうですけど……」
「全然大丈夫じゃない!?」
「ま、まあ今回は渡り人の方々が食事を始める日という一生に二度とないイベントですし、良いかなって」
「アレンがそう言うならええけど。ところで、開館時間の延長以外にイベントあるん?」
「もちろん!本日の23時から明日の午前3時まで、冒険者ギルド前にプチ出店が行われるみたいですよ」
「23時って深夜スタートかよ……。これも突然の?」
「思い付きですね……」
「ハァァ〜〜〜」
初めて会った時のイケおじからは想像も出来ないラクレスの暴挙に、もうため息しか出てこない。
(まあ、お祭りイベントのキッカケをラクレスってキャラにゲームシステムが押し付けたんかな?正直リアリティーとかが無いけど、これもゲームか?って、折角8時間労働の成果を報告したんや。マイナスな空気はナシナシ)
若干のモヤモヤを感じた俺だったが、首を勢いよく横に振ってメンタルチェンジ。意識をアレンに戻して納品手続きを進めていった。
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「ただいま〜」
「おかえり、ソーイチ。どれくらい稼げた?」
全ての納品作業を終え第二農地に帰宅。その時の転移の光を目敏く見つけたのかユサタクが小走りで駆けより成果を尋ねてくる。俺はその質問に対して、含み笑いをしながら堂々と成果を語った。
「ふっふっふ。種系・作物系併せて50個の依頼、全部合わせて1,550AGP&3,100CGPも稼げたわ!」
「おお〜。やっぱり50個一気に依頼クリアすると、もらえるポイントも凄まじいな!」
「まあな。平均2〜3割増やったしな。それより知ってるか?今農業ギルドで聞いたんやけど、ゲーム内時間で23時から翌日の3時まで、露店エリアで出店やるんやって」
「マジか。深夜の出店とか、年越しの時の神社くらいしか聞いた事ないぞ」
「ああ〜、それがあったか。話聞いた時、リアリティー無さすぎって内心不満やったけど納得したわ」
「ははは、基本的に翌朝に初詣行くもんな。で、行くのか?」
「もちろん。出店巡りは楽しそうやし、住民とプレイヤー入り混じった、お祭り気分味わいたいしな」
「そりゃそうだ」
ウキウキな俺の発言を聞き、ユサタクもウンウンと首を縦に振る。
「さてと、そういう訳やから出店始まるまで、トイレとかでログアウトするわ」
「あっ、俺も行っとくか」
「ウンウン、明日は長い一日になりそうやしな。肝心な時にヘルスのアラーム鳴らんように行っとき」
「ははは、じゃあ連れションだな」
「キモい表現はマジで辞めてくれ……。じゃあな」
最後の最後に最悪の例えをしたユサタクにゲンナリしながら、俺は現実世界へと戻るのであった。
次回は明日か明後日の午前6時に更新予定です。
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